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ドコモ、「OREX」のサービスラインアップを発表――オープンRAN普及に向け海外にアピール

 NTTドコモは、「MWCラスベガス 2023」で同社が提供するオープンRAN向けソリューション「OREX」のサービスラインアップを発表した。今後、海外の通信事業者へ向け展開を進める。

オープンRANをパッケージ化して導入後押し

 OREXは、ドコモが展開するオープンRANのソリューション。従来、携帯電話ネットワークを構成する設備は、専用のハードウェアが用いられてきたが柔軟性や導入コストの高さなどの課題があった。

 一方で、汎用機器を用いてネットワークをつくるオープンRAN(RAN=Radio Access Network)は、コストも下がるうえに必要に応じて機器を拡張しやすいなどの柔軟性も兼ね備える。

 OREXでは、仮想化基地局と無線装置、ソフトウェアのほか、システムインテグレーションやメンテナンス、運用サポートなどをトータルで提供する。NTTドコモ 安部田貞行氏は、OREXの優位性をドコモで比較した数値としてTCO(コスト)が最大30%減、消費電、ネットワーク設計の稼働で最大50%減が見込めると優位性をアピールする。

機器、ソフト、サポートを提供

 OREXでは、仮想化基地局と無線装置、ソフトウェア、各種機器・ソフト導入時のサポートの3つをひとつのパッケージとして提供する。

 今回、無線装置を手掛ける企業7社を新たにOREX パートナーに迎え、仮想化基地局のベンダーと合わせて13社とラインアップを強化した。富士通のほかNEC、韓国のHFRなどの無線装置をOREX内で提供する。

 NTTドコモ OREXエバンジェリストの安部田氏は、オープンRAN対応でも「選択肢が1社であれば従来と変わらない」という声があると紹介する。ユーザーによって、どのような組み合わせで使いたいかという要望はさまざまあるなかで、それに合わせた提案ができる体制を整えた。

 SMO(Service Managemental and Orchstration)は、ハンドオーバーのしきい値を自動で最適化することで、品質向上などが見込める。あわせて探知が難しい「サイレント故障」と呼ばれる現象にも、ユーザーが通信品質に違和感を持つ前に自動的に対処できるという。

 こうした機能にはドコモが長年、オペレーターとして得た知見が活かされており、エリア設計時にも通信出力やアンテナのチルト角を自動で調整。これにより、人が介在する必要がなくなりコスト削減につなげられるという。

 加えて、OREXを導入する企業がすでに抱えている、既存の基地局装置とのインテグレーションや運用・メンテナンス面でのサポートを提供。企業により保守作業を自社でやるかベンダーに任せているかは異なっていることから、サポート面もOREXのなかで提供する。

IOWNとも連携へ

 ドコモのネットワーク内にも、OREXの仕組みによるオープンRANが導入されており、富士通の仮想基地局、Wind Riverの仮想化基盤、NVIDIAのアクセラレーター、インテルアーキテクチャー採用のサーバーを組み合わせた。

 ドコモでは4G時代から自社でオープンRANを導入するなど、積極的に取り組みを進めてきた。一方で他社への展開という意味では、楽天シンフォニーが一歩先行している部分もある。安部田氏は古くからオープンRANを手掛けてきたドコモの強みを活かしていく考えを示す。

 4G時代からオープンRANを手掛けてきたドコモ。世界の通信事業者がドコモの取り組みに興味を持ったこともあったが、4G導入から時間が経っており標準化が遅かったと過去を振り返りつつ、5G時代では「ORAN Alliance」での取り組みも踏まえつつマルチベンダー機器の知見を強みとして世界にアピールする。

NTTドコモ 安部田氏

 ドコモでは、OREXによる海外の通信事業者へのオープンRANの導入を推進。エコシステムの創出に貢献するとともに「IOWN」におけるオールフォトニクスネットワークの伝送区間への適用やサーバー、SMOのコグニティブファウンデーションでの連携を進める。