ニュース

バルミューダ寺尾氏、スマホ撤退に「自分たちの力不足だった」

 バルミューダは、2023年12月期第1四半期決算を発表した。売上高は24億500万円、純利益はスマートフォン関連で特別損失を計上し11億4400万円のマイナスとなった。

寺尾氏

 あわせて同社は、12日にスマートフォン開発から撤退を発表。2021年11月に発表された「BALMUDA Phone」が最初で最後の端末となった。一方で「BALMUDA Technologies」ブランドは継続を表明しており今後、新製品が登場すると見られる。

スマホは撤退、IoT製品開発へ

 バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏は、スマートフォン撤退にいたった経緯を説明した。

 為替変動やコロナ禍の特需の終わりなど同社を取り巻く環境が厳しくなるなか、経営資源を家電事業の強化や独自性をより発揮できる商品ジャンルの開発に集中するという。具体的な分野は明かされなかったものの、同社がこれまで手掛けてきた生活家電を飛び越えたジャンルとした。

 同社では、BALMUDA Phoneの後継モデルの開発をすすめていたものの、コストとの兼ね合いから商品化を断念した。その後、さらなる新型の開発が進んでいたが、こちらも為替変動が大きく響き価格面などの問題から、発売を見送るかたちでスマートフォン事業の終了を迎えた。

BALMDA Phone開発中のモック

 寺尾氏によれば、同氏がスマートフォンからの撤退を決断したのは4月。その背景には、為替変動と素材価格などの高騰がある。製造設備を持たないファブレスメーカーであるバルミューダとしては、納入価格としてその影響があらわれるかたちとなった。寺尾氏は、ギリギリまで商品化を目指したものの「4月の段階で商品化できないとわかったとき、もろもろの状況を鑑みて、総合的に判断すべきときがやってきたと考えた」と当時の状況を語る。

 一方で、撤退したのはあくまでスマートフォンの開発のみ。BALMUDA Phoneを第1弾プロダクトとしたブランドであるBALMUDA Technologiesは存続する。加えて、アプリストアを通じて公開したオリジナルアプリのサポートなどは続けられる。

悔しい思いも「チャレンジとしては素晴らしかった」

 寺尾氏は、スマートフォン開発撤退について「悔しい思いでいっぱい」と心境を吐露する。一方で「とても良いチャレンジだった」ともコメントした。

 スマートフォン開発を通じて一番の課題を「ソフトウェアの作り込みが困難だった」と振り返る寺尾氏。「時間と根性だけではなく多大な資金が必要だった。バルミューダの規模とスマートフォン市場の大きさの違いから存分に戦うことができなかった」と見解を示した。

BALMUDA Phoneのオリジナルアプリ

 一方で、結果的には撤退というかたちになったものの「チャレンジを続けるのはバルミューダのDNA。そこに躊躇せず向かったのは良きことだった」ともコメント。「こんなにも時間を使って、こんなにも努力をして、こんなにも工夫をして、そのほとんどを表に出せなかったということは体験したことがなかった。責任者として悔しい思いでいっぱい」と胸中を明かす。

 ソフトウェア開発の知見を十分に培えたとして「今後のビジネス展開に大いに役立つのではないか」という。寺尾氏は、スマートフォン開発を通じてこれまで不要と考えていたIoT家電の必要性を実感したことを語り、IoT家電や家電以外にも通信と組み合わせた製品の開発に取り組む考えを示し、年内にもなんらかの発表をしたいとした。

 寺尾氏が並々ならぬ熱意をもって参入したスマートフォン事業。今後の再参入の可能性については「もし、神様がもう一度やってもいいと言うのなら。慎重に検討したい」とも。寺尾氏は「外的要因もあるが、自分たちの力不足を痛感した」と明かす。一方で「チャレンジとしては素晴らしかったなと思う。もし数年前に戻ったら全く同じ決断をした」とも語る。

 加えて「自分たちがつくったBALMUDA Phoneは大好き。持ちやすいのでストレスが減り使いやすい。自分用に5台持っているのでしばらくのあいだはケータイに困らない」と語った。

【お詫びと訂正】
 寺尾氏の名前の表記に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。