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ドコモの22年度連結決算、収益は+3.2%の6兆590億円――通信料金値下げの影響は「底打ち」と予想
2023年5月12日 20:26
NTTドコモは、2023年3月期の決算(2022年度連結決算)を発表した。営業収益は、前年同期比+3.2%の6兆590億円、営業利益は+2.0%の1兆939億円となった。2018年度以来4期ぶりの増収増益となった。
セグメント別で見ると、法人部門とスマートライフ部門は増収増益を達成できたが、コンシューマー通信は減収減益が継続した。ただ、減少幅は縮小したという。
2023年度業績予想と取り組み
2023年度の業績予想は、営業利益が+0.8%の6兆1100億円、営業利益が+6.4%の1兆1640億円とした。
セグメント別でみると、法人とスマートライフ部門では増収増益とし対2020年度比で法人とスマートライフで1670億円の増益でけん引し、ドコモグループ全社で1040億円の増益をもたらすと予想している。
具体的な取り組みとしては、大企業向けには、NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの統合ソリューションの提供強化やデータ利活用による共創ビジネスの拡大を、中小向けには移動通信と固定通信の融合サービスによる業務効率化の提案やビジネスdアカウントの活用などを挙げている。
スマートライフ事業では、d払いアプリを核として、金融サービスの拡大を図る。d払いアプリを接点として投資や融資、保険などを提案し更なる拡大を図る。また、4月にスタートした映像配信プラットフォーム「Lemimo」も、早期に2000万MAU(月間アクティブユーザー数)を目指すとしている。
このほか、dポイント基盤を活用した企業のマーケティング支援なども取り組んで行く。
コンシューマー通信
一方で、コンシューマー通信では減収としたものの増益に転換すべく取り組みを継続する。通信サービス収入の減少幅が縮小傾向にあるのと、チャネル構造改革や販売施策などを見直しコスト効率化することで、増益に転換を図る。
5G契約数は、順調に増加しており、2022年度は2060万契約、2023年度末には2820万契約を目指す。ユーザー1人あたりの単価を示すモバイルARPUは、“底打ち”になるとし、2023年度末予想で4030円になると見込んでいる。
コンシューマー通信では、引き続きジュニア層の普及率向上や、ahamoによる若年層の中~大容量ユーザーの獲得、金融や固定回線などとのクロスユース促進を続けるほか、ドコモの通信プランと人気サービスをあわせたサービスの提供などを実施。
また、ドコモショップを携帯電話だけでなく生活やビジネスの関心に対応したスマートライフショップへ転換したり、オンライン窓口などオンラインチャネルをさらに進化させたりすることで、新たな顧客体験を創出する。
ネットワーク関連では、5G SAの普及と拡大や基地局関連のコスト効率化、海外オペレーターへのOpen RANサービスの提供などで収益改善を目指す。
ネットワーク品質に関して、「(2022年)12月にも重大事故を発生させて、お客様に大変ご迷惑をおかけした」(ドコモ 井伊社長)とし、技術的な体制の改善や組織の新設を実施していく。装置単体の監視から全体の監視へ移行し、故障箇所の特定や措置を迅速化するほか、サービス品質マネジメント体制の強化を図るという。
また、いわゆる“パケ詰まり”対策として、エリアチューニングの実施を進めると共に、瞬足5G基地局(ミリ波やSub-6)の拡大を継続的に実施する。
主な質疑
決算会見での質疑をご紹介する。回答者は、NTTドコモ 代表取締役社長の井伊 基之氏。
――楽天モバイルがKDDIのローミング活用に回帰することについて、両社が再接近していることについても受け止めを。
井伊社長
他社のことなので、コメントする立場にないと思っているが、両社のご判断だと理解している。楽天モバイルは、まだまだ設備を拡張していかなければいけないという状況で、今回それに加えてローミングという手段をさらに加えたという風に理解している。
提供する側も従来からKDDIが提供されていたので、その関係が復活したと冷静に受け止めている。
(ドコモも大企業向けに提供してきた)NTTコミュニケーションズと、中小企業にたくさん提供していたドコモがくっついてマーケットも広がりほぼほぼの企業をカバーできたと思っている。いずれにしても、通信業界は競争が激しいので、新しいソリューションや新しい価値を生んでいかないと、単に価格競争だけということになってしまうので、我々としては「価値あるもの」をどうやって作っていくかということ(を考えていきたい)。
たとえば、AI技術やIoT技術を組み合わせるなど、持っている知見をクロスに組み合わせた形で提供していきたい。
――エコノミー(小容量)の強化について、MVNO向けへの貸し出ししか増えない気がするが、アイデアはあるのか?
井伊社長
重要な戦略の部分になるので、正直あまり申し上げられない。
小容量のところは、これからも激しい競争が続くと理解しているので、単純に値段だけの競争ではダメだとおもっている。
――中~大容量ユーザーが拡大すると、ネットワークの品質をより改善していく必要があると思うが、うまくバランスをとっていけるのか?
井伊社長
中~大容量ユーザーが増えれば、ネットワーク負荷が増え、4Gで足りなくなってしまっている部分がある。10~20代のユーザーが相当使っているという傾向が見られる。
かといって、全体を増強すると無駄となるので、どの辺の容量が不足するかと言うことをいち早くキャッチして、マイクロマネージメント的に対応していく。
究極的には、5Gをしっかり普及させて5Gで(増大するトラフィックを)吸収するのがいいと思う。それが間に合わない段階では、エリアチューニングや4G容量の拡大で対応していく。収支とのバランスをどう保つか、投資先や設備投資費など非常に重要と認識している。
――5Gの普及状況はどうか。先頃のOpenSignalの調査では、ソフトバンクに品質評価で抜かれたようだが、今後の戦略は?
井伊社長
もとより(5Gエリアの拡大では)いわゆるSub-6の周波数を使って展開しており、ここ数年間はそういった設備投資をしてきた。これが、昨年暮れくらいから、既存の周波数を転用(NR化)した5Gの展開を始めたので、ほかのキャリアとは構築手順が違うという状況にある。
実際に、Sub-6で構築した5Gエリアは、大変ダウンロードスピードも速く、そういった評価を頂いている。一方で、エリアカバーという点では90%の人口カバー率は今年度一杯までかかると認識している。
第三者機関の評価については、具体的な数字を見ると、こういっちゃいけないことだが、数字の差が高いレベルで勝った負けたということを申し上げるのが本当にいいのかなというのが私の気持ち。総じて日本のキャリアは高い水準にあるということを示しているのではないかなと、都合良く解釈している。
――5Gが普及する中でのいわゆる「パケ詰まり」、ドコモだけ目立っている原因はどこにあると考えているか?
井伊社長
我々が気づいたのは、実はドコモへの直接的な申告ではなく、SNSやWeb上のユーザーの声というものをキャッチして、“どこどこでつながりにくい”という「パケ詰まり」「速度が出ない」ということが聞こえてきた。
これはいかんということで、我々の方では「裏でちょこちょこと直す」のではなく、「事象を自分たちも自覚している、対策を打つということを申し上げる」のが、キャリアとして誠実なのではないかということで、公表した。
それでなんとなく「ドコモだけが品質が悪い」という風にご理解されてしまったのであれば残念だが、こういった問題は、程度の差こそあれ各キャリアおそらく取り組んでいる事だと思う。
トラフィックの状況が変わったり、街の姿が変わっていることは、すべてのキャリアに影響することで、若い世代がかなり集中する場所でネットワークの調整や容量増量といったことが対応できなかったことが私たちの反省すべきところ。おそらく、他キャリアはそれをしっかりタイムリーに手を尽くされていたと思っている。
そういった意味で、反省しているところ。
――Lemimo、開始からちょうど1カ月だと思うが、手応えや課題など感じるものがあれば。
井伊社長
まだ手応えというほどの、大盛況というほどの加入はない。
私どもは「dTV」という形で提供していたものが、ユーザーがスムーズに「Lemimo」の方に移行いただけるかが一つの課題だった。けれども、これが比較的順調に移行頂いていると感じている。
また、爆上げで新規に入ってくるところも徐々に出てきている。ただ、料金を下げるのではなく、ポイント還元するという仕組みを採っており、ポイント活用戦略と組み合わせた仕組みとなっているので、もう少し様子をみたいと思う。
――MNPのワンストップ化に関する影響や戦い方は?
井伊社長
ワンストップ化については、ユーザーの利便性が非常に高い、両方のキャリアで手続きしなくてもいいということですので、流動性を高めるという施策で導入されたものということなので、ユーザーの移動がしやすくなると受け止めている。
我々から出て行く方もそうだが、我々に入ってくる方もそうであると思うので、ポジティブに受け止めて対処していくしかないと考えている。
――通信品質について、たとえば再開発とかで一時的に他社とローミングするような考えはあるか? また、通信品質関連で総務省からヒアリングや指摘を受けたことはあるか?
井伊社長
品質対策で、他キャリアと組むというのはあまりないと思う。ただ災害や大規模ネットワーク障害が起きたときは、お互いに助け合うということはこれからどんどん起こることだと思う。
ただ、平時は基本的に自分たちでやっていく、協調するとすればインフラシェアリングのような形でネットワーク投資をお互いに抑えるという意味での協調は進むと思う。
総務省との関わりについては、対応前後でご説明申し上げて、基本的に通信品質の安定のために努力して下さいというお話をされただけで、特にお叱りやご指導とかはない。むしろ、(総務省としても)5Gの加速をぜひということで、(パケ詰まりの)抜本的な解決は5Gを広げるということになりますので、5G拡大を加速してくださいというような話は受けた。
――組織改編で「プロダクトマーケティング本部」の新設があったが、この狙いについて。
井伊社長
我々として、プロダクトの部分はどうしても回線と端末みたいな形で、コンシューマー通信事業のメインメニューみたいな形で取り組んできた。
けれども、たとえばスマートライフで使う端末とか、法人ユーザーが使う端末とか、ほかの事業でも必要になる端末とかを作っていくことになる。それに付随するソフトも作っていくのが筋じゃないかということで、それを独立して切り出し、一気通貫で開発も調達もその後のフォローもそこで責任を持ってやるということで独立させた。
やはり、重要なプロダクトの戦略というのを強化するために、独立組織にしたということ。
――「Google Pixel 7」が、Pixelシリーズとして久々の発売になったが、受け止めは?
井伊社長
私どもの周波数が、5G周波数が特殊だったのでなかなかコミットメントしないと作って頂けなかったという状況があった。
今回は、コミットメントして私どもの周波数に対応したものを作って頂けた。ユーザーからも要望があったので、ようやく実現できたという理解をしている。