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NTT東西で「4月3日の通信障害」はなぜ起きたのか

 NTT東日本とNTT西日本は28日、報道陣向けの説明会を開催し、4月3日に発生した通信障害について、原因や再発防止策などを説明した。

 NTT東日本からは、執行役員 ネットワーク事業推進本部 副本部長の島雄策氏が、NTT西日本からは、執行役員 設備本部 サービスエンジニアリング部長の桂一詞氏が登壇した。

左:島氏、右:桂氏

 冒頭、島氏は「(通信障害により)NTT東日本とNTT西日本のお客さま、関係者の皆さまに多大なご迷惑やご不便をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

通信障害の概要

 4月3日に発生した通信障害は、光アクセスサービスやひかり電話などに影響した。影響エリアは全国16都道府県の一部、影響数は最大44.6万回線。詳細は本誌既報記事で詳しく紹介している。

 このうち、ひかり電話サービスへの影響については、総務省に「重大な事故報告書」が提出された。

 NTT東西と通信機器メーカーによる解析の結果、通信障害の原因は、加入者収容装置のうち特定機種の一部でソフトウェアの不具合があったこととされる。大容量データを複数の拠点へ配信する際に用いられる「マルチキャスト受信」において、複数の条件が重なり、加入者収容装置のパケット転送部が再起動を繰り返した。

 当該の加入者収容装置は2018年からNTT東西に導入されており、すでに約5年が経過している。しかし、今回のソフトウェアの不具合は両社にとって初めてのもので、メーカー側でも認識していない“未知の不具合”だったという。

 なお、今回の事象においてサイバー攻撃の痕跡は見られず、NTT東西ではソフトウェアの設定を変更することで不具合を解消した。両社は今後、メーカー側と新たな連携体制を構築していくほか、社内におけるリスク評価体制の強化などにより、再発防止を図るとしている。

質疑応答

――不具合があった通信機器メーカーの名称は。

島氏
 今回の加入者収容装置については、通信事業者含め、国内外問わず多くの企業で使われている可能性があります。セキュリティリスクも考慮しまして、具体的な名前は控えさせていただきます。

――メーカー側へ賠償を求める対応は検討しているのか。

島氏
 現時点で決まった事実はありません。契約に基づいて対処していきます。

――“未知の不具合”とあったが、メーカー側で認識できていなかったことを知りたい。

島氏
 今回のマルチキャスト受信で用いられたマルチキャストパケットは、「RFC」(編集部注:IETFによる、技術仕様などに関する文書)に準拠している正規のパケットです。そうした正規のパケットを受信しているにも関わらず、装置が再起動を繰り返してしまうような挙動について、メーカー側が認識していなかったということです。

桂氏
 きっかけとして、いわゆるコンテンツ配信事業者の方が、マルチキャストパケットを流されました。そこで特定の条件が重なって不具合が生じ、複数の通信相手を指定するマルチキャストの特性もあり、複数の装置に影響を与えたということになります。

島氏
 障害が起きた当日の4月3日14時くらいの段階で、マルチキャストパケットが影響しているだろうということはわかっていました。複数ある特定の条件が解明できたのが翌日です。

――特定の条件というのは。

島氏
 パケットの条件については、セキュリティリスクなどの観点もあり、回答は控えさせていただきます。

――ハードウェアではなくソフトウェアの不具合ということだが、ヒューマンエラーのようなものは基本的になかったのか。

島氏
 はい、そういったものはありませんでした。

――今回のような不具合は、ほかの事業者でも起こりうることなのか。

島氏
 今回の加入者収容装置は、市販品、汎用品であり、ほかの事業者でも(不具合が)起こりうる可能性があります。そのため、メーカーに対しては、同じ装置を利用しているほかの企業に対して同様の事象を発生させないよう、すみやかな対応を依頼しました。

――不具合に対してメーカー側が提供する、ソフトウェアのアップデート予定について知りたい。

桂氏
 現在はメーカー側で検討いただいていると聞いていますが、進捗に関する詳しい状況はうかがっておりません。

――NTT東西では、設定の見直しによって再発を防いでいるという理解で合っているのか。

桂氏
 はい、そのとおりです。

――不具合はまだ内在したままになっていて、設定変更でいったん解決した、ということなのか。

桂氏
 そういう認識で結構です。ただ、マルチキャストの機能を使うことに関しては何ら問題がない状態になっています。