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高品質な整備済みスマホ“リファービッシュ”を日本に普及へ、フランスのベンチャー「Back Market」の取り組みをCEOが説明

 近年注目されてきている中古スマートフォン。従来は、ネットオークションや電気街の店舗で吟味して購入するものだったが、近年はネット通販や路面店、ショッピングモールの店頭などで気軽に購入できる手段が登場してきており、弊誌でも紹介している。

 そんななか、高品質な整備済み製品“リファービッシュ”(Refurbish)製品のプラットフォームとして世界展開しているフランスのベンチャー企業「Back Market」が、日本での事業を拡大してきている。

 今回は、来日している「Back Market」の共同創業者兼CEOのティボー・ユグ・ドゥ・ラローズ(Thibaud Hug de Larauze)氏と、サステナビリティ責任者のカミーユ・リチャード(Camille Richard)氏、日本法人「Back Market Japan」代表の山口亮氏から、いわゆるリユーススマホ市場の現況と、「Back Market」成長のヒントなどを聞いた。

“リファービッシュ”製品を第一選択肢に

共同創業者兼CEOのティボー・ユグ・ドゥ・ラローズ氏

 「Back Market」は、2014年11月にフランスで設立された“リファービッシュ”製品の流通プラットフォーム。中古品や整備済み製品を取り扱う販売業者が「Back Market」の基準に準じた“リファービッシュ”製品をユーザーに提供できる。ユーザーは、高品質な“リファービッシュ”製品を安心して利用できる。

 ラローズ氏は、「Back Market」の使命について、「世界中のユーザーから“リファービッシュ”製品を、購入時の第一選択として検討されることが使命」とし、整備済み製品をプロの整備士や販売者からユーザーに販売できる「整備済み製品のプラットフォーム」を展開しているとした。

 過剰に生産され、過剰に消費され、そして多くの原材料が消費されることで、二酸化炭素の大きな発生源となっている現状を「テクノロジー製品は一方通行になってしまっている」(ラローズ氏)は指摘。“リファービッシュ”市場を拡大させることで、製品の長寿命かとそれにより循環型社会に置き換えることができるという。

 8年前にフランスでスタートしてから、ヨーロッパや米国で成功し、2年前に満を持して日本市場に参入した。

 ラローズ氏は、「人々は新製品を求めているが、“リファービッシュ”製品が第一選択肢として定着されるよう、“リファービッシュ”製品の提供を進めていく」と、循環型社会実現に向けて「修理しながら製品を使い続けること」を広めていく考えを強調、それにより環境負荷を軽減できるとしている。

市場拡大に向けての取り組み

 「Back Market」では、自社だけでなく“リファービッシュ”市場拡大や、循環型社会実現への取り組みを進めている。

 たとえば、修理する権利のための活動を実施しており、その成果として実際にフランスでは「デバイスメーカーがスペアパーツやコンポーネントを誰に対しても提供しなければならない」ようにすることができたという。ラローズはぜひ日本などほかの国でも実現していきたいと、活動をグローバルに展開していく姿勢を示した。

 “リファービッシュ”を拡大していくためには「(プラットフォームで)ユーザーと販売者を繋げるだけではなく、信頼を獲得し利便性を実現することが唯一の進め方」とし、「Back Market」では販売者に対して厳格な審査を実施しているほか、新しいソフトウェアの研究開発(フランスや米国など)、製品の下取り(ヨーロッパや米国など、日本でも検討)、販売者へのトレーニングなどの取り組みを進めている。

 “リファービッシュ”市場は、世界の電子機器市場規模の中でも全体の10%未満で、「Back Market」はさらにその一握りであることを示し、「いかに“リファービッシュ”製品の規模を「“リファービッシュ”可能な電化製品の市場規模」の中で伸ばしていくかが当面のミッション」と説明。ラローズ氏は、その手本として「中古自動車市場」をあげた。

 30年前の自動車市場では、利用されている自動車のうち中古車の割合は10%だったが、現在は75%までシェアを伸ばしてきているとし、電子機器でも信頼性や利便性を確立できれば、中古自動車と同様に拡大できるとの考えを示した。

日本でも“リファービッシュ”市場を拡大できる

日本法人「Back Market Japan」代表の山口 亮氏

 続いて、日本代表の山口氏からは、日本における“リファービッシュ”市場についての考えを聞いた。

 “リファービッシュ”製品は、整備済み製品や中古品の品質を検査し、品質保証しているものとし、「中古品と同様の価格帯で品質は新品に近い」新しいカテゴリーであると説明。

 日本の市場については、昨今の円安やインフレによる物価高で、“リファービッシュ”スマートフォンは非常に伸びてきている。山口氏によると、成長率10%以上で推移しているという。

 日本での“リファービッシュ”スマートフォン使用率は約11%、一方でヨーロッパではすでに20%のシェアを獲得していることから、日本でも伸びしろがあることがうかがえる。

 実際に、「Back Market Japan」でも昨年から今年にかけてスタッフの人数が1人→15人に、エンジニアやプロダクトマネージャーなども日本法人で採用し、日本でのローカライズを順調に進められる体制を取っているとした。

日本市場の傾向

 日本市場の中古電子機器市場の傾向を、山口氏は「これまでは年齢が高めの男性が多かった」としたうえで、「Back Marketでは、20代後半~30代の若い層が多く、女性が1/3もいる」とこれまでの傾向とは違うユーザー層になっていると指摘した。

 また、購入される製品では、2~3年前の製品がよく出ているという。山口氏は「2~3年前の製品が機能と価格のバランスが良いからではないか」と分析している。

 “リファービッシュ”スマートフォンの市場を拡大するうえで山口氏は「品質こそがすべて」と指摘。中古品とはいえ、数万円単位となるとし、不安を払拭することで“リファービッシュ”という新しいカテゴリーを広げられるとの考えを示した。

 そのため、「Back Market」では、品質向上に向けてさまざまな取り組みを行っている。

 たとえば、すべての販売者に「品質憲章」と呼ばれるチェックポイントを掲示し、その遵守を促している。また、プラットフォームでは、価格が安いだけでなく、品質がいいものも上位に出すようにしているという。

 そして、素性を隠したミステリーショッパーによる配送品質や製品品質のチェック、製品別の不良品率などをチェックできるダッシュボードなどで品質維持を図っている。

 これらの取り組みに加え、購入後1カ月間はどのような理由でも返品できる保証や、1年間の修理・代替品提供などを実施している。

 今後は、ユーザーが利用する上でのキズをカバーする保険なども検討しているほか、スマートフォンだけでなく、ゲーム機などほかの“リファービッシュ”電子製品を展開し、ゆくゆくはヨーロッパなどで展開しているテレビやオーディオ製品なども日本で展開していきたいとした。

 一方で、“リファービッシュ”製品の知名度が低いと指摘し、2023年下期では“リファービッシュ”業界全体を知ってもらう取り組みを進めていきたいと意気込みを語った。

新品と“リファービッシュ”の環境負荷

サステナビリティ責任者のカミーユ・リチャード氏

 しかしながら、“リファービッシュ”製品を採用することで、どれくらい環境負荷軽減に貢献できるのだろうか。サステナビリティ責任者のリチャード氏は、フランス環境管理庁のレポート(2022年8月発表)をもとに、新品と“リファービッシュ”製品が地球環境に与える影響を説明した。

 レポートでは、二酸化炭素排出量と水使用量、原材料資源使用量、電子ゴミ排出量の4点を比較している。

 まず、二酸化炭素排出量は、新品が84.4kgに対して“リファービッシュ”では7kg(対新品比92%減)に、水使用量は新品が8万9100Lに対して“リファービッシュ”では1万2100L(同91%減)になった。また、原材料資源は新品が266.7kgが“リファービッシュ”では23kg(同86%減)に、電子ゴミは新品が200.2gに対して“リファービッシュ”では22g(同89%減)に環境負荷が軽減されている。

 リチャード氏は、このレポートについて“リファービッシュ”製品が改善できることを証明できたと成果を強調した上で、「電子ゴミの削減や過剰生産を減らす取り組みに多くの人が納得し、ベストソリューションであることを認識してもらうことが非常に重要」とコメント。

 また、「Back Market」の成功によって“リファービッシュ”製品への取り組みが、循環型社会実現への貢献だけでなく、企業に利益をもたらすことができることが証明され、サステナビリティと利益を両立させられることを証明したいとした。

日本の“リファービッシュ”製品は、質が高い?

 ラローズ氏は日本における“リファービッシュ”市場拡大のヒントを「供給と質のレベルを上げること」と指摘。日本人は、品質に対しての期待が高いと考えを示した。

 ラローズ氏は、今回の訪日で、日本チームと共同で日本の大手修理販売業者をまわり、高い品質の業者に加わってもらうことで、供給量やバリエーションを増やしていくとした。

 一方で、日本の“リファービッシュ”製品については「クオリティが非常に高い、不良率は世界でも一番低い」と指摘。その要因としては「カバーの装着など、ユーザーが慎重にデバイスを使っている」点や、日本の修理販売業者の設備投資レベルが高い点と分析している。

 このため、ラローズ氏は日本での“リファービッシュ”市場拡大について「楽観視している」とコメント。市場拡大に向けて、ユーザーの信頼を獲得し、「Back Market」で購入したユーザーからの“安心安全である”という口コミを期待したいと明かした。

iPad。左側が“リファービッシュ”製品だというが、ぱっと見キズなどを見つけることができなかった

アップルへは「保守で利益が出る」ように姿勢を改めるべき

 また、アップル(Apple)へのコメントを求められたラローズ氏は、「アップルは、コンシューマー向け電子機器市場の多くを占めておりその責任は重い。自分たちの成長は、アップルをそそのかすように“製品は長く使えなければならない”ことを訴えられる」と説明。

 そのうえで、アップル自身が「製品を長く使う方向に舵を切るべき」と、メーカー自身が変わらなければならないと指摘した。

 アップルでは米国など一部地域でリペア部品の供給や、修理へのサポートを行っているが、ラローズ氏は「これだけでは不十分」とした上で、“リファービッシュ”がメーカーの主要な利益にならなければならないとした。

 自動車業界でも、修理や保守で利益を獲得できるようになっているとし、アップルだけではなく、ほかのメーカーも含めて同様の利益構造になっていくよう、メーカー自身の姿勢を変えるべきだと主張した。

iPhone、こちらも左側が“リファービッシュ”製品
“リファービッシュ”製品のiPhone。さまざまな角度から見てみたが、こちらもキズなどを発見できなかった。グレードにもよるがBack Marketの品質へのこだわりがわかる

【お詫びと訂正】
 本稿初出時、日本法人代表が途中から山田氏となっておりましたが、正しくは山口氏です。お詫びして修正いたします。