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KDDIとWi2、「OpenRoaming」による公衆無線LANプラットフォームを展開へ――東京都のフリーWi-Fiに導入でより便利に進化
2023年3月29日 14:00
KDDIとワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)は29日、国際的な無線LANローミング基盤「OpenRoaming」をサポートした公衆無線LAN構築プラットフォームを4月1日から自治体などに提供を開始すると発表した。
あわせて、東京都から公衆無線LAN運営を受託し、3月31日からOpenRoaming対応のフリーWi-Fi「TOKYO FREE Wi-Fi」を運用する。
1つのIDで世界中のWi-Fiにセキュア接続
OpenRoamingは、Wireless Broadband Alliance(WBA)が推進する国際的な公衆無線LAN基盤。ユーザーは、対応する端末を設定したりアプリをインストールしたりしておくと、一つのIDで世界中の対応アクセスポイントを無料で利用できる。
これまでの公衆Wi-Fiでは、接続の障壁を下げるためにセキュリティが設定されていなかったり、サービスごとに異なるIDが必要だったりしていたほか、異なるSSIDが使用されており、Wi-Fiを利用するたびに設定が必要だった。
OpenRoamingでは、1回の設定だけで世界中のアクセスポイントに自動で接続される。OpenRoaming対応のアクセスポイントでは、SSIDが異なっていても認証子や証明書などで自動的にかつ暗号化された安全な接続ができる。接続に対してSSIDではなく認証子を照合して接続するため、公衆無線LANで課題となっている偽のアクセスポイント(ユーザーの情報を盗み出したり攻撃したりすることを目的とした不正アクセスポイント、正規のSSIDと同等または似たような名前で開設されることが多い)対策にもつながる。
海外では普及しているものの、国内4キャリアでは初の取り組み
今回の取り組みに先立ち、3月5日に開催された東京マラソン2023でOpenRoamingを使ったWi-Fiの試験運用を実施したところ、多くの外国人ランナーの端末が、OpenRoamingの仕組みを利用してWi-Fi接続された。
なお、試験運用では、バックボーン回線に衛星通信Starlinkや5G SAによるネットワークスライシングを活用する実証を行い、混雑した場合でもWi-Fiの容量確保ができることを確認している。
OpenRoamingでは、自国で設定するだけで海外のアクセスポイントにも自動で接続されるため、海外からのユーザーが日本国内のアクセスポイントに接続することや、逆に日本ユーザーが海外のアクセスポイントに接続することが容易になり、言葉の壁なくWi-Fiを利用できる。
世界では100万程度のアクセスポイントがあるほか、一部の海外通信事業者では、OpenRoamingの認証をSIM認証で実施できるキャリアもある。
Wi2では、インフラ設備やIDプラットフォームを開発・運営
Wi2は、OpenRoaming対応のアクセスポイントを運営するプラットフォームやバックボーン回線の運営管理のほか、利用者IDのプラットフォーム開発や運営などを行う。
東京都との取り組みでは、東京都のIDプラットフォームを開発し、パソコンやスマートフォンからWebサイトにアクセスし、プロファイル設定などを一度行うだけですぐに利用できる。
OpenRoamingのWi-Fiは暗号化されているため、初期設定時には通信環境が必要となるが、「TOKYO FREE Wi-Fi」では設定するユーザー向けに接続先が制限された暗号化されていないアクセスポイントを用意する。設定が済んでいないユーザーは、まずこのアクセスポイントに接続し、設定を済ませると、次回セキュアな接続ができるようになる。
OpenRoamingのIDプラットフォームについては、KDDIの「au Wi-Fiアクセス」最新版でサポートしている。「au Wi-Fiアクセス」アプリでOpenRoamingの規約に同意するなど設定しておけば、東京都のIDがなくても「TOKYO FREE Wi-Fi」が利用できる。
「TOKYO FREE Wi-Fi」は、3月31日のスタート時は都庁やバスタ新宿の東京観光情報センター(Wi-Fi 6Eをサポート)、新宿都税事務所、都立大久保病院で利用できる。今後は、現在展開している既存の公衆無線LAN設備のリプレイスなどで、2023年度中に600カ所まで拡大することを目指す。
なお、都営地下鉄では3月31日に訪日外国人向けの公衆無線LANサービスが終了するが、4月1日から都営大江戸線都庁前駅でOpenRoaming対応のフリーWi-Fiサービスを提供する。今後ほかの場所での拡大も検討しているという。