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ソフトバンクとSandbox AQ、量子コンピューター時代の次世代暗号実用化で協力

 ソフトバンクとSandbox AQは、量子コンピューター時代に向けた次世代の暗号技術の早期実装に向けたパートナーシップ契約を締結した。

2社で次世代セキュリティ実現へ

 両社は今回の契約に基づき、耐量子計算機暗号(Post Quantum Cryptography:PQC)を使用したVPNなどの実用化に向けて協力する。

 PQCは、デジタル署名などにも利用可能かつソフトウェア上で実装可能なため、ハードウェアの制約がなく、既存のスマートフォンやタブレットも対応できる。インターネットVPNへの実装が予定されており、エンドユーザーとソフトバンクのデータセンター間で攻撃を受けた場合でも、ユーザーの安全は担保されるという。

量子コンピューターにより暗号弱体化

 現在、広く普及している「RSA暗号」は、盗聴者が暗号鍵を発見するための計算に1億年以上もの時間が必要されており、実質的に解読は不可能とされる。

 一方で、量子コンピューターは従来型のコンピューターと比べて格段に短い時間で計算が可能になる。たとえば、従来型のコンピューターでは解読のために10億回の計算が必要なところを1回の計算で実行できるという。

 こうしたことから、現在使われている暗号は、量子コンピューターの登場によって相対的に脆弱化してしまうおそれがある。

 RSA(2048bit)は、2030年までは安全に利用できるとされているが、量子コンピューターが登場するとそれ以降は解読される危険性が高まる可能性がある。

 こうした問題を解決するため、より長い暗号鍵長のRSAの利用や量子コンピューターでも解読が困難な新型暗号のPQCやQKD(Quantum Key Distribution)の実用化は不可欠とされている。

IoT向けの展開も検討

 Sandbox AQが提供するPQCは、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)による「耐量子計算機暗号標準化プロジェクト」のラウンド3最終候補および代替候補として選定された複数のアルゴリズムを使用できるため、将来の標準化を見据えた検証が行えるという。

 同社はグーグルの親会社であるアルファベットから独立した企業。ソフトバンクではSandbox AQとパートナーシップを結んだ理由として、同社がソフトウェア開発や暗号技術などに高い専門性を持っているためと説明。

 加えて、特定のアルゴルズム推進に縛られないことや量子ゲート方式のコンピューターを開発していた経験から、量子技術に対する知見があるとした。

 ソフトバンクでは、2022年夏までに5Gや4G、Wi-Fiといったさまざまなネットワーク上でPQCアルゴリズムを動作させ、ネットワーク、マシン、ユーザーの観点から性能の評価検証するとしており、標準化に先駆けて早期に商用ネットワークへのPQCを適用することや将来的に増加が予測される、IoTセンサーへの攻撃への対抗策として、IoT機器向けのPQCプラットフォームの提供も検討しているという。