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ドコモの「dカード/d払い/dポイント/iD」戦略のカギは「認知度拡大」や「類似サービスとの連携」、ドコモ担当者が語るその戦略は

 NTTドコモの共通ポイントプログラム「dポイントプログラム」について、2022年6月にリニューアルされた。過去3カ月間のポイント獲得数に応じてランクが上がり、ポイント獲得倍率も増えていくプログラムとなった。このほかドコモでは、dポイントに限らずd払いやdカードといったほかの決済手段について、今後ユーザーの利便性を向上させるなど施策を実施し、規模拡大を目指していくという。

 今回は、ドコモ コンシューママーケティング部 シニアマーケティングディレクターの西井 敏恭氏から、キャッシュレス市場の現況と、規模拡大を目指すドコモの展開について聞いた。

コンシューママーケティング部 シニアマーケティングディレクターの西井 敏恭氏

キャッシュレス市場の現況

キャッシュレス市場の現況

 キャッシュレス市場の現状として、国内のキャッシュレス決済比率は2015年の18.2%から2021年には32.5%と成長している。その要因として大きいのは、クレジットカード(16.5%→27.7%)と西井氏は指摘。一方で、コード決済も順調に推移しているという。

 一方、諸外国と比較するとまだまだキャッシュレス決済は伸びしろがあるという。西井氏は、中国で現金決済を断られたことがある経験があるとし、日本ではまだまだキャッシュレス決済が普及する余地があると説明する。

 ドコモでは、クレジットカードの「dカード」、非接触決済の「iD」、コード決済の「d払い」共通ポイントの「dポイント」をラインアップしている。

 dポイントについて西井氏は「『dポイントクラブ』は、2015年12月のサービスインで、他社と比較しても決して早くないスタートだったにもかかわらず、約9200万人まで拡大できた」とコメント。dカードも1600万人まで拡大してきているという。

 dポイントについて西井氏は、ほかと比較して「自社ではなくdポイント加盟店など提携先での利用が約8割に達している」とdポイントの特徴を解説する。

ドコモサービス拡大には「使いやすさ」がカギ

dポイントクラブ

 西井氏は、今後のキャッシュレス市場について「先進国と比較してまだ余白のある市場で拡大を図っていくためには、ドコモでは決済手段としての使いやすさがより重要になる」とし、今後のドコモサービス拡大に向けての指針を説明した。

 たとえば、22年6月にリニューアルしたdポイントクラブの新しい「会員ランク」制度では、「複雑な条件なしでランクが決まる」(西井氏)制度となっている。過去3カ月間のポイント獲得数でランクが決定し、たとえば最上位の「5つ星」になると、ポイント還元率が通常の2.5倍になる。

 西井氏は、「通信契約があれば、それだけで2つ星にランクアップされる」事例を取り上げ、ドコモのサービスや決済を組み合わせて使うことで、ユーザーは意識せずにランクが上がりポイントを多く貯められる旨を説明。

 リニューアル後のdポイントクラブについて西井氏は「ヘビーユーザー(ロイヤルユーザー)からはメリットを感じてもらえているが、それ以外のユーザーにはまだまだ伝わっていない」とし、他社と比較してもロイヤルユーザーを増やせる余地があるとコメント。

ロイヤルユーザーの声

 今後ロイヤルユーザーを増やしていくためには、制度の改定だけでなくそれをアピールすることも重要であると捉え、西井氏は「これまで事業それぞれでやってきたユーザーへの案内を、まとめて案内できるような体制を整えていく」と話す。

 そのために、ドコモの“どの決済手段”であっても、「dポイントを貯めやすく、貯めるほど会員ランクが上がり、またdポイントが貯まりやすくなる」循環をうまく作っていくと今後の方針を示した。

 たとえば、dカードやdカードゴールドのユーザー数が多い一方で、カードでは支払えない場所や店舗について、本当はiDやd払いといった「ドコモの決済手段」が利用できるのに、dカードユーザーにはdカードのプロモーションを実施してきたという。これを、iDやd払い、dポイントなどと同じプロモーションを展開することで、ドコモの決済手段が使える場所でよりお得にポイントをためてもらえるようになるとしている。

 決済手段の種類以外にも、加盟店の認知度がまだまだだという旨を西井氏は説明する。

 たとえば、コンビニやスーパーなど日常生活で使いやすいところは認知されているが、ECサイトやトラベル、家電などで利用できることがあまり知られていないと西井氏は認識しているという。

 今後は、加盟店との連携を強化するほか、ドコモのECサイト自体にもリニューアルなど強化を図っていくとしている。

 最後に西井氏は、ドコモの決済手段全体について「エフォートレス」(ユーザーの努力を無くす)なものへと進化させていくとコメント。わかりにくさの解消や、シニアでも使いやすく、セキュリティと使いやすさの両立を目指して進めていく姿勢を改めて示した。

「エフォートレス」(ユーザーの努力を無くす)なものへと進化させていく

主な質疑

――iDのプロモーションについて、dカード(ドコモ)以外のイシュアー(カード発行会社)を巻き込んだプロモーションはやっていくのか?

西井氏
 当然やっていく。iDの使いやすさ、利便性は高いので、やっていきたい。一方で、iDユーザーの半分は、dカードユーザーのiD連携なので、dカードユーザーに向けてのキャンペーンで、規模を押し上げていけるのではないかと考えている。

――dアカウント認証が使いづらいが、改善されるのか?

西井氏
 dアカウントを使いやすくするシステム改修をしたい。

 アカウント認証、セキュリティに厳しい会社なので、いろんな意味でしっかり守っているという印象。その反面、ユーザーが使いにくい、セッションを保持する時間が短かったりする。

 他社はセキュリティを担保しながらうまくやっているところがあるので、セキュリティを維持しながら利便性を高めていきたい。

――ドコモ口座の影響が大きい?

西井氏
そう聞いている。

――以前、d払い残高でiDが使える構想があったと思うが、進んでいるのか? スピード感に欠けるようにも見える。

担当者
 「dカード mini」をd払いに統合した際、第2段階という構想を踏まえて準備はしている。スピード感がないというご指摘はその通りだが、引き続き準備を進めており、シンプルさとわかりやすさを踏まえて、スケジュールや方針を検討している。

――「最も選ばれる共通ポイント」として、何を指標としているか?

西井氏
 楽天グループなどでは、グループでサービスをもっている。

 一方、ドコモはECが弱いので、使い勝手が悪くみられていると思っている。メルカリやじゃらんなど提携している数が多いが、それがユーザーに伝わっていないのでは? と思っている。

 使える加盟店が多いことを認知させるのが大事。ドコモのECサービス自体も使い勝手が良くなるように、サービスの見直しをしていかなければいけない。

 統合してサービスを提供することが重要だと考えている。

――iDなどのほか、クレジットのタッチ決済が増えていくが、今後をどうとらえているか。

西井氏
 非接触決済手段が増えて、(iDのポテンシャルが)弱くなっているのは事実だと思っている。非接触という利便性が高い時に、ポイントが貯まりやすいとiD決済が増えてくる、逆にdポイントがそこまで貯まらないとほかの決済手段に移ってしまう。

 dポイントが貯まりやすくなることで、iDのシェアが広がっていくのではないか。

――今回、外向きの戦略をとった理由は?

西井氏
 経済圏が弱いのは事実。それを強化していかなければならないが、顧客視点でマーケティングしていくなかで「経済圏で囲い込まれるよりも、使えるところで使えるのがいい」のではと考えた。

――シンプルさを追求するのなら、「キャンペーンのエントリー」はいらないと思っているが、なぜエントリーさせるのか。

西井氏
 現在は、「エントリーすること」でお得になったという価値が出るのではと考えている。

 他社では、決済時にルーレットを回してポイントが当たるという流れがあるが、これがルーレットなしでポイントが貯まっても、ユーザーはお得度を感じにくい。

 ユーザーにお得に感じてもらうためにエントリーが必要と考えている。

 一方で、複雑な条件が適用されるキャンペーンはなくしたい。エントリーというアクションについては、今後も深く考えていきたい。

――「dポイントクラブ」がリニューアルされて以降、認知を広げるためにどのような施策を実施してきたか。どのような課題を認知しているか。

西井氏
 新しいポイント制度となり、シンプルになったと感じてもらえていると思うので、良い方向でリニューアルできたと思う。

 一方、セグメント調査していると、ライトユーザーが、(ポイントが貯まりやすいという認知まで)たどり着くことができていない。

 たとえば、dポイントカードをかざさないとポイントが貯まらないと認識されていることもあり、d払いなどがdポイントと別のサービスと認識されてしまっている。

 今後は、バラバラにプロモーションを走らせるのではなく、まとめてプロモーションを行い、ポイントが貯まる体験を増やせばライトユーザーをロイヤルユーザーに挙げられるのではと思う。

 たとえば、実施中の「5億円分のポイントバック」キャンペーン(1月31日まで)では、dポイントだけでなくd払いやdカードのユーザーもお得になる。

 (統一したサービスを目指すため)サービスのネーミングについても、変更の必要が出てくるかも知れない。自社のECのリニューアルなども図っていかなければいけないと思っている。

――金融と決済サービスは今後連携していくのか?

西井氏
 重要なことだと考えている。

 キャッシュレスに絡めてシームレスで使いやすいものを目指していく。

 現在金融事業と決済事業は別々で走っているが、これらの事業をしっかり統合して、力を入れてキャッシュレスと一緒にやっていく。