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「5Gは4Gの2.5倍使われる」「5Gエリアは90%へ」――KDDI株主総会で語られたこと

 KDDIは22日、第38期定時株主総会を開催した。新型コロナウイルス感染症の影響で、都内会場とオンライン配信での開催となり、議事の一部を短縮して実施された。

KDDI代表取締役社長の髙橋誠氏

事業報告

 議長を務めたKDDI代表取締役社長の髙橋誠氏は、第38期の事業について報告した。

 売上高は前期比2.5%増の5兆4467億円で、営業利益は2.2%増の1兆606億円。親会社の所有者に帰属する当期利益は、3.2%増の6725億円となった。

 続いて事業別の概況に目を移すと、auやUQ mobileなどの通信サービスをはじめとしたパーソナルセグメントの売上高は、前期比1.9%増の4兆6700億円。営業利益は0.3%増の8655億円で、増収増益となった。

 髙橋氏は、端末販売収入の増加や、ライフデザイン領域の拡大などを、増収増益の要因として挙げた。

 「au PAY」などをはじめとする決済・金融サービスの取扱高は、前期比29.4%増の11.7兆円に成長した。

 法人向けにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するビジネスセグメントは、売上高が前期比4.6%増の1兆426億円。営業利益は、11.1%増の1860億円となり、増収増益を達成した。

今後に向けて

 KDDIは2030年に向けて、5G通信を中核に据えた事業変革を推進していく。

 商業地域や鉄道などといった生活動線に沿ってエリアを拡大していくほか、ユースケースなどの創出も目指す。

 また、ユーザー1人あたりの平均通信料収入(ARPU)について、最大化を図っていくという。

 第39期の業績予想として、売上高が5兆5600億円、営業利益が1兆1000億円になると見込まれている。

質疑

 事前に株主から募った質問の一部に対し、同社代表取締役副社長の村本伸一氏が回答した。

村本氏

 「au PAYやau IDの不正利用対策として、どのような取り組みを行っているのか」という質問に対しては、「SMSなどを用いた2段階認証に加え、生体認証などの認証機能を採用している」と回答。

 また、ユーザーへの啓発活動を実施しているほか、セキュリティエンジニアが24時間365日体制で監視し、有事の際にはすみやかに対処できるようになっている。

 「2022年3月末の3Gサービス停止に伴う、加入者数への影響は」という質問に対し、村本氏は「具体的な数値の回答は控える」と回答。

 同氏は「ユーザーに迷惑をかけないよう、対象のユーザーほぼ全員に案内できたと考えている。加入者数への影響も想定の範囲内に収まった」としたうえで、「その過程で解約したり転出したりといったユーザーが一定数いることについては、真摯に受け止める」とコメントした。

 今後は、auやUQ mobile、povoといったマルチブランド体制で、ユーザーニーズに寄り添ったサービスを提供していく。

 また、大規模な災害が発生した際の事業継続計画(BCP)に関する質問があった。

 KDDIでは、ネットワーク環境の監視体制の強化に加え、車載基地局や非常用発電機といった設備の強化、定期的な災害対策訓練を実施。災害への対応力向上に努めている。

 総会会場における株主からの質問には、髙橋氏、村本氏のほか、取締役執行役員副社長の雨宮俊武氏と執行役員の松田浩路氏が回答した。

雨宮氏
松田氏

――総務省から、携帯電話の販売方法に対して指摘があったかと思う。これについて、どう考えているのか教えてほしい。

雨宮氏
 販売代理店での不適切な販売行為として、電気通信事業法に違反するような販売実態があるということを指摘されています。

 我々としては、店頭でお客さまのご要望に沿った適切なご案内を行っていただくよう、代理店さまにお願いはしていますが、一部の代理店においてこのような事例が生じているというのも承知しています。

 この件については、我々もわかり次第すぐに対応するようにはしていますが、どうしても対応が遅れてしまうことがあり、これについては非常に重く受け止めています。

 今後は、法令に沿った適切な販売が行われるよう、引き続き代理店の店舗の教育指導に注力してまいります。

――今後の具体的な5Gサービスについて、現時点での考えを教えてほしい。

髙橋氏
 5Gのエリアにつきましては、順調に拡大してきています。半導体の問題などの課題で遅れた部分はありますが、人口カバー率90%を目指して着実に広げています。

 で、4Gのときには、スマートフォンが新しいものとして登場しましたが、5Gの場合はすでにスマートフォンがあり、目立つサービスがお客さまに届いていないように見えるかもしれません。

 ただ、4G端末と5G端末の通信トラフィックを比較すると、5Gでは2.5倍ぐらいトラフィックが使われているんですね。つまり、動画サービスなどを日常的にご覧になっている方が増えているということです。

 そういった方々が使い放題のプランに入り、サービスを使っていく……ということが浸透しているのは事実かと思います。

 また、スタンドアローン(SA)として、5G専用の設備を使ってサービスを提供できる時代がこれからやってきます。

 そうしますと、帯域を確保して大容量のサービスが提供できます。あるいは、レイテンシという反応速度が速いゲームのサービスなどは、ソニーさんと実現しようとしています。

 こういったサービスが今後目に見えるかたちになってくると思いますので、パートナーさんとともに、さまざまなサービスを着実に広げられるよう頑張ってまいります。ぜひともご期待いただきたいと思います。