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「Interop Tokyo 22」基調講演に、スペースX「Starlink(スターリンク)」担当のホフェラー氏が登壇

スペースX スターリンク商業販売担当部長のジョナサン・ホフェラー氏

 ネットワーク技術の展示会「Interop Tokyo 22」が、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催されている(リアルイベントは17日まで)。基調講演には、スペースX(SpaceX)のスターリンク商業販売担当部長(Vice President of Starlink Commercial Sales)のジョナサン・ホフェラー(Jonathan Hofeller)氏がオンラインで登壇し、「Starlink–Connecting the World」と題しスターリンクの今後を語った。

 スターリンクは、低軌道衛星により地球全体に高速インターネット回線を提供するシステム。ホフェラー氏によると、この2カ月の間にかなりのマイルストーンに到達したという。

 スターリンクのようなソリューションは、他社でも何度か試みられているがほとんど失敗に終わっていると言い「この製品がチャレンジングなものであることを非常によく理解している」(ホフェラー氏)と事業発展の困難さを説明した。

 ホフェラー氏は、15年以上にわたって毎年スペースとコネクティビティの両方で驚くべき変化が遂げられていると感じているといい、今年も前年よりもさらに画期的になっているという。

 ホフェラー氏は、高速インターネットを地球上の隅々まで普及させることの重要性について、近年のパンデミックによってそれが以前よりも明らかになったと説明。

 「コネクティビティの重要性は、単に音声通話をするための接続だけでなく、教育、保健、医療、福祉など、さまざまな分野で活用できる接続性を備えていること」(ホフェラー氏)とし、人類に多大なインパクトを与えられる価値のあることだとしている。

これまでのスターリンク

ホフェラー氏
 この数カ月は、非常に忙しい一年でした。

 そして、2000機以上の衛星を打ち上げ、十分に運用可能な衛星群を持つようになりました。

 さらに、私たちは強力な顧客基盤を構築しました。一般/商業含めたあらゆるお客様と、学校や診療所、石油/ガス、エネルギーなど、さまざまな業種のお客様にもご利用いただいています。

 コネクティビティでは、まだまだやるべきことがたくさんあります。私たちはまだ立ち上がったばかりですが、より多くの通信容量と端末を持っており、どのようにすれば世界中に影響を与えられるかを考えています。

スターリンクのユースケース

ホフェラー氏
 スターリンクは固定通信として、さまざまな用途があります。

 学校への接続では、今年10万人以上の生徒にコネクティビティを提供します。さらに、世界中の組織と協力し、提供の機会を探っています。

 このほか、農業やエネルギー分野、輸送など遠隔地との連携をサポートし、森林伐採や森林管理、災害救助などにも役立てられます。

 災害への備えというのは、あまり話題になりませんが、私たちはこのような技術や能力について多くの人に知ってもらいたいと考えています。

 世界には、あまり注目されない災害が数多くあります。

 昨年はヨーロッパで洪水が発生し、数カ月前にはトンガで津波が発生しました。ほかにもハリケーンや地震などあらゆる災害が瞬時にコネクティビティを持って行ってしまいます。

 私たちの製品では、数時間数日のうちに通信機器を整備し、コネクティビティを失った方々に提供できます。

 私たちは、世界中の政府と協力して、災害に対応するのではなく、災害を意識して積極的に取り組み、スターリンクで対応できる能力を持つようにしています。

 携帯電話会社は、さまざまな国ですばらしいネットワークを構築しています。

 KDDIは日本全国でネットワーク構築を行っていますが、基地局となるタワーをいくつも建ててつなげなければなりません。私たちの製品では、農村部でも「都市部と同じレベル」の4G/5Gコネクティビティを、私たちの技術とKDDIの専門知識で提供できると信じています。

 また、海上では、海運や漁船などに高速で低遅延のコネクティビティを提供します。

 空にもコネクティビティを提供します。飛行機に乗りインターネットに接続するために面倒な認証作業は不要で、すぐにインターネットが利用できる未来を目指しています。

「不可能だ」という声を信じない

ホフェラー氏

 先ほども申し上げましたが、スターリンクの構築は非常に難しいものです。端末を作り、規制当局の認可を受け、顧客網を構築する必要がありますが、私たちはこのプロジェクトは達成されるべきものだと考えています。

 スペースXは過去10年半の間に、非常にアクティブにプロジェクトを進めてきました。

 私たちが1号機を計画したとき、民間企業には打上げ用ロケットを作ることができないと言われました。しかし、私たちはそれを設計し製造しました。

 また、ロケットを製造し発射させることは不可能だと考えられていましたが、私たちは成功させられました。このような懐疑論を考えていれば、何千何万の衛星は作れませんでした。

 しかし、私たちのプロジェクトはまだ道半ばで、これからも設計し実行していきます。

 私たちの最終的な目標は、まだ人がいない惑星を自分の家にすることです。不可能だと言われていますが、懐疑論者に耳を貸さないこと、できないと言っている人に耳を貸さないことが重要だと思い、自分自身にも言い聞かせています。

 私たちの子供がよりよいエキサイティングな未来を築くことができるように取り組んでいきます。そして、私は宇宙の一部になれることを改めて光栄に思い、また日本の皆さんとお話できることを期待しております。