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ドコモが目指す「ZTO」っていったい何? ドコモ・品川ビル見学レポート

 NTTドコモは29日、同社の品川ビルで報道陣向けの説明会を開催した。ネットワークの安定運用などに関する説明に加え、日々の監視や制御を行う「NOC(ネットワークオペレーションセンター)」の見学会も実施された。本記事では、その内容をお届けする。

「NOC」とは

 ドコモの「NOC(ネットワークオペレーションセンター)」では、ドコモの通信サービスが円滑に提供されるよう、24時間365日監視が実施されている。

 ドコモのNOCは東京の品川ビルと大阪南港ビルの2拠点体制となっており、今回は品川ビルを見学した。

品川ビルの外観

 オペレーションルームにはモニターがずらりと並び、全国各地の基地局の状況を示している。たとえば赤色は「サービスに影響のおそれがある警報」など、色分けによって基地局の状況がわかるしくみ。

 写真には赤い表示が多く、故障が頻繁に発生しているような印象を受けるかもしれない。ただし、ドコモによれば、「設備の二重化などを実施しているため、どこかひとつの装置で故障が起きたとしても、サービスに影響がある故障はごくわずか。また、点検の際に計画的に警報を送っている基地局もある」という。

 モニターには、全国各地の基地局の状況のほか、気象情報なども表示される。緊急地震速報を受信した際なども画面に情報が表示され、迅速に対応できるかたちとなっている。

 オペレーションセンターは年中休まず稼働し、常に複数のオペレーターが勤務。ドコモのネットワークの一元管理を行い、設備の故障や不具合にいち早く気づいて回復措置をとっている。

プレゼンテーション

 プレゼンテーションの冒頭では、ドコモ ネットワーク本部 サービス運営部 部長の引馬章裕氏が登壇。

 同氏は、東西のオペレーションセンターでネットワークの安定運用を図る取り組みについて触れ、主なトピックスとして「ゼロタッチオペレーション構想」「有事に備えたオペレーション体制」「災害対策の進化」を挙げた。

引馬氏

保守業務の自動化

 ネットワーク本部 サービス運営部 オペレーションシステム担当 担当部長の沼尻政吾氏は、引馬氏が挙げた1つ目のトピックスとして「保守業務の自動化(ゼロタッチオペレーション)」に関する説明を行った。

沼尻氏

 ドコモのネットワークは、約120万の装置から構成されている。内訳は、約110万の基地局アクセス系装置や約10万のリンク系装置など。

 こうしたネットワーク装置はオペレーションシステム(OPS)によって遠隔監視されているが、5Gなどの新サービス開始に伴って監視すべき部分が増加。多様化するサービスなどに対して、保守業務の負担を減らすことが課題となっていた。

 そこでドコモは、「ゼロタッチオペレーション(ZTO)」の実現を目指す。これは、人手による保守業務をシステムによって自動化し、文字通り人の手を介さない(ゼロタッチ)保守を目指すというものだ。

 実際にドコモでは、すでにAIを活用したネットワークコントロールなどの運用を開始。2022年3月下旬には、地震発生時に影響規模の把握などを自動で行うシステムの運用も始まり、ZTOの実装を着々と進めている。

 2022年4月下旬には、海外の装置を対象とした国際ZTOの運用も始まる予定。こうした取り組みにより、アクセス系装置などの復旧時間を従来よりも短縮していく。

オペレーション体制

 続いて、ネットワーク本部 サービス運営部 ネットワーク統制担当 担当部長の溝田亘氏は、ネットワークオペレーションに関する取り組みを説明した。

溝田氏

 前述のとおり、ドコモではオペレーションセンターを2拠点体制で運用している。2016年には、片方のセンターが機能停止しても、もう一方で運用可能な「完全冗長化」を実現した。

 さらに、オペレーションセンターの監視業務をリモートで行える体制の整備も進む。プレゼンテーションのなかでは、リモート体制で実際に使われるツールを用いたデモも実施された。

デモの様子

災害対策

 説明会の最後で、ネットワーク本部 サービス運営部 災害対策室 室長の塩野貴義氏が、災害対策に関する取り組みを説明した。

塩野氏

 ドコモでは、「システムとしての信頼性向上」「重要通信の確保」「通信サービスの早期復旧」の「災害対策3原則」を定め、有事の際に通信サービスの早期復旧を実現できる体制を構築している。

 「大ゾーン基地局」と呼ばれる基地局は、通常の基地局とは異なる“災害時専用”の基地局。半径7kmのエリアカバーが可能で、全国106カ所に設置されている。

 ちなみにこの大ゾーン基地局が稼働したのは、現在までで一度だけ。北海道胆振東部地震の際、釧路市中心部で停電が長期化した際に稼働し、エリア救済が実施された。

 また、通常基地局が強化された「中ゾーン基地局」も全国で2000局以上展開。そのほか、船上基地局やドローンの導入なども実施され、災害対策の継続的な強化が図られている。

 こうした災害対策に関しては、定期的なブラッシュアップも実施され、災害時に通信サービスを早期復旧できるような体制が整えられている。

災害への対応事例

その他フォトギャラリー

 品川ビルでは、「5G 可搬型基地局」や「ドローン中継局」、「可搬型衛星エントランス基地局」なども展示された。

 本記事では、フォトギャラリーというかたちで写真を掲載する。

5G 可搬型基地局

ドローン中継局

ドローン中継局の電源

可搬型衛星エントランス基地局と、衛星エントランス搭載移動基地局車

車両内部