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ドコモの通信網を監視するオペレーションルームも公開された
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ネットワークテクニカルオペレーションセンター長の横田博道氏
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NTTドコモは、災害対策や年末年始の通信規制などに関する報道関係者向けの説明会を品川の同社ビルで開催した。このビルは、ドコモの通信網を制御・監視するオペレーションセンターが入っており、当日はオペレーションセンター内部の見学も許可された。
まず、NTTドコモのネットワークテクニカルオペレーションセンター長の横田博道氏から、オペレーションセンターの説明があった。同センターでは、ネットワークの基幹部分を担当し、基地局や回線などの24時間365日の監視、制御を行なう。NTTドコモは、こうしたオペレーションセンターを国内の東西2カ所に集約している。その拠点となるドコモ品川ビルでは、北陸・東海エリアを含む東日本エリアをオペレーションするほか、全国的な対応が必要な場合も品川の施設が担当するという。
■ 災害発生時はまず、優先回線を用意
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災害対策室長の石川数義氏
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次いで、「災害発生時の通話利用の制限」と題したビデオを上映。災害が発生すると、その特定エリアには緊急連絡や安否確認など一時的に通信が集中し、繋がりにくい状態になり、そのために通信が繰り返され、通話件数は通常の数十倍にも膨れあがる様子が示された。また、無線基地局が対応できる端末の台数には限りがあり、通信量が激増して繋がりにくくなれば、緊急通報なども行なえなくなるほか、処理能力を超えたアクセスは、最悪の場合システムダウンし、全面的な通信不能状態を引き起こす可能性もあるとした。このためキャリアでは、一時的通信に制限をかけて、システムダウンなどを未然に防いでいる。
ドコモの災害対策の取り組みを説明した災害対策室長の石川数義氏は、災害対策の3本柱として「ネットワークの信頼性の向上対策」「サービスの早期復旧」「重要通信の確保」を挙げた。中でも重要通信の確保が大切だとし、「我々が災害時に何をしなければならないのか。まず、一般電話の規制をし、同時に電気通信事業法で定められている災害用優先電話を繋いでいかなければならない」と語った。
一般電話を規制する理由については、瞬間的に大量の通信が発生するため、処理能力を超えれば接続処理が不可能になる。このため、緊急用に優先回線を用意する必要があるとした。
発信規制制御のしくみ(PDC方式)は、携帯電話をランダムに8つのグループに分けて、通信規制中は、レベルに応じてそれぞれのグループごとに発信不可と可能が切り替わるようになるというもの。スキャンは5秒毎に行なわれ、8つのグループで40秒間ごとに繋がる場合と繋がらない場合で出てくる。つまり、規制レベルが高く、1つのグループのみ通話可能な場合、40秒の間に1回5秒間のみ接続できることになる。石川氏は、「(電話が)かかる、かからないは当たりクジのようなものだ」と語っていた。
次いで石川氏は、新潟中越地震の際のトラフィックの状況について説明した。地震直後から全国から新潟県内への通話が急増し、通常時の45倍となったという。「特徴は、短時間の間に起こるということ。中越地震では2~3時間の間に集中し、すぐに治まった」とした。また、音声とパケット通信のトラフィックでは、音声は一時的に輻輳状態に陥り、通信規制で沈静化させたという。一方のパケット通信は、通信制限はかけておらず良好に接続できたという。
このほか同氏は、今後の取り組みについても言及。ドコモでは、2006年夏から、音声通話とパケット通信を別個に規制できる機能を提供する予定だ。PDC方式では2004年から導入している機能で、FOMAでも普及にあわせてこうした機能を提供していくという。
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携帯電話と固定電話の違い
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発信制御の仕組み
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電波の有効利用
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新潟中越地震のトラフィック状況
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パケット通信は規制されなかった
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災害伝言板の運用状況
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■ 年末年始の輻輳対策、今年はFOMAも検討
続いて、ネットワークテクニカルオペレーションセンターのネットワークコントロール担当部長の柴田進氏より、ドコモの年末年始の輻輳対策が発表された。
柴田氏によれば、近年になって音声の「おめでとうコール」からメールなどを使ったデータによる「おめでとうメール」が増えたため、トラフィックは減少傾向にあるという。ただし、メールは音声ほど通信システムを圧迫しないものの、大晦日から正月に切り替わる0時台に集中する傾向があり、瞬間的な通信規制をかける場合もあるという。また、例年の傾向では、トラフィックの逼迫した状態は0時から30分程度で収束に向かうとのこと。
輻輳対策としてドコモでは、大晦日のカウントダウンコンサートなどのイベントや、初詣などの参拝エリア、お台場などの人気スポットなどの監視体制を強めるという。また柴田氏は、例年、大晦日の通信規制はPDC端末のみだったが、2005年はFOMA端末の利用が拡大したこともあって、FOMAの通信規制も検討するとした。最終的な判断はクリスマスなどのFOMAの通信状況などを考慮した上で決定されるという。
なお、前述の石川氏は、「0時台に集中するため、その時間帯は多少避けて欲しいのが本音だ」と語っていた。また、繋がらない時に何度もリダイヤルを行なうことも、高負荷の原因となるため避けた方がいいようだ。
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「おめでとうコール」のトラフィック状況
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おめでとうメールのトラフィック状況
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0時過ぎ30分間がピーク
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初詣地域は通信規制対象エリア
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花火やイベントなどで一時的に通信規制
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■ iモードシステムの運用体制を紹介
このほか、オペレーションセンターのiモードサービス関連の運用を行なうプラットフォーム部 プラットフォーム運用担当部長の伊藤正憲氏は、約4,500万人を抱えるiモードセンターの体制について説明した。
1999年にスタートしたiモードサービスは、順調にユーザーを増やし、電気通信事業者協会(TCA)の発表では、現在4,500万人のユーザーを獲得している。2003年には、新たなゲートウェイシステムとして「CiRCUS」を導入し、PDCやFOMAのデータ通信を制御している。iモードセンターの特長は、多くのサーバーで運用されているiモードサーバーの故障を早期に発見するために、システム側が、携帯電話の通信にみせかけた擬似的な信号を発して障害の予兆を発見し、不具合を未然に防止するというもの。また、万が一の自体に備えて、メインセンターのほかにバックアップセンターも用意されている。伊藤氏は、「バックアップセンターを用意しているのは現在ドコモのみ。テロなどでメインセンターが機能しない場合にも対処できる」と語った。
なお、このメインセンターとバックアップセンターは、オペレーションセンターで監視され、iモードシステムを監視する体制を同社では「CARNiVAL」と名付けている。
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iモードユーザーは約4,500万人
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iモードセンターのネットワーク構成
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iモードセンターの特長
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バックアップセンターも用意されている
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iモードは世界最大級の通信システム
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CARNiVALでiモードを監視
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■ ドコモ網をコントロールするオペレーションルーム
説明会終了後に、オペレーションルームの見学が許された。この部屋には、70インチの巨大スクリーンが縦3段、横8列の計24台が設置され、常時20名以上のスタッフが交代で24時間365日監視をドコモの通信システムの監視を行なっている。
基地局に輻輳などが起きそうな予兆が基地局に発生するとフラグが立ち、監視スタッフの背後に控えるネットワーク部門や技術部門が対応するという。仮に故障が発生した場合は、技術部門が遠隔操作などによる故障の対応を行ない、ネットワーク部門が通信の迂回措置などの検討を行なうという。
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オペレーションルーム内は粛々と作業が進む
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スクリーンには、基地局の状態などが表示されている
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■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
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(津田 啓夢)
2005/12/07 20:33
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