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21年3月位第3四半期のドコモは増収減益――「homeでんわ」の戦略や5Gの今後とは

 NTT(持株、以下略)は、2021年度第3四半期決算を発表した。NTTの営業収益は8兆9232億円、営業利益は1兆5397億円で対前年比で増収増益。完全子会社であるNTTドコモの営業収益は3兆5175億円、営業利益は7696億円で対前年比で増収減益という結果だった。

左からNTT 執行役員 財務部門長 中山和彦氏、同 代表取締役社長 社長執行役員 澤田純氏、同 執行役員 経営企画部門長 谷山賢氏

ドコモは増収減益も利益は改善傾向

 発表の場には、NTT 代表取締役社長 社長執行役員の澤田純氏が登壇。ドコモは、オンライン専用ブランドの「ahamo」や音声卸料金の値下げによる影響を受けた一方、「月々サポート」の廃止やドコモへのアップセルが健闘したものの、モバイル通信サービスは565億円の減収となった。

 全体の営業利益としては対前年比で減益となったものの、端末販売やスマートライフ領域は380億円増と順調な伸びで全体の収益としては対前年比で増収となった。

 前年度のポイント会計制度の見直しを除き、第3四半期を単期で見た場合、151億円の増益となる。第1四半期から徐々に利益改善が進められてきたかたちと澤田氏。

 スマートライフ領域の成長が大きく影響しており、第4四半期ではさらなる成長が見込まれるという。今後も「決済・金融決済領域の拡大とともにメディカル、XR分野の取り組みを加速、法人事業におけるNTTコミュニケーションズとの連携強化などを通じて引き続き成長を図っていく」とした。

 また、第4四半期では5Gの投資拡大を以前から進めてきたことで、利益に対するコストが小さくなることが見込めるほか、3Gの不要資産の除却もないため安定して利益が大きくなると澤田氏は予測。このほか、端末などのWeb販売を進めて販売コストも削減に努めてきたことから、今年度の年間計画達成は可能という見通しを示した。

 このほか、金融・決済取扱高は6兆4900億円。うち、dカード取扱高は4兆8500億円、d払い取扱残高は8990億円だった。

 また、dカードの契約数は1538万契約で、うちdカードGOLD会員数は869万契約。d払いユーザー数は4165万ユーザーで、決済・ポイント利用可能カ所は前年同期の287万カ所から387万カ所まで増加した。

homeでんわで固定電話客取り戻す

 決算説明会では、4日に発表されたドコモの固定電話「homeでんわ」についても紹介。現在、利用中の電話機を端末につなぐだけで固定電話を利用できるというもの。

homeでんわ HP01

 発信者番号表示や迷惑電話対策に加えて、550円分の無料通話を備える「homeでんわ ベーシック」、基本機能のみの「homeでんわ ライト」の2プランが提供される。

 工事不要で電話機の買い替えが必要ないなどの利点を持つサービスだが、一方でNTT東日本・NTT西日本の固定電話サービスと競合関係になるという見方もできる。これについて、澤田氏は「固定電話とモバイルをセットで契約できるというイメージ。他社は先行しており、NTT東西としてはどんどん(ユーザーを)取られている。そこにドコモが来ることで、NTTグループとしてとられたユーザーを取り返すということ」とコメント。

 「ようやくスタートラインにつく。(ドコモの)完全子会社化で移動と固定の融合サービスをやると言っていたが、そのひとつとなる」として、NTT東西とドコモを競合とするよりも、他社に流出したユーザーをグループ一体となって取り戻すという立場を明らかにした。

メール持ち運び利用者は「そこまで多くない」

 澤田氏は、2021年12月から提供が始まったキャリアメールの持ち運びサービスについて「(持ち運べないキャリアメールが)競争促進のボトルネックになっていた。だからこそキャリア各社がやろうということだった」と言及。

 その上で「(利用者は)量的にはそこまで多くない」とコメント。一方で「SNSを見ているとキャリアメールが持ち運べて、これはいいなという人がいるというのも事実」と語った。

 このほか、ahamoは契約200万件半ばまで達していることが明かされたほか、出遅れたとするエコノミーMVNOについても伸びを見守っていきたいと語った。

5Gの普及に向けて

 会見では5Gの普及についても言及された。ドコモでいう「普及率80%」はあくまで新周波数で展開される5Gを基盤とするという。4Gからの転用で5Gを普及させる考えのKDDIやソフトバンクに対して、5G用として割り当てられた周波数での展開を推し進めていくのが、ドコモと他社との決定的な違いだ。

 ドコモでは4G転用の場合、5G本来の通信速度で利用できない可能性があることから優良誤認に当たるのではという見解を示してきた経緯がある。

 総務省では、2023年度末までに5G普及率90%を目指すとしている中、澤田氏は「総務省がいう5Gが新周波数か4G転用かは分からないが、転用周波数で広げるというのであれば設備投資額は大きくは増えない」としつつ「(5G普及の)前倒しは頑張っていきたい」と認識を示した。

 加えて、5Gの良さは、当初はIoTなど企業ユースで受けられるとコメント。企業向けでは多数のサービスが立ち上がりつつあり、IoTは5G化が進んでいくだろうと語る。

 一方の消費者向けでは、5G SAかつミリ波が求められる、メタバースのようなサービスでなければ、5Gの良さを実感するのは難しいのではと指摘。端末・サービス・ネットワークが総合的に消費者向けに5Gを活かせるのは、もうしばらく先になるだろうという見解を述べた。

 また、通信料金に対するNTTの考え方として「安くて使いやすいものは常にあるニーズ。料金やサービスはこれからも努力して受け入れられていくようにしたい」ということに加えて「(政府の比較対象の国で)世界1位の安さになっていることからも、一旦(価格)競争は一段落したのでは。ARPUを高めたり、コスト効率を挙げたりサービスを増やすといったことで次の投資を生む努力を事業者側がすべき」とした。

2月1日の通信障害について

 2月1日に発生したドコモの通信障害は、IPv6アドレスだけを端末に割り当てる「IPv6シングルスタック方式」の導入時にサーバーの負荷が上昇したことによるものだった。

 これにより、端末に通信を制御する信号が送られたことから一部でインターネットと音声数話の両方が使いづらくなった。これについて澤田氏は「サーバーの容量を増やせばいいというものではなく、過大なトラフィックにどう対処するのかというネットワーク設計を見直す必要があるのではないか」とコメント。

 今後、同様のトラブルを起こさないようにより深い対策をとっていきたいとした。