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ドコモの5G展開戦略、5G本来の性能を発揮する技術でエリア展開

 NTTドコモは、今後の5Gネットワーク展開戦略に関する説明会を開催した。今回は、4G周波数の5Gへの転用についてドコモの見解と、低遅延実現への取り組みを中心にご紹介する。

4G周波数による5G展開には慎重

 5Gの展開には、5G専用で割り当てられた新しい周波数帯を使う方法と、既存の4G周波数を5G通信にも活用する方法がある。

 5G専用周波数は、これまでの周波数帯よりも周波数の幅が広く確保できるため、高速大容量通信ができるため、5G本来の力を引き出した通信サービスが行える。一方、直進性が高い周波数帯であるため、遮蔽物に弱く1つの基地局に対してサービスエリアが狭くなってしまう。

新周波数は直進性が高く、電波が届きづらい
4G周波数の5Gへの転用

 一方、4G周波数の活用では、既存の基地局や周波数帯を利用できるため、広域なエリアで低遅延などの5Gのメリットを生かしたサービスができるという。一方で、周波数の幅は4Gと同じであるため、速度は4Gと同等であり、新周波数ほどの高速大容量通信はできない。

 また、既存の4G通信で利用できる周波数が減るため、既存の4Gユーザーの通信速度が低下する可能性がある。同社では、数十%単位で速度低下の可能性があるとしている。

速度は4Gと同等程度
4Gユーザーの速度低下の可能性

 同社では、これらのメリットとデメリットを鑑みた上で、「4G周波数を5Gに転用できる」制度化には賛同するとしている。一方、ドコモ5Gのサービス展開における、4G周波数の転用には慎重だという。

 また、4G周波数転用で5Gサービスを実施する場合、専用周波数でのサービスと比べ速度などで劣ることから、優良誤認とならないような案内が必要だと考えている。具体的には、5Gエリアマップに専用周波数のエリアとは別に転用周波数のエリアを分けて案内するなど。これに加え、4Gユーザーの速度低下ができるだけ避けられるよう、4Gユーザーの利用状況をあわせた配慮が必要だという考えを示した。

制度化には賛同
優良誤認とならないように、また既存4Gユーザーへの影響の考慮が必要

スタンドアローンで低遅延を実現

 ドコモでは、5Gの特徴である低遅延を実現するため4Gのネットワークとは別のネットワークを構成するスタンドアローン(Stand Alone、SA)方式を2021年度中に導入する。

スタンドアローン方式の導入

 ネットワーク全体の低遅延を実現するために、5Gのコアネットワーク装置「5G-Core」による「ネットワークスライシング」技術を導入する。

 「ネットワークスライシング」技術は、コンテンツの要件に応じて仮想的に分割したネットワークを使い分ける技術。低遅延が必要なコンテンツでは、一度に送るデータを細かく分けて送受信し、大容量が必要なものでは、一度のデータを大きくするなど、帯域をコントロールできる。同技術の活用で、アプリやサービスごとに、5Gの特徴をより柔軟に提供できるとしている。

低遅延に関する取り組み

 ドコモによる低遅延に対する取り組みは、「5G-Core」による「ネットワークスライシング」技術の導入以外にもある。

 デバイスとコンテンツサーバーの間には、基地局以外でもさまざまな装置を経由して通信する。この装置の数や物理的な距離を減らすため、通信先であるサーバーを近くに置くことで低遅延を実現する「MEC(Multi-Access Edge Computing)」や、MECの特徴を持つクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」のサービスを提供している。

今後の5Gサービス展開

 ドコモの5Gサービスの展開は、高速・大容量が実現できる「新周波数による5G」を積極的に展開する。総務省に提出している基地局整備計画よりも約2年前倒しで整備できる予定。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、基地局整備の遅れが心配されたが、対策を実施した上で概ね予定通りの整備ができているという。

 また、5Gのユースケースとなる新たな映像体験も提供していく。スポーツのマルチアングル観戦を実現する「マルチストリーミング」や、新感覚のライブ体験を実現する「360°映像」や「VR」などのコンテンツを今後も提供していく。

 同社では、2021年度中に導入予定の「5G-Core」を導入したスタンドアローン方式のサービスで、5Gの特徴を活かしたサービスを柔軟に提供していくとしている。