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MVNOと大手キャリアの接続料交渉は適切に進められているのか? 総務省が制度整備案を発表

 総務省は、「接続料の算定等に関する研究会」(以下、同研究会)において取りまとめた、「卸協議の適正性の確保に係る制度整備について(案)」に対するパブリックコメントの募集を開始した。意見提出の期限は2022年1月28日で、郵送の場合は同日付け必着となる。

 総務省では、2017年3月から同研究会を開催し、多様なサービスが公正な競争環境の中で円滑に提供されるよう、公正競争確保の基盤である、接続制度などについて検討を行ってきた。

 2021年9月に取りまとめた第五次報告書では、指定設備卸役務に係る事業者間協議が有効に機能し、料金その他の提供条件の適正化が自律的に進むような制度整備の検討を行うことが適当とされた。

 これを踏まえ、同研究会で2021年12月までに4回の会合を開催し、前提となる卸協議の実態や制度整備の在り方について、オブザーバーである関係事業者、事業者団体の意見を聴取しながら検討を行い、「卸協議の適正性の確保に係る制度整備について(案)」をとりまとめた。

 MVNOからは、接続料に関して、大手キャリアとの協議がうまく進まないことがあるとして、問題点が指摘された。

MVNOが指摘した問題点
  • NDA締結前の段階で不成立となるケースが多い
  • 要望・提案の受領連絡のみで協議が終了するケースがある
  • 卸先事業者の提案が具体性を欠くために協議が不成立になることがある
「卸協議の適正性の確保に係る制度整備について(案)」の概要
卸電気通信役務は、電気通信事業者の創意工夫によって高度かつ多様な電気通信サービスの提供を可能とするために、相対を契約を基本としているが、長期にわたって、第一種指定電気通信設備又は第二種指定電気通信設備を用いた卸電気通信役務の料金が高止まりしているという指摘がある。

このため、総務省では2019年9月に「指定設備卸役務の卸料金の検証の運用に関するガイドライン」を整備し、検証作業を実施している。

こうした環境の整備に向けた検討を行うため、卸元事業者および卸先事業者に対して、卸協議の実態などについてヒアリングしたところ、指定卸役務の協議をめぐって、卸元事業者は基本的に問題が生じていないとする一方、卸先事業者からは、NDA締結前の段階で不成立となるケースが多い、要望・提案の受領連絡のみで協議が終了するケースがある、卸先事業者の提案が具体性を欠くために協議が不成立になることがある、といった問題提起がされた。

これまで、有識者会合や総務省による指摘を受ける以前の段階で、事業者間の協議などで指定卸役務の卸料金は引き下げされてこなかったことや、一部のMNOとMVNOの間では大臣裁定にまで至るなど、事業者間で問題の解決に至らないこともあった。

さらに、協議を巡る双方の認識の相違から、現在の指定卸役務については形式的に「相対契約」となっているが、双方が十分に納得した協議が行われているとは言えず、指定設備の設置事業者に交渉上の高い優位性を認めざるを得ない状況であり、現状を踏まえると現行制度下で引き続き相対協議に委ねたとしても、指定卸料金の高止まりが生じる懸念が払拭されない。

通信市場における競争がより有効に機能するためには、指定設備の設置事業者のみならず、設備を利用した多様な事業者が創意工夫することで、市場全体としての競争が促進され、料金の低廉化やサービスの多様化が期待される。

このため、指定卸役務の提供についても、引き続き相対協議を基本としつつ、現在の交渉環境を改め、指定設備の設置事業者の交渉上の優位性や、両者間の情報の非対称性を是正し、より協議が実質的・活発に行われるための環境整備が必要である。

具体的には、指定卸役務については、指定設備設置事業者が誠実に交渉の席に着き、協議に応じることを担保するため、指定卸役務を提供する電気通信事業者に対し、正当な理由の無い限り指定卸役務を提供する義務および、それを担保する措置や、料金の算定方法やその他協議の円滑化に資する一定の事項について、卸先事業者の求めに応じて情報を開示する義務および、それを担保する措置を設けるべく、電気通信事業法の第86号を改正を行うことが適当としている。

事業者間の適切な競争環境に及ぼす影響が少なくないものとして、規制対象とする指定卸役務の範囲については、指定卸役務を提供する電気通信事業者と卸先事業者の間だけでなく、当該電気通信事業者間の意見も異なっていることから、指定卸役務の範囲とも密接に関係している開示する情報の範囲とあわせ、引き続き検討することが適当としている。

固定通信については、参入後の協議の在り方について、特に卸先事業者から、実質的に「通知」になっている、NDAの問題があり団体協議が成立していない、などの意見があったことから、これらの点を含めて引き続き検討することが適当とした。

モバイル音声卸の標準的な卸料金の公表について、全指定設備設置事業者の公表を前提に検討する旨の意見が当該電気通信事業者の一部から出されており、この点について引き続き検討することが適当とした。

「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」改定

 「接続料の算定等に関する研究会」の第五次報告書で、モバイル接続料の算定方法の詳細および具体的な値について、算定根拠などを通じて総務省へ提出することが適当とされたことを踏まえ、総務省では電気通信事業法の一部を改正する省令案などを作成し、行政手続法に基づき意見募集を行った上で、ガイドラインの改定を行った。

 今回の改定では、接続料の算定にあたり、将来減価方式を用いた算定において、従来は「原則として設備管理運営費及び正味固定資産価額の全ての算定区分並びに需要の予測値について予測対象年度における見込みを反映することが求められる」としていた内容が、「設備管理運営費及び正味固定資産額の全ての算定区分並びに需要の予測値について、予測対象年度における見込みを反映することが求められる。ただし、見込みを用いる場合と見込みを用いない場合を比較した上で、見込みを用いない場合が、接続料の算定の確実性に資するときは、この限りではない」に改定された。