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総務省、「接続料の算定等に関する研究会」の第五次報告書を公表

 総務省は、「接続料の算定等に関する研究会」でまとめられた第五次報告書(案)について、2021年7月2日~8月2日まで意見を募集し、結果を踏まえて第五次報告書をまとめ、これを公表した。2017年3月から開催されている「接続料の算定等に関する研究会」での議論を受けたもの。2020年9月には第四次報告書が公表されていたが、その後、5G SA時代を踏まえた課題などが議論されてきた。

 第五次報告書では、「指定設備を用いた卸役務の適正性確保」「フレキシブルファイバ(FF)に求められる対応」「5Gのネットワーク機能開放」「携帯電話料金と接続料等の関係」「モバイル接続料の適正性向上」についてまとめられている。

 たとえば1つ目の「指定設備を用いた卸役務の適正性確保」はどういった内容だろうか。通信業界では、通信サービスを手掛ける事業者(電気通信事業者)が、ほかの電気通信事業者の設備を用いる場合、主に「接続」と「卸電気通信役務(卸役務)」という利用形態がある。たとえば格安スマホなどと呼ばれるMVNOのサービスもそうした部類のひとつ。ただ、「設備を提供する側」と「提供される側」は、どうしても交渉の上で、どちらが優位な立場になりかねない。一般的には「貸す側」のほうが強い立場になるというのは想像しやすいところだが、課題になるのはたとえば卸役務の料金が適正かどうか、といった点。前回の第四次報告書では、「接続」への変更が実質困難とさいう「指定設備卸役務」について、「接続」に代替できないか検証することや卸料金が適正かチェックする必要性が提言されていた。

 今回の報告書では、検証結果として、NTT東日本・西日本の「光サービス卸」については代替性が不十分であり、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの「モバイル音声卸」については代替性がないとされた。よって、NTT東日本・西日本には「その他の検証」「時系列検証」の対象として、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクには「重点的な検証」「時系列検証」の対象として、総務省は通知を行った。

検証方法について
  • 第一の検証ステップである代替性の有無の検証において、代替性が不十分/ないと評価された卸役務に関して、下記の第二の検証がなされる
  • 重点的な検証:「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えた額」が「卸料金」を下回らないものであるかの検証
  • 時系列検証:「接続料相当額」「卸料金の額」「小売料金の額」について、直近3年間の額を比較、コストの変動が適切に卸料金に反映されているか、また反映されてない場合はどのような理由があるのかについての検証
  • その他の検証:「接続料相当額」を算定し、「卸料金」の差分において回収しようとする費用項目について、指定設備卸役務を提供する電気通信事業者における差分の妥当性を検証

5Gのネットワーク機能開放

 「真の5G」とも呼ばれる5G SA方式は、現在、4Gの設備と組み合わせて実現している5Gサービスと比べ、5Gの設備だけで構成される。ゆくゆくは5G SAネットワークが広がっていくと見られる中、第五次報告書では、”5G SA時代”におけるネットワーク提供に関して、「5Gによる新たなサービスをMVNOが提供可能とするための機能開放の在り方」「機能開放を担保するための事業者間協議の在り方」「二種指定事業とMVNO間の公正な競争環境を確保するためのルールの在り方」についての検討結果がまとめられた。

 このうち事業者間協議に関しては、MNO3社とMVNO委員会の間で、「ライトVMNO、フルVMNOなど5Gで想定される機能開放の形態と各形態のメリット・デメリット、実現可能性、具体的な課題」や「それらを実現するための課題および実現までの検討スケジュール」などについて、事業者間協議を実施し、総務省に報告、「接続料の算定等に関する研究会」に報告される形となった。

 また、現時点で実現に向けたスケジュールが見通せている機能開放形態である、「L3接続相当」と「ライトVMNO(限定的パターン)」については、いずれも卸役務による提供が想定されているため、卸役務に関する事前の情報開示などのルール化を検討している。

 そして、現時点でスケジュールが見通せない機能開放形態である、「ライトVMNO(スライス卸/API解放のうち、広範なAPI解放を行うパターン)」「L2接続相当」「フルVMNO」についても、引き続き検討を継続していく必要があるとした。

携帯電話料金と接続料などの関係

 2020年10月以降、MNO3社が相次いで発表した新料金プラン導入を踏まえて、「MNOの設定する利用者料金が、回線費用と営業費を上回っているかによって、MVNOが同等の条件により同等のサービスを提供できるか」、検証が進められた。その結果、MNO3社の料金は原価割れと言い切れないものの、MVNOがMNO3社の「新料金プラン」に対抗するサービスを実現するには、データ接続料などの水準が適切かどうかという点で疑いが残った。そこで、2021年度以降の接続料について、総務省では携帯大手のMNO3社に要請した結果、2019年度に比べて接続料が安くなった。

 総務省は今後、「新料金プラン」に限らない市場画定などモバイル市場の性質を踏まえたスタックテストの実施手法について、指針策定の可能性を含めて検討をしたうえで、具体的な進め方について継続的に検討を進めていくとしている。