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ドコモの5G、「パケ止まり」対策の成果や5G SAの方針とは
2021年12月14日 00:00
5G SAがスタート
ドコモでは、12月13日から5G SA(Stand Alone)方式のサービス提供を開始した。従来から提供されていたNSA(Non Stand Alone)方式と異なり、5G用の機器だけで構築された設備によるもので、NSAに比べて高速・大容量・低遅延という5Gの特長をより効果的に発揮できる仕組み。
サービス開始当初はSub6帯で下り最大1.7Gbps、上り最大143Mbpsの速度で利用できるという。
このほか、時期は未定ながらもネットワークを仮想的に分割し、それぞれに高速性や低遅延性などの特性を割り振って利用するネットワークスライシングの導入も予定されている。E2Eでのスライシングの実現に向けて、無線区間や伝送区間でもスライシングを今後行っていくため、提供にはまだ時間がかかるという。
現時点では法人向けにのみサービスと「Wi-Fi STATION SH-52B」ベースの端末が提供されているが、2022年夏を目処に一般向けにも開放し、合わせて対応のスマートフォンも提供される。現在販売されている5Gスマートフォンでも対応するかどうかは来夏にあらためて発表されるという。
その際のネットワーク設計については、現在検討中という。NTTドコモ ネットワーク部 技術企画担当部長の松岡久司氏は「速度面でもしっかり訴求が必要。どういうエリア設計なら満足してもらえるかを含めて検討している」とした。
パケ止まりへの改善も
ドコモ 5Gエリアも順調に拡大している一方、同社では通信品質の改善に向けた取り組みも合わせて実施してきた。
5Gサービス開始当初にたびたび声が上がっていた、5Gエリアの端でデータ通信ができなくなる、いわゆる「パケ止まり」について、「5G通信中に4Gにも電波を流しやすくする」「通信開始時に5G電波品質が悪いと4Gを使用する」「端末に割り当てる電波の周波数幅を最適化し、上りの電波を届きやすくする」という3つの改善を実施。
同社によると、こうした改善策により5G接続成功率はおよそ10%、5Gデータ流量はおよそ30%の改善が確認されたという。
その上で、今後もAIを活用したビッグデータ分析やユーザーからの申告、調査活動などから得た情報をもとに、品質改善を図っていくとしている。今年度中にも、上り通信において制御信号のみを送っていた部分にユーザーデータも一緒に送ることで、高速化を図るといった、さらなる5Gの品質向上に向けたチューニングの予定があると、松岡氏は明かした。
加えて、4G周波数の5Gの転用については、現在準備中という。ただし、MVNO含めてLTEのユーザーが多いため、そうした部分への影響を見定めながら導入時期を検討中とした。
法人ビジネスをサポート
NTTドコモ 5G/IoTビジネス部 ビジネス企画担当部長の岩本健嗣氏は5G SAについて「4Gの品質を意識せず、柔軟に運用して提供できる」とその強みを語る。
同社のオープンパートナープログラムを通じて、JR東日本や日産自動車、TBSなど41の企業と自治体が先行して5G SAを活用したサービスの開発をすすめる。
東京女子医科大学では、5G SAとdocomo Open Innovation Cloud(dOIC)を活用して、スマート治療室(SCOT)から戦略デスク・医局へ4K映像手術を伝送し、手術室に対して遠隔地の熟練医が意思決定支援する環境構築を目指す。
このほか、日立製作所では現場の3Dモデルをリアルタイムに構築、遠隔地から自由視点でモニタリングを可能にする仕組みが検討されている。加えて、TBSテレビでは、中継現場と副調整室をつなぎ、低遅延かつ高品質なワイヤレス中継が、「新世紀エヴァンゲリオン」などで知られるアニメ制作会社のカラーでは、オフィスと遜色ない環境を実現できるリモートコンピューティングでアニメ制作のリモートワーク化を目指すという。
ドコモでは、これまでおよそ400もの5Gを活用したソリューション開発などを実施してきた。今後も、全国の地域拠点における5Gのコンサルタントや技術力で法人ユーザーの取り組みをサポートしていくとしている。