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ドコモが東京オリンピックで提供する「新しい競技体験」デモを見てきた
2021年7月2日 00:00
NTTドコモは、開催が迫っている「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の競技会場で、5G通信を活用した「新たなスポーツ観戦体験」を提供する。これは「TOKYO 2020 5G PROJECT」の一環として実施され、日本電信電話(NTT)およびインテルも協力する。
対象の競技は、ゴルフ・水泳・セーリング。5Gの特性である「高速大容量」「低遅延」の効果を強調できる競技として、この3つの競技が選ばれている。
今回は、メディア向けのデモンストレーションが開催された。本記事では、その様子をお届けする。
ゴルフ
まずは「空間の壁を超える」というテーマが掲げられた、ゴルフの観戦体験からご紹介したい。
観戦者は、競技会場で5G対応端末(スマートフォン・タブレット)を使い、離れた場所で行われている複数のホールを、並行してリアルタイムで見られるようになる。また、気になったホールをピックアップして見ることも可能だ。
さらに、各選手のスコア詳細や、選手の組み合わせ(ペアリング)もチェックできる。そのほか、速報ニュースも画面上に表示され、大切な情報を逃さず観戦を楽しめる仕組み。
ゴルフは競技の特性として、複数の選手が異なる場所でプレーするが、現地(競技場)では1カ所しかチェックできない。今回の新たな観戦体験では、「空間の壁を超えて」複数のホールを同時に追い、自分で選択して観戦できることがポイントだ。
端末の画面上には複数ホールの映像が映し出されているが、高精細な複数の映像をなめらかに映し出す上で、高速大容量の5G通信が重要な役割を果たしている。
水泳
「時間の壁を超える」がテーマとなっている水泳の観戦体験は、一部関係者を対象とした実験運用として提供される。
観戦者がARグラスをかけた状態でプールを見ると、観戦者の位置が認識され、実際のプールの上にARの表示物(データ)が映し出される。
映し出されるデータは、リアルタイムのレース順位や世界記録ライン、選手の情報など多岐にわたる。
ただし、ご存じの通り、水泳は100分の1秒を争うシビアな世界。選手の泳ぎとズレがないように情報を映すためには、通信の低遅延性が欠かせないポイントとなる。その点で、5Gは「時間の壁を超える」というテーマの実現に大きく寄与している。
これまでの水泳の観戦における課題として、「競技データを入手しづらい」というものがあった。今回の観戦体験は、現地での臨場感や一体感はそのままに、5GとARの組み合わせによって情報を補完するものとなっている。
セーリング
セーリングの観戦体験のテーマは「距離の壁を超える」。
通常、セーリングのレース海面は広域に分散しており、一番近いレース海面でも、双眼鏡を使って観戦する必要があった。今回の観戦体験では、その課題を5Gと通信技術「Kirari!」を用いて解決する。
その内容は、実に壮大なものだ。海上に全長50mのディスプレイを浮かべ、4台の4Kカメラを搭載したボートやドローンを配置する。その上で、複数の4K映像を合成してワイドな12K映像をつくり、ディスプレイに伝送する流れとなっている。
これにより、「距離の壁を超えて」肉眼でセーリングを観戦できるようになり、まるですぐそばで競技を見ているような臨場感を得られる。
今回の技術的なポイントとなったのは、海上で5Gの無線を使うこと。たとえば4Kカメラを搭載したボートが揺れると、短い周波数の5Gの電波も揺らいでしまい、伝送が安定せず苦労したという。
デモンストレーション会場に設置されていたディスプレイは、横幅が約8m。それでも大きなディスプレイであると感じたが、実際の競技会場に設置されるディスプレイのサイズは6倍以上。50mのド迫力ディスプレイを現地で見るのが楽しみになった。