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20年度のドコモは増収増益、今期末にも5G契約者数1000万を目指す

 NTTドコモは、2021年3月期第4四半期決算を発表した。営業収益は4兆7252億円で前年比739億円増。営業利益は9132億円で586億円の増と増収増益の結果になった。

左からドコモ 小林啓太氏、井伊基之氏、藤原道朗氏

 発表の場には、NTTドコモ 代表取締役社長兼CEOの井伊基之氏が登壇。同社の今季決算の概要と2021年の主な取り組みについて語った。

増収増益の20年度

 通信事業における営業収益は、3兆6843億円で前年比27億円減。営業利益としては7211億円で146億円増だった。また、スマートライフ領域については営業収益が1兆815億円で839億円増、営業利益は1921億円で440億円増の増収増益だった。

 モバイル通信サービス収入はギガホ・ギガライトや新プランの影響により、167億円のマイナス。一方で光通信サービスは503億円の増。その他の営業収入の728億円増、販売関連収入の325億円減と合わせて営業収益は全体で739億円のプラスだった。

 また、販売関連費用はマイナス698億円。光通信サービス関連費用が390億円増、そのほかの営業費用が462億円増で営業費用は全体で153億円増。これにより営業利益が586億円増という内訳になった。

 これまでマイナスだったMNPもプラスに転じており、顧客基盤の拡大により端末販売についても増加が見込める。

 2021年度の業績予想としては4兆7900億円と20年度比648億円増、営業利益では9200億円と20年度比68億円増を目指す。

 新プランなどの影響でARPUが下がるのでは、という指摘に対して井伊氏は「ギガホプレミアやahamo、MVNO事業者向けの音声卸料金やデータ接続料の値下げで収益が下がる。まずはコストコントロール。ネットワークと販売チャネルのコスト削減や金融決済など好調事業を伸ばしながら、トータルで増収増益を目指していく」と説明した。

 また、今期の通期モバイルARPU実績は4280円。2021年度の通期計画は4250円と、30円の減の計画。これについては、ギガプランのプレミアやahamoにより、これまで3Gケータイを使用していたユーザーがスマホに乗り換えるなどARPU向上につながる動きがあり、さらに「月サポ」など割引を廃止した代わりに、低廉な料金プランに移行してもらうことで30円の微減に留められるとした。

新たな価値をユーザーへ届ける

 井伊氏は、今期の業績を語った後に2021年のドコモの挑戦を語った。「イノベーションをお越し、社会に大きな変化をもたらす」としてユーザーの期待を上回る新たな価値を提供していくという。

 事業運営のデジタル化やデータ活用の推進・実行でカスタマーエクスペリエンスの向上や事業構造改革の実現、さらにサステナブルな社会の創造に貢献していくとコメント。

 具体的な2021年度の取り組みとして、通信事業においては5Gエリアの早期拡大とネットワークコストの効率化の両立、販売チャネルのデジタルシフトとコールセンターやドコモショップのDXを推進。

 スマートライフ事業でも金融・決済領域の拡大やB2B2Xエコシステムの確立を目指すとともに映像事業を中心とした新たなライフスタイルの創出や新規事業領域の拡大を目指す。

21年度末に5G契約者数1000万へ

 ニーズに合わせた料金・サービスにより顧客基盤の拡大を目指す。5G契約数は端末やプランの拡充により2021年度末で1000万契約を目標とした。

今春にスタートしたahamoは4月末時点で、契約者数が100万を突破。うち30代以下の割合は50%超という。既存契約者の乗り換えが多いものの、他社からの流入もあるとしておりまた、楽天モバイルからの出戻りがあることに触れて「これまで中容量帯がなかったことへの効果」とした。

 同社では、小容量で低廉な価格を求めるユーザーへのアプローチとして「エコノミー」な料金プランの投入も予告している。これについて井伊氏は「現在、複数のMVNO事業者とどのような形にするか調整している」と明かした。

 当初は3月投入見込みだったが「思ったよりも調整に時間がかかっている」(井伊氏)という。さらに「dポイントと連携する仕組みが検討されており、そうした部分の条件を詰めなければ」とした。

 具体的なサービスのイメージとしては、MVNO事業者が料金を決めて提供、ドコモはチャネルとして、もしくはdポイント会員としてサポートしていくという形が語られた。

 エコノミーの料金については、2020年のahamo発表時に「ドコモでは提供せずに、MVNO事業者と連携しながら展開する」と説明されていた。

5G SAはなるべく早く

 5Gエリアの拡大についても、引き続き取り組んでいく。速さ・エリアの広さで他社を上回る5Gエリアの展開を目指し、今年度中にも純粋な5G設備のみで展開する「Stand Alone」(スタンドアローン)の形でのサービス展開に向けて取り組んでいく。5G SAを開始する具体的な時期について明言されなかったものの、井伊氏は「なるべく早くやりたい。それが最大の『ヒント』」と語った。

 一方、4Gへの投資は効率化し、総額は削減する。また、3Gの巻取りを加速させ、トータルでのネットワークコストを抑制していくという。

 販売チャネルについてもデジタル化により効率化を進め、新しい価値提供を目指す。店頭でのオンライン接客やAIの活用などが例示されつつ、今春からスタートしたahamoの有償店頭サポートについて井伊氏は「ユーザーのデジタル化を助けるもの」と位置づける。

 これについては非常にニーズがあったといい、サービスを提供するドコモだけがデジタル化して、適応できないユーザーには「できない人は契約しなくていい」という姿勢ではだめと語った。

 こうしたところからユーザーが経験を積み、今後のデジタル化の入り口になるとした。

 このほか、デジタルマーケティングの高度化に向けて、機械学習のエンジニアなどを1000人以上拡充していく。データを活用してユーザーを理解し、ドコモとパートナーを結びつけ、個々のニーズに合わせたサービスを提供していくという。

 また、金融事業においてはdカード・d払いの取扱高の拡大を図るとともに、決済を起点とした顧客接点の強化や領域拡大を目指す。こうした流れの一環として、新たな金融サービスの創出を目指すべく、ドコモでは三菱UFJ銀行と業務提携を締結した。

 このほか、新たなライフスタイルの創出として、「dTV」のコンテンツ拡充やアリーナ運画への参画、XRを活用した新たな映像体験の創出などが語られた。また、オンライン診療を起点としたメディカルサービスとして「dヘルスケア」とともにメドレーとともに協業で新たなサービスを立ち上げる。

法人向けソリューションも拡大

 5Gエリアが拡大していく中で、法人向けの5Gソリューションも同様に充実を図っていく。コマツと発足したスマートコンストラクションのEARTHBRAINが2021年7月から事業を開始する予定。

 また、5月13日から「ビジネスdアカウント」の提供を開始する。社員それぞれがIDを取得することで、ビジネスチャットや経費精算、健康管理などさまざまなサービスにアクセスできるようになる。

質疑応答

――増収増益を見込んでいるが、ARPUは下がるのでは。値下げはどのようにカバーするのか

井伊氏
 ギガホプレミアやahamo、MVNO事業者向けの音声卸料金やデータ接続料の値下げで収益が下がる。まずはコストコントロール。ネットワークと販売チャネルのコスト削減や金融決済など好調事業を伸ばしながら、トータルで増収増益を目指していく。

 これまでマイナスだったMNPもプラスに転じており、顧客基盤の拡大により端末販売についても増加が見込める。

――値下げによって何を得られたのか?

井伊氏
 (値下げによる経営への)21年度へのインパクトは見込まれる。販売コストやネットワークのコスト減で今期はマイナス111億円に影響を留められる見込み。いままでそのセグメントがなかったゆえに、他社流出が止められる、さらに流出したユーザーが戻ってきてくれることが値下げのプラス効果。

 4月のMNPはプラスだった。そういう意味では(値下げが)効いている。他社との競争なので安心はできないが、顧客基盤の拡大により端末販売も増加し、コンテンツも販売チャンスが増える。

 今まではずっとMNPマイナスだったところをやっともとに戻せた。しかし、現状ではまだまだ安心してはいけない状況と捉えている。

――三菱UFJ銀行はKDDIとの関係が深い。影響はないのか

井伊氏
 今回は、いわゆるノンエクスクルーシブの提携。他社(KDDI)とのコラボレーションは承知の上で「ドコモと新しい価値をつくりましょう」ということ。他社との関係により影響はない。

――ドコモはみずほ銀行との関係があったが、どうなったのか

井伊氏
 ノンエクスクルーシブでいろいろな銀行とコラボしていく。あまりバッティングするような領域には行かない。上手にそれぞれの銀行と組んで価値が高まるようにしていく。

――販売チャネルのデジタル化とは、今後のショップとの関係はどうなるのか

井伊氏
 デジタル化は時代の流れ。ショップ側もこのまま対面販売が続くとは考えておらず、どう業務をデジタル化していくか。DXをすすめてユーザーの対応時間を少なくするなどの検討が必要という認識でいる。

 すべてが人の手で行われていたときと同じ販売手数料は必要なくなっていく。一方で、販売チャネルの使命として、世の中のICT化をサポートするということを有償でやっていくことになる。アプリのインストールのサポートなどはすでに有償サポートとして提供している。

 今後は、街の商店や小規模な企業などのDXもサポートし、ショップとしてのミッションを拡大して、収益・利益を再構築してもらう。ただ、現状の店舗数が必要かは別の議論としてある。デジタル化が進めばある程度集約して効率化する必要も出てくる。今のショップ数ありきで考えているわけではないが、ahamoをきっかけに仕事のDXを始めていきたい。