ニュース

ソフトバンク、楽天モバイルと元社員を提訴

 ソフトバンクは、楽天モバイルと楽天モバイルの元社員に対する訴訟を起こしたと発表した。ひとまず10億円の支払いなどを求めている。

基地局設備、ネットワーク情報などの情報持ち出し

 元社員はソフトバンク退職後、楽天モバイルに入社。ソフトバンク退職時に営業秘密情報を不正に持ち出し、2021年1月に不正競争防止法違反で逮捕された。

 持ち出された情報は、4Gや5G向けの基地局設備、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信ネットワークに関する技術だという。

 ユーザーの個人情報や、通信の秘密に関わる情報、あるいは法人の取引先情報は含まれていない。

ソフトバンク側、これまでの流れで「楽天社内での展開を確認」

 ソフトバンクは2020年11月、東京地方裁判所に対して、楽天モバイルに対する証拠保全の申立てをしたほか、同年12月、持ち出された秘密情報の利用停止を求める仮処分命令を求めて申し立てた。

 2021年に入ってからは、元社員の資産に対する仮差押命令の申立てなどを行った。また、2021年1月に元社員が逮捕された段階で、民事訴訟を起こす方針は明らかにされていた。

 これまでの手続きを通じて、証拠保全を求めていた電子ファイルが、楽天モバイルが業務で利用するサーバーに保存され、なおかつ元社員のプライベートなメールアドレスから楽天モバイルの業務用メールアドレスに、複数のメールが送られており、「ほかの楽天モバイル社員に社内メールで開示されていた事実を確認している」とソフトバンクでは説明。ソフトバンクのプレスリリースによれば、楽天モバイルは裁判所とソフトバンクへそれらのファイルを提出した後、全て廃棄した、という。

 そして「楽天モバイルが不当な利益を得て、ソフトバンクの営業上の利益を侵害したこと」「不正な行為で建設された基地局などが存在すること」を明らかにすべく今回の訴訟を提起するに至った。

ソフトバンクのプレスリリース

まずは4局の停止求める

 ソフトバンク広報によれば、まず4つの基地局の停止を求める。今後の状況によっては、対象基地局が拡大するという。

 また損害賠償額については、不正競争防止法5条2項(損害賠償額の算定規定)に基づいて算定。基地局建設前倒しで得られる利益、新規契約獲得による利益、解約率低下での利益、そしてローミングコストの削減といった点だけでも1000億円を下らないと説明。ただ、訴訟額が巨額になると訴訟手続き上のコストも上がるとのことで、まずは10億円での賠償請求にしたという。

楽天モバイルは「確認中」

 楽天モバイルでは、「状況を社内で確認中」とコメント。準備が整い次第、訴訟に対する見解が示されると見られる。

【追記 2021/05/06 16:13】
 楽天モバイルは、6日15時半ごろ、コメントを発表した。それによれば、「社内調査を実施してきておりますが、ソフトバンクの営業秘密を当社業務に利用していたという事実は確認されておりません」としており、今後は訴状の内容を精査して、裁判で楽天モバイルの正当性を主張する方針。

楽天モバイルのコメント

 本日、ソフトバンク株式会社より楽天モバイル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:山田 善久)に対して、訴訟を提起したことが公表されました。

 本件について当社では社内調査を実施してきておりますが、ソフトバンク株式会社の営業秘密を当社業務に利用していたという事実は確認されておりません。

 当社では訴状の送達を受け次第、内容を精査の上、裁判において当社の正当性を主張してまいります。