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ソフトバンク宮内氏、元社員の機密情報不正持出事件に「許されないこと」
ソフトバンク第3四半期決算会見 質疑まとめ
2021年2月8日 07:00
ソフトバンクは4日、2021年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は3兆8070億円、営業利益は8416億円、純利益は4338億円となった。
会見では、増収増益の要因として「法人のテレワーク関連ビジネスの予想を上回る利益貢献」や「巣ごもり需要でのヤフーのeコマースの成長」をあげた。また、ワイモバイルブランドでiPhone 12シリーズの発売の発表や宮川新社長の挨拶などがあった。
本記事では、会見後半の質疑応答の内容をレポートする。
質疑応答には、同社代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮内 謙氏、代表取締役副社長執行役員兼CTO 宮川 潤一氏、取締役専務執行役員兼CFO 藤原 和彦氏が登壇した。
――携帯電話料金の値下げによる来季業績への影響について、非通信部門でカバーしていくようだが、具体的には?
宮内氏
シミュレーションしているが、実際に当たるかはわからないので具体的な数字は控えるが、コンシューマーの通信部分の営業利益は落ちると考えている。
携帯電話料金値下げに関しては、競争の激化でMVNO事業者は大変だと思うが、ユーザー数はかなり獲得できると考えている。会社としては、(携帯電話料金の値下げで業績が悪くなったと)言い訳できない。(コンシューマー通信部門が)下がるだろうと見越して、コストダウンや法人部門、ヤフーやZホールディングスなどで調整していく。来季に大きな影響は与えないと見ている。
来季は、法人部分での積み上げやZホールディングスの増益、PayPayの赤字も半分以下になると考えている。また。ペイメントや流通事業などのほか、ソフトバンクでこれまで育てた事業という「宝物」が溜まってきている。これらの積み上げと、コストダウンでなんとか減益にならないようになると思う。
来季の予想は、来季の決算発表時に発表するので、それまで待ってほしい。
――宮川新社長へ、現状、ソフトバンクの取り組むべき課題を3つ上げるとすると?
宮川氏
まずは、携帯電話料金の値下げ。当然、業績がダウンすると思うが、(ソフトバンクは)収益を常に増益させることにこだわっている。(宮川社長体制でも)この志は引き継ごうと思う。そのほかの法人事業など、なんでもありで増益を目指していきたい。
次に、5Gへの転換期であること。“人と人”の通信から、“人とモノ”や“モノとモノ”の通信で、産業が再定義され大きく変わる。DX(デジタルトランスフォーメーション)以上の産業改革に、ソフトバンク自身が入っていけるか、来年の大きなテーマになるが、これまでの通信会社と違った取り組みをしていきたい。
3つ目に、AIに対する取り組み。(主に法人部隊の)人材育成にようやくに目処がついてきた。また、LINEとの合流でさまざまな技術者が入ってきており、AIの分野での業界のリーダとなっていきたいと思う。「総合デジタルプラットフォーム」として、特にAIの分野で展開していきたい。
――このタイミングでの社長交代について、理由はあるか?
宮内氏
企業は、永遠のバトンタッチリレーだと思っている。
指名報酬委員会では、2年くらい前から監査役や社外重役から、きちんと次の世代を作っていくべきという意見があった。ZホールディングスやLINEの合流、株式公開などをやる中で、ソフトバンク全体が“通信キャリア”から“プラットフォーマー”事業に本格的に転換していく中で、今を逃しては行けないと考えた。
タイミングとしては、いいタイミングだと思っている。晴れやかな気持ちで今後は新規事業に集中していく。
――孫 正義氏の4月以降の立ち位置について
宮内氏
(創業者取締役となる)孫氏の役割については、昔から新しい事業に着手すると「あとはやっといて」というパターンが多かった。しかし、役員会では激論を交わしたこともあり、おかしいと思った考え方には、ずばっといってくれるのは、役員としては大きなプラスだと思っている。
(孫氏の)いいなりでやっているわけではない。孫氏の知見や細かいところまで、実際のオペレーションを月1回の役員会でユーザー目線の指摘をもらっている。
――元ソフトバンク社員の楽天社員が営業秘密を不正に持ち出した問題に対する受け止めは?
宮内氏
あってはならないこと。
営業秘密が不正な手段で持ち出されたというのは、重大な事案であると認識している。
(持ち出された営業秘密が)楽天モバイルの事業に利用されないよう、民事訴訟を定義することになっている。
ネットワークの基地局やバックホーンの基地局関連の情報は、20年近く前からずっと事業に携わってきたノウハウ。収集するのも大変な仕事であり、許されないことだろうと思っている。
副社長からはなにかありますか?
宮川氏
(捜査中の段階なので)あまり言わないほうが……。
――証券会社からPayPayの株式上場の話があったようだが、話は進んでいるのか?
宮内氏
提案をもらっただけ。
ただ、PayPayは、もうひとつのヤフーを作れるくらいの規模になっている。
(PayPayは現在赤字だが、)上場はいつでもできると思っている。黒字じゃないと公開できないのは日本くらい。
PayPayは、顧客数が多く大変なパワーを持っている。顧客を獲得するには莫大なコストがかかるが、顧客数が大きいほど黒字転換はやりやすくなる。
アリババも、実際に利益を出してきたのは4~5年前で、大事なことは「恐れずに顧客数を伸ばすことができるかどうか」だと思う。
――新社屋の「東京ポートシティ竹芝」について、巨大なオフィスだが、今後リモートワークの普及などで賃借フロアを減らすなど考えはあるか?
宮内氏
賃料は意外と安いというものもあるが、フロア面積としては従来の半分くらいにすでに縮小している。
また、出社比率はコロナ禍で全体の8~9割がリモート化できており、平時でも5割はリモートワークと見積もって、関連会社やグループ会社などを同ビルに集めている。
――PayPayについて今後手数料の有料化などで利益構造を出していくのか?
宮内氏
PayPayは約2年かけて3500万ユーザー、加盟店が280万くらいとなっており、これらは“鶏の卵”として営業経費をかけて育てていきたい。
一般の小さな店は手数料0円で、それ以外のチェーン店は、手数料をもらっている。クレジットカードでは概ね3~4%くらい手数料が発生していると思うが、その半分の1.5%くらいで両立をとればブレークイーブンになると考えている。
また、PayPayボーナスを使った「ポイント運用」を実施している。フィンテックの金融サービスをゆっくり追加していくことで、それなりの収益を確保できる。
どのあたりで舵をきるかに関しては、圧倒的な強さにしていきたい想いから、どんどん拡大していきたいと思う。決済回数も月1.7億回と大変なボリュームになっている。一つの成功モデルとしてもっと大きく育てて利益カンパニーにしたい。
――楽天モバイルの新料金プランについて、来年以降の業界やソフトバンクに与える影響は?
宮内氏
一生懸命頑張られているという印象。
大きなインパクトはあるが、MVNOの波が訪れたときも、ワイモバイルの立ち上げで契約数が急減することはなかった。
ワイモバイルの5G対応で、相当対応できると思っている。
また、ワイモバイルでは、(実店舗など)販売チャネルという大きなインフラを持っている。価格だけの勝負ではなく、ネットワーク品質、特に4Gであれば、ゴルフ場など日本全国さまざまな場所で使える。(楽天モバイルは)人口カバー率が96%といっているが、96から99%にするためには、兆単位のお金がかかる。
以前は、いろいろな人から「ゴルフ場で繋がらない」などと言われていた。それくらい日本ユーザーはネットワーク品質を求める声が大きい。
また、今後は5G時代。5Gエリアをどこまで広げていくかという部分で利がありまた、5G対応端末など総合力もある。我々も対抗していけると考えている。