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総務省、公正競争確保の検討会議第3回を開催、地域密着のCATVも訴え

 総務省は14日、公正競争確保の在り方に関する検討会議の第3回を開催した。

 NTT(持株)によるNTTドコモの完全子会社化に際して、公正競争上の観点から懸念される問題やその対策などの要望をKDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、日本ケーブルテレビ連盟の4者からそれぞれ述べられた。

 NTTによるドコモ完全子会社化は、電気通信市場の公正な環境を目的とした1992年のドコモ分離やいわゆるNTT法の趣旨に反しているとして、通信事業者各社などから批判が上がっていた。

公正な競争環境の確保を要望

 KDDIからはNTTがドコモを子会社化するにあたり、NTTの在り方について、NTTの分離・分割に係る構成競争要件の法的担保、ファイヤウォール規制の徹底について、競争ルール適用外取引によるグループ優遇の課題に対する措置や禁止行為規制など6点の検証すべき問題点・懸念点が示された。

 旧NTTから分離・分割されたNTT東西、ドコモ、NTTコム、NTTコムウェア、NTTデータの合併などは電気通信事業法第12条の2の対象とし、公正競争が阻害される恐れがある場合、総務大臣がその登録を拒否するべきではないかとした。加えて、グループ内の人事交流により接続情報が共有される可能性があることから、現在役員を対象としている在籍出向の禁止を一般社員への適用、ドコモの特定関係事業者への指定でファイヤウォール規制強化を訴えた。

 また、禁止行為事業者であるNTT東西とドコモの固定・モバイルネットワークを統合した場合、公正競争の確保に支障があるとして禁止を訴え、NTTが推し進めるIOWNについては、NTT東西、ドコモのネットワークを活用する形であれば卸提供ではなくさまざまな階層での接続、API連携による機能開放や相互運用性を担保すべきとした。

 加えて、接続ルールの運用、卸取引グループ優遇などに係る課題に対して、相応の措置を講じるとともに公正競争ルールが損なわれていないか毎年の検証を行い、3年後を目処にNTTの在り方について議論すべきと主張した。

 ソフトバンクからも、これまで策定されてきた公正競争に係るルールはNTTグループが一方的に反故にしていいものではないと非難。これによりソフトバンク含めた競争事業者が不利益を被るのであれば、ユーザーにも降りかかることになるとコメント。

 ただし、国内の公正競争環境が確保されるという前提であればNTTグループの強化を否定するものではないとも説明し、それがなければ利用者の利便性の向上も国際競争力強化にも資するものではないとした。

 ソフトバンクは2010年当時、「光の道」議論による結論は固定ブロードバンド整備や固定通信市場の競争促進では期待した成果が得られていないのではという見解を示した。そうした中で、かつてのグループ一体化への回帰は深刻な事態であると指摘する。

ボトルネック設備への危惧

 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは、ともに局舎などのボトルネック設備の大多数を独占的に有していることからNTTグループ企業の結びつきが強固になることを危惧。KDDIでは、第三者組織による監視が必要ではないかと指摘した。

 NTTの局舎等に自社設備を設置できるコロケーションの仕組みにおいてルールの不十分さを指摘。局舎スペースのビジネス転用ルールがなく、NTTグループが優先される恐れや義務コロケーションではサーバー類が設置できない点などだ。サーバー類は、5Gの普及とともに需要増が見込まれており、一般コロケーションにおいては設置が可能なものの、競争事業者と異なりドコモは価格などの状況を気にせずに設備展開が実施できることになる。

 また、楽天モバイルは、ドコモ完全子会社化によるファイヤウォール規制の形骸化などとともにNTTグループ全体の資金力の増強を危惧。ドコモの各種財務情報の継続的な提供や不当性が認められる場合のドコモへの是正措置などが求められた。

 ただし、こうしたボトルネック設備といわれるものは、仮想化が進展すると見られる5G時代では、次第に現在のような専用ハードウェアで構成されるケースが減少し、汎用ハードウェアで構成されるのが一般的という見通しから、構成員の神奈川大学 経営学部の関口正博教授からは、各事業者が指摘するように実際に問題と成り得るかが疑問視される声が上がった。

地域への危惧も

 会合には日本ケーブルテレビ連盟も参加。携帯電話事業者とは異なり、地域密着でサービスを提供する事業者としてのドコモ子会社化への懸念を表した。

 元来は難視聴地域に向けたテレビ放送を提供していたケーブルテレビも、時代の流れとともに地域BWAやMVNOによる携帯電話サービスの展開を進めるなど、事業に占める通信サービスの割合が拡大している。

 前述のサービスに加えて、固定ブロードバンドや加入電話などNTTグループと競争関係にあり、地域における通信において、強大な市場支支配力を持つNTTへの対応には公正競争の確保が重要とした。

 要望としてはNTT東西とドコモの一体化禁止の明確化、地域における競争環境の監視強化、地域における公正競争確保のため禁止行為規則の見直しに加えてNTT東西のローカル5G免許においては取り扱いの再検証が必要と訴えた。

 事業規模に大きな差があるケーブルテレビ局とNTTグループでは、ケーブルテレビが排除される可能性もあり今後、電気通信市場検証会議などで地域ごとの法人サービスの検証やローカル5Gの競争環境の検証が必要とコメント。

 さらに、MVNOサービスにおいて、NTTコミュニケーションズを経由してNTTレゾナントに対して有利な取り扱いをすることは現行の規制上、禁止行為に該当しないためこれによりケーブルテレビの提供するMVNO事業にも影響が出る可能性があり、NTTレゾナントもドコモの禁止行為規則の対象に指定すべきと指摘した。

 また、NTT東西のローカル5G設備とドコモのパブリック5Gの設備が一体的な構築や設備の共用などが行われた場合、地域業者よりも優位にローカル5Gネットワークを構築できることなどが具体的な懸念として例示された。