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ドコモ、1000円値下げ「5Gギガホ プレミア」の狙いとは

 18日、NTTドコモは、新料金プラン「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」を2021年4月から提供すると発表した。既存の「5Gギガホ」「ギガホ」ユーザーは申し込みする必要はあるが、値下げとキャンペーンで提供されてきたサービスが恒常化するといった改定となる。

 先立って発表されていた「ahamo(アハモ)」、そして今後予定される「エントリー」(低容量向け)での取り組みを含め、データ通信量で3つのターゲットに分かれることになったドコモの料金プラン。

 18日午前、NTTドコモ副社長執行役員の田村穂積氏と常務執行役員 営業本部長の鳥塚滋人が報道関係者向けの説明会で、その狙いを語った。

3つのコンセプト

 ドコモでは、今冬、料金プランについて「ひとりひとりのライフスタイルにあわせ複数のコンセプトで展開」という方針を打ち出した。

 2021年3月に登場する「ahamo」は、月額2980円で20GB、そして手続きの全てをオンラインだけに限定している。誰でも利用できるが、ITリテラシーが高く、20代のデジタルネイティブ世代の利用を想定したプランだ(※関連記事)。これまでに30万件を超える申し込みがあったという。

 「ahamo」よりも安いプランについては、「エコノミー」に位置づけられる。その内容は、MVNOとの連携を検討中とされ、詳細はまだ案内されていない。そのため、現状では、段階制プランの「5Gギガライト」「ギガライト」が低容量ユーザーに向けたプランと言え、2021年3月には1GBまでの通信に制限できる「ギガプラン上限オプション」が導入される。

 さらに同社では、3Gユーザーが初めてスマートフォンを使う場合のプランとして「はじめてスマホプラン」を2021年4月に導入する方針だ(※関連記事)。これにより、フィーチャーフォンユーザーを他社へ流出させることなく、ドコモを引き続き利用してもらう構え。

 これらが今回発表されたプランを含めた現時点での、ドコモにおける低~中容量のデータ通信量のユーザーに向けた料金プランだ。

 そして大容量プランとなる「プレミア」として2021年4月に導入される新プランが、今回発表された「5Gギガホ プレミア」と、4G向けの「ギガホ プレミア」だ。この2つの価格差は100円しかない格好だ。

「プレミア」は“家族でおトク”に

 12月3日の「ahamo」発表時に、「プレミア(Premier)」はドコモショップなどのサポートが充実した小容量~大容量までをカバーするコンセプトで、“家族でお得”なプランを展開するという方針が明らかにされていた。

 今回発表された「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」は、これまでと同じく「ファミリー割引」「みんなドコモ割」などが適用される。これがまさにコンセプトに基づく料金設計という形だ。

 繰り返しになるが4Gの「ギガホ プレミア」とはわずか100円の差しかない。これも5Gを選んで欲しい、というドコモの狙いがある。今後、本格的に拡充が進む5Gへの移行を進めたいという考えだ。

キャンペーンを恒常化しただけ?

 質疑(本稿後半で詳述)では、「安さを実感できる人は限られるのでは?」という問いも出た。5Gのユーザーがまだ40万(上期決算時点)程度のためだ。

 しかし、これから5Gユーザーが増えるということ、そして4Gの「ギガホ プレミア」も値下げになることから、ある程度、安さを感じてもらえるようになるのでは、とドコモの鳥塚氏。

「期間限定の割引は辞めた」

 期間限定割引を加えると、他社のほうが安いのでは? という質問に鳥塚氏は「6カ月後、1年後に高くなるのはどうか。今回辞めることにした」とコメント。一時的には安さで負けるように見えたとしても、わかりやすい料金で他社と競争したいとした。

5Gで使い放題

 3月に発表された既存プラン「5Gギガホ」では、キャンペーンとして使い放題となっていたが、今回の新プランでは正式なサービスとして使い放題が採用された。

 田村副社長は、これまでの動向からネットワーク側で対応できると判断した上で、5Gでの使い放題を正式採用したと説明。なお、ドコモでは、大量通信時などで制限をかけることがあるとしているが、その基準は現時点で検討中としつつ、サービス開始時には提供条件書などで案内する方針だ。

3Gユーザーをドコモに

 同時に発表された「はじめてスマホプラン」もまたキャンペーンではなく、料金プランとして恒常的に使える形で提供されることになった。

 これは、500万以上存在する、フィーチャーフォンユーザーにドコモへ居続けてもらうこと、そして4Gや5Gへ切り替えてもらうことを目指したプランだ。

主な質疑

――「はじめてスマホプラン」について、フィーチャーフォンユーザーはどれくらいいるのか。キャンペーンではなく恒常化する狙いは?

田村副社長
 今回の料金プランの狙いは、大容量ユーザーの拡大と3G契約者のマイグレーション(移行)。

 我々としては、ネットワークを3世代、運用しているが、喫緊の課題は3Gユーザーをどう4G、5Gへ移行させるか。「はじめてスマホプラン」でハードルを下げ、最初の1年は980円とおトクな料金にした。

 できるだけ早めにマイグレーションを進めたい。

鳥塚営業本部長
 マイグレーションに加えて、営業競争上も、他社との間で、3Gユーザー、フィーチャーフォンユーザーをスマホに変えてもらうよう競争が激化している。大切なお客さまを守っていきたい。3Gの具体的な契約者数の好評は控えたい。iモード契約は現在500万件程度。iモードを契約していない方を含めれば、もう少し多い程度になる。

――今回のプラン、4Gと5Gで100円しか違いがない。その狙いは?

鳥塚営業本部長
 5Gはデータ無制限、4Gは60GBという差を考慮した設定だ。

――100円差だけであれば5Gを選ぼうという気になる。価格差を小さくすることで5Gへの移行を進めるのか。

鳥塚営業本部長
 そのとおり。これから5Gの本格化を迎える。5G側を選びやすくした。

――5Gでは3月以降、キャンペーンで使い放題だった。今回正式に使い放題となるが、ネットワークへの負荷はどう判断したのか。テザリングなどの制限事項はないのか。

田村副社長
 ネットワークにも対応できるという前提で無制限プランにすることになった。基地局、コア、サーバーといろいろあるが影響は少ないということで対応することになった。

 テザリングは、今回、無制限で対応できる。

――今後5Gユーザーが増加しても大丈夫、と判断したということか。

田村副社長
 はい、その前提で計画している。

――12月3日の段階で、既存サービスはよりシンプルな料金に見直すとしていた。今回、期間限定の割引は撤廃するとのことだが、家族の割引など、シンプルさへの懸念がある。家族向け割引や固定セット割を残した理由は?

田村副社長

 今回は、コンセプトが「少量~無制限、家族でおトク」となっており、ファミリー割引を入れた。家庭だと光回線もあり、セット割も入れた。

鳥塚営業本部長
 期間限定の割引は、半年、ギガホ割があったが、廃止して、シンプルに使えるようにした。家族で使う場合のニーズを踏まえて、この形にした。

――これが最大限の「シンプルさ」ということか。

鳥塚営業本部長
 「ahamo」がターゲットを絞り、ワンプライスにした。プレミアは家族という全体のコンセプトもあり、割引も提供することになったということになる。

――新プラン導入による減収の見通しは? 非通信分野を強化するとのことだが、強化策は?

田村副社長
 減収は一定額ある。ただ、今後、今後計画を作り直すため細かな点は控える。競争力ある料金プランだと思っており、他社からのポートイン(転入)強化、他社へのポートアウト(転出)抑止で効果があると見ている。

 それだけでは減収分は補いきれないと見ており、非通信領域を強化する。たとえばスマートライフ領域では、金融決済が大きな成長の余地がある。7800万会員基盤があり、マーケティングやソリューション拡大、あるいは映像配信などエンタメ系もコンテンツ拡充などを強化していく。

――人員面の強化策は?

田村副社長
 人員面は、いろいろと強化を続けている。今回のことだけでの強化はあまりないと思っている。

――「ahamo」が30万のエントリーということだが、ドコモユーザーが多いのか、他社ユーザーが多いのか。

田村副社長
 30万を超えているが、まだ初期段階で詳細は控えたい。ただ、傾向としては当初計画した通り、若年層が一定数いる。ahamo導入は成功だと評価している。

――他社のサブブランドでは一物二価という指摘もある。今回の料金とahamoの差はどう考えるべきか。

鳥塚営業本部長
 料金だけ見ればahamoが安いのではないか、というご指摘だと思うが、たとえばキャリアメール、留守番電話などがないという違いがある。

 一番の違いは、アフターサポートなどを含めて、全てユーザー自身がオンラインで進めるのが「ahamo」になる。プレミアはトータルでフルサポートする。そうした差で比較することになるかなと思う。一物二価ではなくサービス面で違いがあると理解してほしい。

――MNPの転出手数料の無料化もあわせて発表された。10月の中間決算発表時には、吉澤前社長が「店頭ではコストがかかる」としていた。今回無料化を発表できた背景は?

鳥塚営業本部長
 10月以降、有識者会合の議論、他社の動きなどの変化があり、総合的に考え、無料化を判断した。

――5G契約数は上期で40万弱とのことだったが、1000円割引といっても恩恵を受けられる人は少ないのではないか。ほかの改定もキャンペーンの恒常化であり、割引の実感を得られないようにも思える。ギガホではなく「ahamo」への移行が増えるのではないか。どう「ギガホ」へつなぎとめるのか。

鳥塚営業本部長
 「あまり値下げになっていない、対象者が少ない」というご指摘だと思うが、5Gは現在から、端末も揃い、年末から来年に向けて契約が増えていく。5Gならではの高速大容量をたくさんの人に体感いただきたいと考えている。

 1000円の値下げはインパクトがあり、減収のインパクトも来年、再来年に向けて大きなものがあるが、多くの人に使ってもらうということで(値下げを)判断した。

 4Gの「ギガホ」も期間限定だった割引を、値下げと恒常化することになり、かなりおトクになる方がいらっしゃると思う。

田村副社長
 各料金プランはそれぞれターゲットが分かれている。ahamoはオンライン限定で、今回のプランはフルサポートと両極端。周知徹底を進め、理解していただいた上で料金を選んでいただこうかと思っている。

――大容量プランの契約数は?

鳥塚営業本部長
 具体的な数は控えたいが、ギガホとギガライトの比率は、ギガホが3割弱。5Gになるとギガホが4割を超えている。より使いやすく改定することで、その比率は上がることを期待している。

――テザリング無制限とのことだが、ドコモ光はあれど、「自宅のネット環境もまかなえる」という利用も想定しているのか。

田村副社長
 これから在宅での仕事といった環境が増える。光回線を導入するお客さまも増えていく傾向にあると思っている。

鳥塚営業本部長
 光回線は順調に現状増えている、家族みんなで通信を確保する意味では光のメリットがあり、ニーズが減らない。一方で、一人暮らしで(宅内の通信全てを)テザリングというはあると思う。ただ家庭で見ると光回線も十分棲み分け、両方あると思う。

――「ahamo」はオンラインだけの扱いとのことだが、本当に対応できるのか?

鳥塚営業本部長
 いろいろ代理店さんを含めて検討しているところ。考え方としては、ドコモのお客さまが多くいると思われるため、必要な対応はする。ahamoとプレミアプラントの違いをきちんと説明していきたい。

 実際の申し込みやその後の対応は、オンラインで解決するものであり、店頭でのサポートが必要という方はプレミアや、従来のプランをお使いいただくと。そのあたりをきちんと説明して対応する、ということで整理したい。

 「ahamo」の申し込みの操作、故障対応は、サイトで進めてと案内する形で対応していきたい。

――「期間限定割引のタリフ(料金表)化」は画期的だが、家族向けの割引については、以前、ユーザーの8割ほどに適用されるという話もあった。割引をタリフ化しても収益面ではあまり影響がないのではないか。

鳥塚営業本部長
 確かに2回線以上で8割以上、3回線以上で7割。ただ、プレミアプランの「家族で使う」というコンセプトは重要だと考えており、割引額の多寡とは別に、「家族で加入していただき、割引を適用したい」と判断した。

――競合のソフトバンクは、期間限定割引が手厚い。家族割引では4回線以上の設定もある。今回のドコモのプランよりも、auやソフトバンクの割引後の価格のほうが安い。競争力はあるのか。

鳥塚営業本部長
 期間限定の最安値で比較されると、(競合のほうが)安く見えることがある。しかし6カ月後、1年後に高くなるのかどうかと考え、今回辞めることにした。正価で比較していきたい。ご理解が広まれば、タリフベースでは十分安く、値引きもある。それで競争したい。

田村副社長
 お客さまからは「シンプルでわかりやすいもの」という声もあった。今回は、わかりやすい料金体系を目指したという面もある。