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公共性や緊急性が求められる「ミッションクリティカル」分野への進出も、京セラが目指す法人ビジネスの形とは

 京セラは、同社の携帯通信機器事業が30周年を迎えたことから、「30th Anniversary 特別企画」として、同社が注力する「法人向け事業」について記者説明会を開催した。

 同社は通信事業に関し、注力するテーマとして「シニア向け」「法人向け」「高耐久端末」「キッズ向け」「5G・IoT関連」の5つを掲げており、各テーマについて全5回で記者説明会を開催。今回、第2回目として、法人向け事業に関する説明会がオンラインで実施された。

30年で社会構造やニーズが大きく変化

京セラ 通信事業戦略部 第2法人ビジネスユニット 大内 康史氏

 京セラは通信事業を開始して以来、通信技術の進化と市場のニーズに合わせた製品を提供してきた。法人においても、携帯通信機器が担う役割や活用シーンが大きく変化し、音声通話にとどまらない利用シーンが提案されるようになった。

 コロナ禍でテレワークやデリバリーサービスの利用増など、社会構造やニーズが一変し、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)も加速した。京セラの法人向け端末サイトでは、2020年第3四半期(7~9月)の問い合わせ件数が、第1四半期(1~3月)の約3.6倍に上った。

顧客のニーズに合わせたラインアップ展開と充実のアフターサポートを提供

 京セラの強みは、企画、開発、製造、サポート、修理までを国内体制で一貫して提供することにあるという。現場のニーズに合わせたラインアップの展開やサポート時のセキュリティ性の担保、端末廃棄時を含めたトータルサポートにより、「顧客の信頼、安心を提供できる」と大内氏。

 「標準的な製品が現場のニーズに必ずしもマッチするとは限らない」として、カメラを省き、工場内へのカメラ持ち込み禁止に対応した端末や、落下に強い丈夫な端末、さらに本体の塗装を省いた端末も提供してきた。2021年2月には、法人向けLTE対応タブレット「DIGNO Tab」も提供開始する。

 ユーザーのニーズに合わせた端末を提供するだけでなく、故障時のダウンタイム最小化や、セキュリティへの取り組みも重要な点として位置づける。導入後の問い合わせサポートや故障時は国内拠点で迅速に対応するほか、サポートセンターとなる京セラ北見工場では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証「ISO27001」を取得している。

導入店舗に応じたアプリのインストールや各店舗への個別配送も可能な「京セラモバイルサポート」

 京セラでは、端末を導入する法人向けの支援サービスとして、業務形態や用途に応じた端末のカスタマイズの提供やメンテナンス、導入後のアフターサポートを提供する「京セラモバイルサポート」も7月より開始している。

 京セラモバイルサポートの導入事例として、全国に複数ブランドで数千店舗を展開する大手飲食チェーン店向けに、POSシステムと連動したデジタルメニューの導入による業務効率改善と顧客満足度の工場を目的に、10万台以上のタブレット端末を導入した事例も紹介された。

 事例では、製造拠点で各店舗にあわせたメニューや端末管理システムの導入を行い、設定済みの端末を各店舗に個別配送した。修理サービスや端末の保証など、同サービスで提供される導入後のアフターサポートにも対応していく。

 同サービスでは今後、他社アプリケーションベンダーとの連携や、さまざまな業種に合わせたソリューションの提案・提供など、サービスの拡充を予定している。詳細は後日発表される。

公共性・緊急性の高い「ミッションクリティカル」分野への事業拡大も

 新たなビジネスの取り組みとして、より公共性が高く、緊急性が求められる「ミッションクリティカル」分野への事業拡大を行う。現在は、先行して米国のベライゾンやLTEベースの公共用無線網であるFirstNet向けに、対応端末(DURA FORCE PRO)の提供を行っている。

 日本国内においては、2021年4月に移動無線センターがサービスを開始する「MCAアドバンス」(高度MCA)に対応する無線機「KC-PS701」を提供する。

 MCAアドバンスは、自然災害などの緊急時や非常時に、公衆通信網の輻輳の影響を受けず、安定した通信を提供できるLTEベースの共同利用型の自営無線システム。従来の無線機よりも高機能なスマートフォン型の移動端末(無線機)を利用することで、利便性や実用性の向上が期待されている。

 「KC-PS701」は、MCAアドバンスで利用する900MHz帯(Band 8)の周波数帯に対応する無線機。2400万画素のアウトカメラや800万画素のインカメラを搭載し、IP67の防水防塵、MIL規格に準拠した耐衝撃性能も有する。

KC-PS701

京セラが目指す法人ビジネスの形とは

 京セラが目指す今後の法人ビジネスは、「JAPAN MADE」を核として、顧客に応じたカスタマイズや障害発生時の対応、アフターサポートを提供する「京セラコネクティングサービス」を提供していくことだという。

 ITの利活用によるヒト依存からの脱却と、安心・安全で豊かな生活の実現を目指す「Business to HUMAN」の実現を目指す。

 スマートフォンやセンシング機器といったコネクティング機器と、ウェアラブル端末やロボット・ドローンなどのエッジ機器を接続し、ニーズに応じたアプリケーションやクラウドサービス、ネットワーク設計を展開していく。

 「デバイスの導入だけでなく、導入後の運用にも向き合い、社会課題や企業課題の解決に向け、真摯に確実に改善することを目指していく」(大内氏)