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京セラの「キッズ向け事業」、今後登場予定の新サービスでは親も見守りの対象へ

 1989年の携帯電話「HP-101」発売から始まり、30周年を迎えた京セラの携帯通信機器事業。

 同社の携帯通信機器事業から「キッズ向け事業」について、これまでの歴史と今後提供を予定する新しい見守り端末のコンセプトを、京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部 FP-Kids・ビジネスユニットの三輪 智章氏が紹介した。

京セラ 通信事業戦略部 FP-Kids・ビジネスユニット 三輪 智章氏(左)、同 FP-Kids・ビジネスユニット事業開発課 山内 敦史氏(左)

「キッズ向け事業」のこれまで

 同社は1998年、DDIポケットの「安心だフォン」に対応するPHS端末を発売した。安心だフォンは、あらかじめ登録しておいた電話番号のみに発信先が限定されるサービス。

京セラのキッズ向け端末の歩み

 その後も、通信技術の進化を環境の変化と捉え、位置情報サービス「ここだよナビ」に対応する端末や、防犯ブザーを搭載する端末、学習支援機能を搭載する端末など、子どもや保護者の安心・安全をサポートする通信端末を提供してきた。

小学校入学のタイミングで発生する社会問題「小1の壁」

社会問題となっている「小1の壁」

 近年では、子どもの就学タイミングで直面する「小1の壁」が社会問題となっている。これは保育園と小学校では1日の流れが大きく異なり、親が参加しなければならない平日の学校行事や長期休みにおける負担の増加、子どもへのサポート増加などが大きな理由とされる。

 また、親の出勤時間が子どもの登校時間より早いことや、子どもの下校時刻から親の帰宅時間に大きく差があるように、就業時間と学校の時間が合っていないことも大きな理由となっている。

 子どもが学校で過ごす時間が年間で約1200~1300時間であるのに対し、放課後時間に長期休みを含めると年間で約1600時間にもなり、学校で過ごす時間よりも放課後を過ごす時間のほうが長くなるという。

 学童などの民間サービスでは保育園の延長保育ほど長く子どもを預かってもらえず、子どもは一人で過ごす時間が長くなる。子どもの犯罪被害は放課後に多く発生しているため、親は子どもに対しさまざまな不安を抱えているという。

 さらに、人と直接関わる機会も減少していることで、自己肯定感の低さや孤独感、感情リテラシーの低下といった影響も懸念されている。

親子で安心するためのサービスへ、2つのコンセプトを披露

 これまでの端末やサービスは、親が子どもを見守り、親が安心感を得るためのものだった。今後は親だけでなく子どもも安心できるサービスを、新たなデバイスとともに提供していく予定だという。

 説明会内では今後の展望として、親子のふれあい(スキンシップ)に重きを置いた見守りサービスのコンセプトが2件紹介された。

 一つは、見守り端末を親自身が身につけ、親子のスキンシップを可視化するという「Skinship notes」だ。親自身が小型のウェアラブル端末を身につけ、子どもとのハグや手つなぎ、抱っこなどの特徴的な動作を記録する。今まであまり見えていなかった親と子のスキンシップを可視化することで、親の意識改善や行動変容につなげられるとしている。

親が端末を身につける「Skinship notes」

 他方は、ホームカメラの「Harmonic」。親子のスキンシップを可視化するという狙いはSkinship notesと同様だが、Harmonicではふれあいを実際に撮影して記録するというのが特徴。第三者視点から親子の自然なふれあいを思い出に残せるだけでなく、子どもの表情や声のトーンを分析して体調管理にも役立てられる。通常のホームカメラデバイスとして、宅内の遠隔監視も可能。

 医療関係の業界とのパートナー締結に向けた準備も進めており、将来的にはPHR(パーソナルヘルスレコード)と連携し、オンライン診療に役立てる構想もあるという。

 これらはいずれもコンセプトとして紹介されたが、質疑応答内ではいずれも2023年度中の市場投入を目標に準備を進めていることが明らかにされた。京セラのキッズ向け事業では今後、家族のコミュニケーションに特化した端末やサービスを提供していく方針。