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快適な会話や車いすの外出をサポートするAndroidとGoogleマップの新機能を、グーグル担当者が解説

 グーグルは、Android OSとGoogleマップの新アクセシビリティ機能を22日から提供していく。それに先立ちオンラインで開催されたプレス向け説明会の模様を紹介する。

 Andoroidには、聴覚に支障がある方や高齢者に向けて音声をリアルタイムで文字起こしする音声文字変換機能と音声を増幅して聞き取りやすくする音声増幅機能が新たにBluetoothオーディオに対応する。

 また、身体が不自由な方や高齢者に向け、音声や画面上のアイコンを押すだけで、特定の人に電話をかけるなどのコマンドを実行できるアクションブロック機能が使えるようになる。

 Googleマップアプリでは、飲食店など公共施設以外の店舗などで車いすのゲストに対応しているかどうかを簡単に検索・確認できるようになる。

リアルタイム音声文字変換機能と音声増幅機能

Androidアクセシビリティプロダクトマネージャー
ブライアン ケムラー氏

 はじめに、同社のAndroid アクセシビリティ プロダクト マネージャーである、ブライアン ケムラー氏が、Andoroidのアクセシビリティ機能について解説した。

アクセシビリティ機能に関する2つの誤解

 ブライアン氏はまず、アクセシビリティについて多くの人が誤解していることが2つあると語る。

 1つは、自分は身体に不自由していないので、アクセシビリティ機能は関係ないと思ってしまうこと。

 しかし、高齢になっていくにつれ、身体が自由に動かせなくなってくることもあるし、思いもよらないような事件や事故で自身の生活が大きく変わることもありえるため、決して無関係ではないという。また、日本は人口の約28%が65歳以上という最も高齢化している社会で、2030年までには3人に1人が55歳以上になると予想されている。今は関係がなくても、将来的に必要になる人々に向けて、機能を提供していると語る。

 2つ目は、利便性などを考慮せずに、単純なアクセシビリティ機能を備えさえすればよく、改良や機能の追加などはしなくてもかまわないという考えがある。

 そうした誤解に対し、同氏は常に新しい機能を、健常者・身体が不自由なユーザー問わず、多くの人々に対して提供していくものだと考えているという。

新型コロナ対策で浮き彫りになった課題

 新型コロナウイルス感染症の拡大をうけ、聴覚に不自由なコミュニティからは音声の文字起こし機能と音声を増幅しより明瞭に聞こえるようにしてほしいというフィードバックがあったという。

 聴覚が不自由なあるユーザーによると、人と会話をする際に、人の口元を見て話す言葉を理解する読唇を行っている。新型コロナウイルス感染症の拡大でマスクをしている人が多くなり、マスクをしている人と会話をする際に、読唇ができなくなってしまうということだった。また、医療機関においても、手話の通訳者などの同伴者が感染症対策で許可されにくくなってしまっており、筆談などで会話することになりスムーズに会話がすすまなくなっている。

 介護施設においては、入居者と家族が直接面会をすることができずに、ガラス越しなど物理的なバリアでソーシャルディスタンスを図る場面も多くなっている。

 今回は、このような場面をサポートする新機能をリリースするという。

音声文字変換機能の新機能

 今回リリースする音声文字変換機能の新機能には、特徴的な機能がいくつかある。

 まず、ユーザー独自で人名や名詞といった単語登録機能がある。

 同氏によると、人名や独特の単語または2種類の言語が含まれた音声をスマートフォンが理解するのは難しいと語る。そこで、そのような単語をあらかじめ登録しておくことで、その発音を単語と認識し、より正確に文字起こしができるようになる。

 例えば、英語の音声の中で「揚げ出し豆腐」という単語が含まれている場合、「あげだし」という単語は、日本語の単語であるため、「あげだし」が出てきてもうまく文字を起こすことができない。そこで、「あげだし」という単語「agedashi」を登録することによって、正しく文字起こしが出来るようになる。

単語登録のデモのようす。新しく「agedashi」の単語を登録する(中央)と、正しく文字起こしされる(左)

 次に、登録した名前が呼ばれた際に、スマートフォンが振動してユーザーに知らせてくれる機能。待合室などで自身の名前が呼ばれる場面などで、名前を登録しておけば視界の外にいる人から名前を呼ばれても、気づくことができる。

 最後は、文字起こし機能で保存したテキストから単語を検索することができる。

 これらの機能を使用すれば、マスクをしている相手の言葉もリアルタイムで文字起こしをしてくれるので、正確に相手の言葉を理解することができる。また、聴覚が不自由な外国人が日本で過ごす場合、専門的な用語が多い市役所や税務署においても、日本語で問題なくやり取りができるようになるという。

 これらの機能は、対人との会話で使用されることを想定しているが、スピーカーからの音声にも、音質が明瞭であれば対応できるとしている。

 音声文字変換機能は、Android5.1以降の端末で、22日から日本語を含めた世界各国各地域の言語で使用できるようになる。

音声増幅機能の新機能

 音声増幅機能は新しくBluetoothのワイヤレスオーディオに対応する。ワイヤレスで聞くことが出来るようになるため、音源にスマートフォンを近づけることで、音声がより鮮明になるという。

 介護施設に入る高齢の入居者とガラス越しで面会する際に、入居者にBluetoothオーディオで聞いてもらえれば、相手の声が聞き取りやすくなり、大切な人に直接気遣いの言葉を話すことができる。

 筆者は、健常者にとっても、取材や授業などで登壇者の声が聞き取りづらいとき、マイクやスマートフォン本体を登壇者近くにおいておき、離れた場所からBluetoothオーディオで増幅された音声を聞くという使い方ができそうだと思った。

 また、Pixel端末に限られるが、スマートフォンで再生しているYoutube動画などのメディアの音声の増幅も新たに対応する。

 これらの新機能は、Android6.0以降の端末で、22日から順次提供を開始する。

アクションブロック機能

 身体に不自由な方や高齢の方など、複雑で細かい操作が難しい方に向けて、画面上の大きなアイコンをタップするだけで、設定した一連のコマンドを実行することが出来るアクションブロック機能も合わせて紹介した。

 特定のだれかに電話をかけるコマンドやGoogle Playで音楽をかけるコマンドを最初に設定しておけば、ホーム画面に配置した大きなボタンをタップするだけで、設定されたコマンドが実行される。

 ボタンだけでなく、Googleアシスタントと連携させることで、音声でコマンドを実行することもできる。

 Android5.0以降の端末で、まずは英語版が22日から提供開始し、順次日本語を含めた他の言語のバージョンも公開を予定している。

Googleマップで車いす対応情報が探せる新機能

Googleマッププロダクトマネージャー
ラズロ ブリサック氏

 つぎに、Googleマップ プロダクトマネージャーの、ラズロ ブリサック氏より、Googleマップの新機能の紹介があった。

 Googleでは、これまで駅などの公共施設において、車いす対応の入口の有無などの情報を掲載していたが、今回新たに飲食店などの店舗にも範囲を拡大し、検索できるようにする。

駅のアクセシビリティ情報の例。対応しているものはチェックマークされる(左)が、対応していないものは×表記されている(右)

 Googleマップでは店舗の評価やレビュー・住所などの情報がローカルガイドやオーナーからの情報をもとに記載されているが、新たにバリアフリー情報として店舗が車いすユーザーの来店に対応しているかを掲載する。入口や駐車場、お手洗いや座席などが車いすに対応しているかの情報があれば、店舗に問い合わせしなくてもこれらの情報を簡単に得ることができる。

 また、検索条件で絞れば、車いす対応の店舗をすぐに探すことができる。

車いす対応している店舗は、検索結果に車いすマークが表示される
検索条件を設定すれば、車いす対応の場所だけを検索できる

 2017年以降、1500万以上の場所のバリアフリー情報を集めることができており、今後も多くの情報を共有していきたいとしている。また、これらの情報は、車いすユーザー以外にもベビーカーなどを持ち合わせるユーザーにも有益な情報になるだろうと語る。

 車いすユーザーは、世界で1億人以上、日本でも400万人以上といわれており、これらの新機能は車いすユーザーが自分たちで行ける場所を見つけるのに役立つとしている。

 GoogleマップのAndroid版・iOS版でバリアフリー情報を22日から順次検索・確認できるようになるとしている。編集部で確認したところ、日本でも一部の商業施設・店舗のバリアフリー情報を、詳細ページで確認することができた。

飲食店の車いす対応情報の例

 ラズロ氏は、新型コロナウイルス感染症が拡大している社会で、車いすユーザーが外出する機会は非常に大切な瞬間であることを理解しており、バリアフリー情報の掲載でサポートしていきたいと語っている。

 グーグルでは、アクセシビリティの充実は、同社のミッションだと考え、世界中の人々が簡単にアクセスできるよう、常に新しい機能を開発していくとしている。