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新型コロナで外出自粛、週末の渋谷・新宿の人出はどうなった? スマホで見えた人の動きをヤフーとAgoopが紹介

 去る3月28日(土)、29日(日)の週末、首都圏では新型コロナウイルス感染症の拡大を抑制するため、主に首都圏の自治体が週末の外出自粛を呼びかけた。その効果は果たしてあったのか。ヤフー、そしてソフトバンク傘下のAgoopのデータから、3月中旬の「気の緩み」や、週末の外出自粛による人の動きがわかった。

週末、東京への流入は約4割減

 ヤフーのデータは、埼玉・千葉・神奈川から東京への来訪者数を示したものだ。平日ではなく週末のデータになる。それによれば2月1日/2日を100%とした場合、3月28日/29日は各県からの来訪者数は約4割減った。

ヤフー・データソリューションの示した図

 さらによく見ると、2月下旬から徐々に来訪者が減り、2割以上、少なくなっていたことがわかる。ところが3連休の土日である3月21日/22日を見ると各県からの来訪者は増えた。この直後、「自粛が続いた中での連休を迎えて気が緩んだのでは」という指摘もあがっていたが、データ上でもそれが裏付けられた格好だ。

Agoopのデータで見る東京各地と関西、札幌などの動き

 Agoopでは今回、東京のうち、渋谷駅(駅は半径500m周辺、以下同)、原宿駅、新宿駅、新橋駅、銀座駅、浅草駅、東京駅、そして首都圏の大宮駅、浦和駅、そのほかの地域として、札幌駅、大阪駅のデータをとりまとめた。駅以外では、上野恩賜公園、新宿御苑、清水寺、嵐山のデータもある。

渋谷駅の動き(データ提供:株式会社Agoop)、薄い青が週末。一番右が28日と29日だ

 それらを見ると、確かに東京各駅の3月28日と29日の人出は大きく減ったことがわかる。若年層に人気の原宿駅でも、半減以上の人出になったことがわかる。それ以外の地域では、たとえば大宮駅、浦和駅で見ると、土曜の人出はさほど変わりないが日曜は減少した。日曜日、29日の首都圏の天候は雪で、そうした影響もあったと見られるが、もともと東京へ出勤する人も多い住宅地としての性格も持つ大宮・浦和の両駅は生活圏でもあり、不要不急ではなく日常生活の中で訪れた人が一定数いたように思える。

原宿駅(データ提供:株式会社Agoop)
新宿駅(データ提供:株式会社Agoop)
新橋駅(データ提供:株式会社Agoop)
銀座駅(データ提供:株式会社Agoop)
浅草駅(データ提供:株式会社Agoop)
東京駅(データ提供:株式会社Agoop)

 そのほかの地域では札幌駅、大阪駅の周辺を見ると、外出自粛の要請があった首都圏と比べ、札幌は前週より多く、大阪は前週より若干減り、首都圏とは違う動きを見せた。

大阪駅(データ提供:株式会社Agoop)
札幌駅(データ提供:株式会社Agoop)

 では観光地はどうだったのか。東京の上野恩賜公園、新宿御苑ともに28日と29日は大きく人出が減った。京都の清水寺は減少傾向の中にあるが、2月~3月の動向とすると減り幅は小さいように思える。同じく京都の嵐山は1月~3月上旬と比べて増えている。

上野恩賜公園(データ提供:株式会社Agoop)
新宿御苑(データ提供:株式会社Agoop)
清水寺(データ提供:株式会社Agoop)
嵐山(データ提供:株式会社Agoop)

 観光地のデータで顕著なのは3月20日~22日の3連休の動きだ。ヤフーのデータでも似たような動きが見受けられたが、上野恩賜公園、新宿御苑、清水寺、嵐山、いずれも多くの人が訪れていたことがわかる。先述した「気の緩み」という指摘が、実際に視覚化された形だ。

 ただ3連休で急に増加したわけではない。渋谷、新宿、新橋、東京といった駅周辺の平日のデータを見ると、2月半ばから徐々に人が少なくなっていたところ、3月2週目、3週目あたりからわずかながら徐々に増えてきたようにも見える。

データはスマホアプリから

 ヤフーが「データソリューション」として提供したデータは、「Yahoo! JAPAN」アプリで計測したものだ。位置情報を集め、誰のデータかわからないようにした上で(個人属性の排除)統計データとしてとりまとめた。

 Agoopの情報も同様の手法で得ている。歩いてコインが貯まる「WalkCoin(アルコイン)」などのアプリに計測技術が導入され、年齢や性別といった個人属性はそもそも取得せず、位置情報だけで人の動きを統計データにしている。

 人の動きを可視化する取り組みとしては、NTTドコモとドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計」、KDDIと沖縄セルラーの「位置情報ビッグデータ」などがあり、そちらは携帯電話のGPS情報をもとにしている。本稿ではメディア向けに公開されたヤフーのデータ、および本誌の問い合わせに対応いただいたAgoopの情報をご紹介した。KDDIと共同開発し、携帯電話のGPS情報を用いる「KDDI Location Analyzer」を手掛ける技研商事インターナショナルも、3月上旬に首都圏、下旬に関西の人の動きを可視化した情報を開示しているが、3月28日と29日については現在のところ、まだ分析中とのこと。

 モバイルサービスやスマートフォンから得られるこれらのデータは個々人を特定するものではなく、社会全体での人の動きを可視化するものだ。通常であれば観光分析や商圏調査などマーケティングデータとして活用され、総務省では2019年、有識者会合(ワーキンググループ)での検証を踏まえ、スマートフォンから得られる人の動きについて「国勢調査を補完し得るものとして利活用できる可能性が見いだされた」としている。新型コロナウイルス感染症に関する今後の政策や人々の行動を考える上でも、何らかの一助になる可能性を示していると言えそうだ。