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ドコモとメルカリ、戦略的提携を締結
2020年2月4日 15:25
NTTドコモ、メルカリ、メルペイが業務提携に合意した。
メルカリIDとdアカウントを2020年5月に連携する。同時期よりメルカリを利用するとdポイントが貯まるようになる。100円ごとに1ポイント還元される。
初夏にはメルペイとd払いも連携し、ポイントをシームレスに利用できるようにする。
両社のポイントと決済サービスの規模
2015年12月からオープンなポイントとして提供されている「dポイント」は、現在7345万会員、加盟店は6万7400店におよぶ。また2018年4月に登場したコード決済サービス「d払い」のユーザー数は2200万人、決済対応店舗は136万カ所だ。
一方、メルカリは月間ユーザー数(MAU)は1450万人。年間流通総額は4902億円。決済サービスの「メルペイ」は、600万人に利用され、加盟店は170万カ所となる。
さらに両社では、メルカリ内での「ドコモ ケータイ払い(現d払い)」を使えるようにしたり、ドコモショップでのメルカリ教室の実施など、徐々に取り組みを広げてきた。
5つの取り組み
戦略的提携の合意により「お互いのIDの紐付け」「メルカリでdポイントが貯まる、使える」「メルペイとd払い残高の連携や加盟店の共通化」「ドコモショップでのメルカリ教室や梱包サポート」「データ活用マーケティングやフィンテックサービスの共同開発の検討」という5点が今後、推進される。
最初の取り組みとなるID連携は、2020年5月になる予定。開始時にはキャンペーンを実施し、ユーザーの手で互いのIDを紐付けてもらえることを目指す。メルカリ執行役員の野辺一也氏によれば、両社では1000万IDの紐付けを目指す。
野辺氏
「メルカリのMAUは約1500万。つまり2/3のユーザーにおいて、IDの連携を目指す。これは携帯電話各社の市場シェアよりも多く連携することになる。それぞれのユーザー層の特性が異なるため、それぞれの決済サービスを利用してもらえれば良いと思っている」と説明する。
データ連携や新規事業は今後
今後の展開として掲げられたデータ活用についてメルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏とNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は「ともに具体的なものはない」としつつも、将来的な取り組みとして、幅広い検討を進めると説明。
たとえば、IDの連携が進むことで、何らかのレコメンドサービスや、メーカーにとっての販促活動への活用などが見込めるという。
メルカリの野辺氏は「dポイントは、一次流通の加盟店がほぼ100%。メルペイによって初めて二次流通のデータが可視化されるだろう。プライバシーに配慮しながら、データを組み合わせることで、新しい価値を生み出せると思っている。ただ、具体的なものは決まっていない」とした。
同じく新規事業についても具体的なものは今後。ドコモの吉澤氏は「フィンテックなども含める」としつつ、メルカリ教室でもVRなどを活用してよりわかりやすく案内できるのでは、とコメント。メルカリの山田氏は「5Gのなかでご一緒できると得られるメリットが大きいのかなと思う。コミットしてやっていきたい」と語った。
統合は「今は非現実的」
両社が進める今後の取り組みとして挙げられたポイントのひとつは決済サービス関連だ。
その決済サービスでは、1月23日付でメルペイがOrigamiを買収すると発表したばかり。また2019年11月にはヤフーとLINEの経営統合も発表されている。
今回のドコモとメルカリの発表でも、決済サービスやポイントにおける統合について多くの質問が挙がる。それに、メルカリの山田社長は「今回の提携で統合は考えていない」としつつ、「加盟店でサービスをシームレスに使えるようにしようと考えている。その先は未定の部分が大きい。進捗を見ながらあらゆる可能性を探りたい。統合について決まった事実はない」として、将来の可能性に含みを持たせた。
NTTドコモプラットフォームビジネス推進部 ウォレットビジネス推進室長の田原務氏は「今回はあくまで両者のサービスを残して、ユーザーの利便性を高める。(現時点での統合は)技術的な面、資金決済法など法律上の課題がある。シームレスな連携でまずは合意した。統合については合意していない。もしアカウントの連携が100%になれば統合もありえるが、いきなりそれは現実的ではない」と語り、拙速に進める場面でないと解説する。
ヤフーとLINEの統合が発表された件が影響したのか、という問いにメルカリの野辺氏は「その発表が影響しなかったと言えば嘘になる。ただ、その以前からドコモさんと取り組みはあり、慌てたわけではない。最後の詰めはここ1~2カ月だった」とした
加盟店開拓の共通化で得られるメリット
ドコモ田原氏は、残高連携、メルペイとd払いでポイントが貯まる仕組み、両社による加盟店開拓の3点を今後、しっかり進めたいと意気込む。機能面での連携の詳細は今後検討するとのことで、今回は明らかにされなかった。
加盟店開拓を共通化することで、両社はコスト削減を見込む。具体的な効果は非開示だが、「加盟店開拓で代理店に費用を(メルカリとドコモが)それぞれ支払ってる。一本化できる」と述べる。
ちなみに現在、加盟店側が支払う手数料は、メルペイは1.5%、d払い3.24%とそれぞれ異なる。ドコモの田原氏によれば、d払いの手数料設定は、d払いが活用するデジタルガレージの「クラウドペイ」というサービスによるもの。今後課題になる可能性はあるが、両社で検討していくとした。
またメルカリ野辺氏は「提携の肝はアカウント紐付け。そこを一緒にやっていきたい」と話し、直近の取り組みに注力する姿勢を示した。
ユーザー層の違いがもたらすもの
加盟店開拓だけではなく、それぞれが抱えるユーザー層が異なっていることも、戦略的提携で得られるメリットのひとつだ。
メルカリの野辺氏は「メルカリには若年層を中心としたお客様、ドコモさんには幅広い顧客がいる。dアカウントと連携することで、メルカリにとって戦略的に獲得したいユーザー層と繋がっていくことになり、それは一番重要なところだった」とコメント。また連携において、dアカウントであればユーザーインターフェイスをシンプルに開発できることも重要だったと指摘する。
一方、ドコモの田原氏は、メルカリというフリーマーケットアプリの市場が、ドコモにとって新たな形の加盟店と解説。dポイントのネット上の加盟店は、d払いの支払いでdポイントが貯まるのがこれまで。一方、今回はd払い限定ではなく、メルカリ内の決済でも、dポイントが貯まる。田原氏は「今回のメルカリさんや、先日発表したリクルートさんはドコモにおいて新しい動き」と語り、パートナーとの共創を進めるドコモにとっても重要な取り組みと位置づけた。