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自律ロボが巡回、エレベーターに乗って荷物も届ける――ソフトバンクグループのWCPが実証実験
2020年1月9日 12:21
カメラやセンサーを駆使して自律走行するロボットが、オフィスビル内を巡回して見回り、さらには荷物まで届けてくれる。そんな仕組みを実現するため、ソフトバンクグループ内のWireless City Planningが実験を行っている。
総務省からの委託に基づいて進められたもので、8日、都内のビルで報道関係者向けに実験の様子が紹介された。
自律走行ロボ「Cuboidくん」
実験では、ソフトバンクの開発したロボット「Cuboid(キューボイド)くん」が活躍する。
Cuboidくんには、LTE対応のモバイルルーター、Wi-Fi、LPWA(今回はLTE Cat.M-1)を搭載。さらに人の呼吸まで検知できるという人感センサーを搭載することで、近くにいる人を検知し、衝突を避けながらフロアを行き来できる。またLiDARセンサーで周辺をマッピングして、自律走行に役立てる。
さまざまなセンサーを備えるCuboidくんがビルの中を巡回。またサービス付き高齢者住宅であれば居住する人へ、オフィスビルであれば働く人へ荷物を配達する。
実験の肝はエレベーターとの連携
荷物を届けるためには、地下や1Fで荷物を受け取ったCuboidくんが、別のフロアの届け先へ移動する必要がある。
そこで利用するのがエレベーター。人ならば、エレベーターの操作はお手の物だが、ロボットにとっては、扉が開いている間に乗降すること、はたまた閉まっている扉を壁と間違えないようにすること、行き先の階を指定すること、衝突しないことといった課題をひとつひとつクリアする必要がある。
今回、WCPでは、三菱電機ビルテクノサービスと協力。エレベーターのインターフェイス装置を用意し、Cuboidくんから行き先のフロアを伝える。このインターフェイス装置は三菱電機ビルテクノサービスのオリジナルで、標準化されたものではないとのこと。
実験で乗り越えた壁
Cuboidくんは、今回、Cat.M-1方式のLPWA通信を活用。これは、エレベーター内で通信が途切れる可能性に備えたものだったが、担当者によれば実験が行われた環境(都内のオフィスビルと別の場所にあるサービス付き高齢者住宅)はエレベーター内の通信環境が良好で、一般的なLTE通信でも問題はなかったとコメント。
とはいえエレベーター内の通信環境は、常に安定しているとは言えない。当初、Cuboidくんと、エレベーターのインターフェイス装置とのやり取りは一度だけという設定だったが、実験を進めてみると通信に失敗するケースがあることも判明。そこでチューニングの一環として再送処理を含めるようにして解決した。
またロボットにとって、エレベーターの自動ドアは閉じている状態では壁と認識しがち。何も工夫しなければ通過することすら難しくなるため、チューニングが必要だったそう。
さらにエレベーターの乗降にもある程度時間はかかるため、その間扉を開け続ける要求をインターフェイス側へ送信する必要もあった。しかし、エレベーター側で開け続けられるのは最長3分まで。あまり悠長にもできず、自律走行する上での速度設定や安全な動き方などのバランスの取り方も、ノウハウとしての収穫になった。
WCPでは、具体的な商用化の時期は明らかにしていないが、少子高齢化社会の中で、特に地方での生産性向上などを見据えていくという。