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ソフトバンクの第2四半期決算は増収増益、通信事業を含む多方面で好調
2019年11月5日 21:10
ソフトバンクは11月5日、2019年度第2四半期決算の記者説明会を開催した。個人向け通信事業、法人向け事業、流通、ヤフーなど全事業で増収。連結子会社化前のヤフーの2018年度実績を加味しても、増収増益となった。
当期売上高は2兆3731億円、営業利益は5520億円、純利益は3274億円。2019年度の年間予想に対する進捗は、営業利益62%、純利益68%と計画を上回っているが、新規事業への投資などを見込み、上方修正は行わない。
同社代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、好調の要因について、主力の個人向け携帯電話事業も伸びているが、法人向けやブロードバンド、ヤフー、新規事業など収益源が多様化したことが大きいと分析。ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの3ブランドからなるモバイル通信サービスを基盤に、海外で成功を収めた企業を取り込みながら通信以外の領域にも進出していく「Beyond Carrier」戦略に手応えを感じている様子を語る。
スマートフォン累計契約数は9%増、目標は「数年後に3000万」
スマートフォンの契約数は、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの合計で2303万件。前年同期比194万件増で、数年以内のグループ3000万契約突破に意欲を示す。
今回、業績が発表された第2四半期の時点では法改正前となるが、10月1日の電気通信事業法改正などに伴う対応について改めて説明された。ソフトバンク、ワイモバイルの両ブランドで2年契約を撤廃。ソフトバンクは2018年9月にすでに分離プランを導入しており、法改正のタイミングでは主にワイモバイルの料金プランに修正が加えられた。
法改正を控えた9月には各社の競争のなかで値下げ合戦の様相を呈した部分があったことを認め、法改正から1カ月が過ぎた現状としては、10月はハイスペックモデルを取り揃えるソフトバンクブランドの新規契約は減少、ワイモバイルの需要は減速せず好調だという。ソフトバンクブランドに関しては解約数も減っており、流動性が低下したのではないかと宮内氏。ただし、消費税増税など通信関連の行政改革以外の要因も考えられるため、10月だけでは判断は難しいと慎重な姿勢を見せる。
また、9月の台風19号や2018年の西日本豪雨など、近年の大規模災害対応の取り組みを紹介。ネットワークセンターなどの重要拠点の停電対策、早期復旧のための移動基地局車や可搬型基地局の配備といった備えに一定の予算を充てている。台風19号の発生時には、交通網に支障が起きても早期に対策部隊を展開するため、2日前から台風の予想ルートに技術者などを送り込み、協力会社も含め約1万人を動員した。
CTOの宮川潤一氏は、大規模災害の発生に備え、事業者間での連携も必要ではないかと語る。資材や光ファイバーの貸し借りなどは現状でも行われているが、たとえば欧州のように、非常時には複数事業者のコードで電波を発射できる仕組みを作り、1社でも設備が残っていればサービスの提供を継続できる体制を整備できないかなど、他社のCTOとも議論しているという。
法人向けソリューションが好調、高精度測位サービスに大きな反響
法人向け事業では、固定通信の売上は微減したものの、モバイル通信とソリューションが成長。特に法人向けソリューションは、デジタルマーケティング、クラウド、RPAなど多くのサービスが伸び、法人向けソリューション単独での売上高は前年同期比21%増となった。
6月に発表された誤差数cmでの測位を実現する高精度測位サービス(※関連記事)については多数の問い合わせがあり、100件以上の案件が動いているという。NTTドコモも同時期に高精度測位サービスを発表しているが、精度では勝ると自信を見せる。
同サービスの将来性を示す事例のひとつとして、宮内氏はヤンマーアグリと共同で実証実験を行った「農機の自動運転」の事例を紹介。公道よりも実現のハードルが低く数年以内に農機の自動運転化は可能と考えられる一方、通常のGPSなどの精度では“耕し残し”が出てしまうことも実験で確認できたといい、普及すれば高精度測位サービスのニーズが生まれる。このように、さまざまな産業において活用が期待されるサービスだという。
「PayPay」をスーパーアプリに、アリババのような陣形を目指す
新規事業では、海外のユニコーン企業とジョイントベンチャーを設立し日本市場における成功を目指すという手法を取り、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先との連携を中心に、通信以外のさまざまな分野に手を広げる。
WeWorkの日本国内でのメンバー数は1万7000人に到達。6都市23拠点を展開し、空き待ちの状況となっている拠点も少なくないという。タクシー配車アプリ「DiDi」の契約タクシー事業者は333社に達し、訪日中国人が母国で使っているアプリを日本でそのまま使えることなどが好評を博している。DiDiや4月頃にプレローンチしたOYO Hotelsについては、タクシーやホテルの稼働率の向上に繋がり、提携事業者にとっても良い影響が出ていると手応えを語った。
決済アプリ「PayPay」は、キャッシュレス還元事業の影響などもあり、急速に成長。サービス開始から13カ月で登録ユーザー数は1900万人に達した。特に、2019年8月以降の伸びが顕著だという。月次決済回数も増え、2019年9月は約4200万回、10月は約8500万回となった。
大規模なキャンペーンで決済サービスとしての知名度を高めたことに加え、社会環境の変化からキャッシュレス決済の利用意向が高まっていることも追い風となっている。公共料金の支払いや銀行口座への出金といった機能の追加、「PayPayフリマ」や「PayPayモール」の展開に加え、将来的には後払いなどの金融サービスの展開も検討。宮内氏は「決済アプリからスーパーアプリへ」「アリババのような陣形を目指す」と語り、PayPayを今後の事業戦略における重要なサービスと位置付ける。