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LINEモバイルの月間純増が3倍に、嘉戸社長が語る背景

 「2018年7月にソフトバンク回線を提供しはじめた。半年で純増数は3倍になった」とコメントしたのは、LINEモバイル代表取締役社長の嘉戸彩乃氏だ。

嘉戸社長(左)とCMキャラクターの本田翼

 2016年9月にLINE子会社として設立され、約1年前にソフトバンクとの合弁会社へと変貌した同社は、何を仕掛け、これから何を目指すのか。20日の発表会では、「誰でも」宣言とともに、嘉戸社長が同社の戦略を語った。

3つの仕掛けに注力

 ソフトバンクとの資本提携後、LINEモバイルではサービス、販売チャネル、価格の3つを仕掛けてきた。

 サービス面は、ドコモ回線に加えてソフトバンク回線を提供したこと。販売チャネルでは、LINEとの連携を深めたこと。

 そして価格は現在実施中のキャンペーンで、月額300円~という安価なプランを提供していること、あわせて3つの施策になる。

純増3倍、その理由は

 その結果、2018年7月のソフトバンク回線提供開始から、順調にユーザー数が増加。同年6月と比べて、現在では月間純増数が3倍と、大きな成長を遂げている。

 その背景として、嘉戸社長は、LINEとの連携を強めたことで、オンライン経由での申し込みが全体の75%に達したことを挙げる。

 さらに3倍にまで純増数が伸びた理由を深掘りしてみると、ソフトバンク回線の提供を開始したこと自体が待ち望まれていたことと説明。

 さらにプロモーションとキャンペーンの施策として、月額300円を打ち出したところ「驚くほど成功した」(嘉戸氏)とも語る。

 LINEとの連携という点でも、たとえばLINEポイントで通信料金を支払えるようにする、LINEのスタンプと連携してユーザーへの認知を高めるといった取り組みで効果があったという。

 その一方で、iPhone SEの取り扱いもスタートしていたが、嘉戸氏は、他の取り組みと比べると「小粒」として、効果としては限定的と評した。

マルチキャリアを用意する背景

 今春には、新たにau回線も提供する方針が、今回の発表会で紹介された。メリットのひとつとして、SIMロックを解除せずともLINEモバイルが利用できるようになると嘉戸氏は説明する。

嘉戸氏
「お客さまはそもそもSIMロックを解除する必要があることをご存じないというのが一番大きなところ。端末そのままでお安くなりますよとお伝えしても、SIMロック解除の手続きを、オンラインででもできないとなれば(乗り換えを妨げる障壁として)大きい」

 au回線の提供により、どの程度ユーザー数が伸びるか、嘉戸氏は「おそらくそれなりの数字になると思っています」と期待感を示す。

データフリー、規制されるとどうする?

 2018年10月から、総務省ではネットワークの中立性などを議論する有識者会合が開催されている。ある程度論点が整理されてきた段階だが、まだ正式なガイドラインの提示にまでは至っていない。

 この点について問われた嘉戸氏は、論点は「通信の秘密とネットワークの中立性に尽きると思う」とコメント。

 通信の秘密についてはユーザーから個別で同意を得ている一方で、特定のサービスの通信量を無料にするデータフリー(業界用語ではゼロレーティングなどとも呼ばれる)については「ガイドラインが提示された後にどう対応するか決めていく」とした。

通信速度、体感向上をはかる

 携帯電話会社から帯域を借り受けてサービスを提供するMVNOだが、LINEモバイルの現状について、嘉戸氏は「非常に細かい頻度で制御している」と解説する。

 同氏は、「単純に土管(借り受ける帯域)を増やすよりも、調達しすぎずにユーザーの体感がよくなるのか。技術的な制御をどうするのか。コストと一緒に確認していく」と解説。繊細なコントロールで品質向上を図っていることを明らかにした。

料金面では自由さをアピール

 料金面では、縛りなどとも呼ばれるいわゆる期間拘束や、中途解約料金を設定していないことは、LINEモバイルとしてユーザーにわかりやすい料金を提示したいため、と説明。

嘉戸氏
「大手キャリアで、月々○円~とうたうものがある。それは2年縛りがあって、自動更新があって、さらに言うと家族割、学生割、固定回線とのセットもある。さらにはオプションを付ける場合もある。そういうことを一切辞めていく」

 月額300円のキャンペーンは、そうしたわかりやすさを追求したものであり、結果、ユーザーからも高い満足度を得ていると評価する。なお、LINEモバイルでは、月額300円のキャンペーンで、利用開始から12カ月間を最低利用期間に設定。解約やMNPで転出すると9800円(税抜)の解約手数料がかかると案内している。

値下げ予告にどう対抗?

 今春、NTTドコモが値下げを予告する中で、LINEモバイルはどう対抗していくのか。嘉戸氏は「今はなんとも言えない」としつつも、同社がキャンペーンで提供する月額300円という価格には「そこまでやることはないだろうと認識している」と語る。

 さらに今後は楽天の参入なども控えるが、料金面での取り組みは「他社のアプローチで変わってくる。できるだけユーザーに喜んでもらえる設定は追求したい」とコメント。現在はまだ投資段階であり、300円のキャンペーンも、LINEモバイルの独自性を訴求する機会にも繋がっていると位置づける。今後はLINEモバイルとしての単体での黒字化を目指しつつも、LINEとのサービス連携での収益モデルなども「当然やっていくでしょう」(嘉戸氏)とした。

 会見には、CMキャラクターを務める本田翼も登場。月額300円という料金に、自身の小学生時代のお小遣いが同額だったことから、子供にとっても優しい料金と驚いていた。