ニュース
「動画やSNSの見放題」はアリなのか? 総務省から中間報告案
2019年2月21日 16:29
総務省の有識者会合である「ネットワーク中立性に関する研究会」が20日、中間報告書案を発表した。特定のWebサービスの通信量を無料にする、いわゆる「ゼロレーティング」などについて、現時点での考えがまとめられている。
ゼロレーティングサービス
現在、国内の携帯電話サービスでは、たとえばソフトバンクが「ウルトラギガモンスター+」でYouTubeやFacebookなどを利用しても、料金プランの通信量が減らないサービスを提供している。特定のサービスの通信量だけ無料にすることは、ゼロレーティングと呼ばれている。
同様の“ゼロレーティング”のサービスはMVNOでは広く普及しており、OCN モバイル ONEやmineo、BIGLOBEモバイル、LINEモバイルなどが手がけている。
事業者にとっては、他社との違いを打ち出す取り組みのひとつであり、中間報告書でも、ユーザーにとって選べるサービスの幅が広がる、コンテンツの利用が進むという効果への期待感を指摘している。
ゼロレーティングのデメリット
その一方で、ゼロレーティングを実施することには弊害も指摘されている。
たとえば市場シェアが高い大手企業がゼロレーティングを導入すると、対象外のサービスにとっては、ユーザーが利用を避ける可能性が出てきてしまう。
またコンテンツ、Webサービス側から、通信事業者へ何らかのコストを支払い、ユーザーに通信料がかからない「スポンサードデータ」の場合、中小規模のコンテンツ事業者にとっては障壁になりえる。
検討会で出た意見
2018年10月に発足した「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」では、憲法で定められた「通信の秘密」や、利用の公平性といった観点を踏まえてガイドラインを出すべきといった意見や、コンテンツホルダーによる通信事業者、プラットフォーム事業者の差別的な取り扱いに一定の制限が必要では、といった意見もあった。
ユーザー(消費者)にとっても、よくわからないまま通信内容が分析されたり、無料・見放題に惹かれて誘導されないようにする方策が必要、という指摘もあった。
中間報告案で示された今後の方向性
20日に発表された中間報告書案では、「ゼロレーティングや、スポンサードデータはまだ萌芽的なサービス」と指摘して、一律禁止ではなく、一定の判断基準を示してから、ケースバイケースで対応し、問題になれば電気通信事業法などで事後的に対応する、といった方針が示された。
そこで、「ゼロレーティングの提供に関する電気通信事業法の規律の適用についての解釈指針」を今後とりまとめ、運用することが適当、という形になった。
取りまとめに向けて、競争環境の確保などからいくつかの論点が挙げられている。たとえば「大手キャリア(MNO)によるゼロレーティングは、MVNOによるサービスが不可能な条件で提供していないか監視が必要でないか「市場支配力を持つ大手通信キャリアが特定の事業者のコンテンツのみを対象にすることは、競争確保から不適切ではないか」といった形だ。
未来に必要な通信インフラへの投資
日本のネット通信量(インターネットトラヒック量)は、1年に1.3~1.4倍、増加し続けている。
映像が4K化するなど今後もさらに通信量は増える見込みだが、そこで重要なのはネットワーク設備への持続的な投資が必要不可欠、と中間報告書案では指摘する。
通信量が増大するなかで、日本に存在する大小さまざまなインターネット接続サービス(ISP)などがどう対応していくのが望ましいのか。
まずは現在のトラヒックを正確に把握することや、通信事業者やISPから遅延や実効速度などを自主的に開示してもらい、ボトルネックや、誰が受益者か明確にして、関係者の議論を進めたい考えが示されている。