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ソフトバンクも「共創」へ、IoTに本腰

開発者向けIoT講演イベント開催、ドローンのインフラ保全サービスも発表

 ソフトバンクは11月7日、同社主催では初めてというIoTをテーマにした開発者向け講演イベントを都内で開催した。基調講演にはソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏をはじめ、COOの今井康之氏、CTOの宮川潤一氏も登壇し、ゲストも交えながらソフトバンクのIoT戦略を解説した。同社は7月からIoTパートナープログラムへを開始しており、こちらへの参加も呼びかけた。

 社長の宮内氏は、「IoTが世の中を変革する」と位置付けており、IoTデバイスの数ややり取りされるデータ量が爆発的に伸びるとする予測を紹介。重要なのはそこで発生する膨大なデータであり、膨大なデータから意味のあるデータに整形するAIが最も重要な技術になるとした。

ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏

 宮内氏は、中国の配車プラットフォーム「DiDi」が1日あたり4800TB(テラバイト)のデータを処理し、15分毎に更新する「ヒートマップ」で詳細な需要予測を行っているという事例や、日本のホテルで宿泊客にスマートフォンを貸し出す「Handy Japan」のサービスで、訪日観光客の流動人口データを解析できる事例を紹介。膨大なデータを有効な形に抽出することで、需要と供給の最適化、混雑を避けた観光ルートの最適化など、さまざまな活用方法があることを示した。また、こうしたリアルタイムで可視化される膨大なデータと分析結果は、“経営状況ダッシュボード”のような形で、会社経営のツールとしても利用できることを紹介した。

※イメージ。数値はダミー

 ここで宮内氏は、“あらゆる場面でデータを収集/活用”しているという中国を、データ活用の先進国として紹介。アリババグループを支えているクラウド基盤の現在の様子が、ゲストとして登壇したアリババグループ 副社長のLancelot Guo氏から語られた。

IoTは「インターネット」の再来

 中国においてEコマースで頭角を現したアリババだが、現在は情報流通のインフラ構築にまで視野を広げている。Lancelot氏は、アリババグループがさまざまなビジネス・ユースケースを抱えていることが強みとし、その種類の豊富さが重要になると指摘。もちろん売上や処理件数の多さといった規模も重要で、強固なクラウド基盤が必然的に求められることを語った。

アリババグループ 副社長のLancelot Guo氏

 こうしたことを背景にクラウド・IoT時代を迎えると、単純にIoT関連の技術を開発するだけでなく、230種類以上というアリババが抱えるビジネスモデルに対してIoTを展開できることになり、大きな推進力や影響力につながることが指摘された。

 Lancelot氏は一例として「Alipay」を挙げる。当初は「PayPalと同等のサービスだった」というが、その後にあらゆるユースケースを開発、現在では駐車料金の支払いからクーポン、マイクロローンやファイナンシングなども含む、300位上のユースケースが開発されたという。このように、IoTは「どのようなユースケースを手がけるのかが重要」とLancelot氏は指摘する。

 「1999年に、インターネットがくると思っていた頃に似ている。IoTは、あと3年ぐらいでそうなる。まさに昔のインターネットのように、IoTが起こっている」とLancelot氏は語り、人々の生活・仕事を大きく変える、新たな革命前夜であることを示した。

 ステージに戻った宮内氏は、Alibaba Cloudが開発環境も整備し、簡単に利用できるようになっていることや、SB CloudではNB-IoTといったネットワークを含めて提供できることを紹介した上で、「みなさんと一緒にやっていきたい」と呼びかけ、すでに約200社が参画しているという「IoTパートナープログラム」を紹介、「来年度にかけて一気に拡大していきたい」と「共創」への意気込みを語った。

ドローンとAIを活用、社会インフラの保守サービス

 ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏からは、技術的な面を軸に、「スマートシティ」に関するソフトバンクの取り組みが語られ、すでに本誌でも紹介している「NIDD」やNB-IoTの取り組みについて解説した。ソフトバンクのNB-IoTのIoT向け通信サービスは1回線10円~と安価に設定されており「10円では赤字だが、今は広げる時期」と、まずは普及を図っていく方針。

ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏

 IoTとの相性もよい5Gの展開は、「5年間で全国津々浦々でつながるようにする」とし、「2019年には商用と言われるエリアを作って、皆さんの前に披露したい」と語り、プレサービスを提供する方針も示した。

 宮川氏はまた、IoTや5G時代は、その活用方針として「地方創生」が大きなテーマになるともしており、すでに発表している、トヨタと共同で自動運転を含むモビリティプラットフォームを手がける取り組みも、買い物困難者といった地方対策が大きなテーマになっていることを紹介した。

 このほか、道路など社会インフラの老朽化対策も今後の重要課題であるとし、ドローンを使ってインフラの保守・点検を支援するサービスを、来春からソフトバンクが提供することも明らかにした。

 宮川氏は自社の基地局(鉄塔)の保守点検を例に、同サービスを紹介。ドローンが周辺を飛行して写真の撮影を行うと同時に、正確な3Dモデルも作成し、AIが正常な時との違いを発見したり、台風通過後などにアンテナの角度のズレを検出したりできる様子が紹介された。

 なおソフトバンクは、インフラの保全サービスの提供にあたり、北米でドローンを使った点検ソリューションを行う5×5 Technologiesに約400万ドルを出資しており、5×5社の技術を日本で独占的に使用・販売する権利を取得している。

 「1社だけで世の中を動かすのは、IoTの世界ではなかなかできない。共創して、豊かな日本を作れるよう、協力してやっていきたい」と宮川氏は語り、さまざまなパートナー企業と取り組んでいく様子を語っている。

 このほかソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏からは、国土交通省が建築関連で生産性向上に取り組む政策に関連し、ソフトバンクが全面的に協力していくと表明。前述のドローン・AIによるインフラ保守サービスの将来的な活用をはじめ、クラウドサービスに既存のデータを蓄積して、ほかの企業がAIモデルを開発できるようにしていくことなどを説明した。ここではゲストとして国土交通省の担当者も登壇。将来的に、ドローンやAIを使って(国交省管轄の)公共インフラの保守点検をできるよう、法整備を進めている様子が紹介された。

ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏