ニュース
ソフトバンク、IoT向け通信方式にIPアドレスを使わない新技術
2018年9月28日 15:47
ソフトバンクは、IoT向け通信規格「NB-IoT」で、IPアドレスを用いない技術「NIDD(Non-IP Data Delivery」を採用し、商用環境での試験サービスの提供を開始した。
従来のIoTデバイスは、1つ1つにIPアドレスが付与される形だが、「NIDD」では、携帯電話事業者のネットワーク設備内ではIPアドレスを用いずにNB-IoTで少量のデータ通信を行うようにする。
IPアドレスを不要とすることで、外部から直接IoTデバイスへアタックできなくなりセキュリティの向上が見込める。またNIDDを用いる区間での暗号化が不要になり、ユーザー認証や処理が削減されるほか、通信時のデータ(IPヘッダ)が不要になる。
さらに通信量が削減されることで、通信の成功率が高まり、エリアの端でもデータをやり取りできるようになるため、サービスエリアが実質的に拡大する効果もある。
NB-IoT対応の水道メーターや街灯、農業における家畜のバイタルデータ計測やビニールハウスの温室管理など、広いエリアや多数のセンサーデバイスをIoT対応にする場合に適した技術とのことで、NIDD対応デバイスは電源をONにするだけですぐ利用できるようになるという。
ネットワーク構成
ソフトバンクによれば、NIDDは、NB-IoT向けの仕組みとして、今年6月に3GPPで標準化されたばかり。NB-IoT対応デバイスとして既に市場へ登場している製品でも、たとえばクアルコムのチップセット「MDM9206」は通信経由でのソフト更新でNIDDに対応できるという。今回はアファームド・ネットワーク社の製品を採用し、商用環境でも使えるようにした。
ネットワーク設備では、これまでのNB-IoTではS/P-GW(Serving/Packet. Data Network Gateway)を経由する形だったが、NIDDでは基地局(eNB)装置はMME(Mobility Management Entity、端末の位置などを管理する装置)に繋がり、その後、SCEF(Service Capability Exposure Function)、SCS(Service Capability Server)といった装置を経由して非IPでデータを送受信する。無線区間とコアネットワークの間は非IPとなるが、IoTデバイスから得たデータは、その後ソフトバンクが用意するクラウド環境(IoTプラットフォーム)に閉域網で繋がる。
IoTプラットフォームから、大手クラウド(日本マイクロソフト、Amazon、グーグル、アリババ)に転送することもでき、データの見える化や分析などが行える。
デバイスには、固有の識別番号(IMSI)が割り当てられ、基地局と端末の間は、制御信号(C-Plane)で計測データを取り扱う。ちなみに監視カメラなど大容量データを必要とするIoTデバイスはそもそも、下り27kbps、上り63kbpsという通信速度のNB-IoTには不向きとなる。
ソフトバンク宮川氏「IoT世界の最終形にきた」
ソフトバンク代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川 潤一氏は、これまでのIoTでは、セキュリティ、消費電力、大量の端末の展開といった点で課題があったと指摘。NIDDの導入でそれらの課題が解決でき、IoTデバイスの本格的な拡大が実現し、「IoT世界の最終形にきた」と高く評価し、今後に期待する姿勢を見せる。
非IPの区間は、携帯電話キャリアでしかコントロールできない形であることから、キャリアにとっては通信機能だけを提供するいわゆる「土管化」から逃れられる仕組みであり、グローバルでも主流になるのでは、と宮川氏。
宮川氏は、標準化から3カ月で実装にこぎつけたことから、今後半年程度の試験を通じてバグを修正し、来春にも正式サービスとして提供していく方針と説明。
さらに同氏は、NTTドコモやKDDIに対しても、NIDDを含むNB-IoTを導入してほしいと呼びかける。これは日本国内での環境が充実することで、エコシステムが活況を呈し、「日本から世界へ打って出るメーカーや事業者が育つ」(宮川氏)ことが期待できるという主張。28日の説明会では、ソフトバンクのみならず、日本全体で今後のIoT時代での確固としたポジションを確立しよう、と宮川氏からのメッセージが強く打ち出される形となった。