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KDDIがスマートグラスでVR/ARを推進、実証実験を開始

 KDDIは、米ODGと協力し、AR・VR・MR技術(xR技術)を活用したスマートグラスの企画・開発を推進していくと発表した。「xR」とは、現在までに登場しているVR、AR、MRといった技術の総称。

ODGのスマートグラス「R-9」
手前に付いている小型レンズは近視用レンズで着脱可能

 スマートグラスは、米ODGが開発したスマートグラスのハイエンドモデル「R-9」をベースに、日本向けにサイズなどをカスタマイズして提供していく。「R-9」はSnapdragon 835やカメラを搭載し、「6DOF」対応の位置トラッキングや、「SLAM」による自己位置推定と地図作成に対応するほか、THX対応のビデオ視聴もサポートされる。今後はクアルコムと協力、Wi-Fiだけでなくモバイル通信網に対応するモデムの開発も検討していく。

左が「R-8」、右が「R-9」
「R-8」
「R-8」

 実証実験ではJALとも連携、空港のラウンジでスマートグラスを使って映像を視聴できるといった取り組みが行われる。映像の内容などは今後詳細を決定する。KDDIでは、将来的には機内エンターテイメントでも利用できるよう検討していくとしている。

 KDDIはまた、バーチャルキャラクターとxR技術などを活用したビジネスを開発する方針も明らかにしており、映像認識エンジンやキャラクターAIでパートナー各社と連携、5月からはビジネストライアルを実施していく。

5G時代はxR技術が加速

 4月26日に都内で開催された発表会に登壇したKDDI 理事 商品・CS副統括本部長の山田靖久氏は、最新のテクノロジーを実現していくにはパートナーとの協業・共創が不可欠とした上で、5G時代にxR技術を加速させ、これをパートナーとともに実現していくことを強調する。

 KDDIはこれまでもVRやMRなどでさまざまな実験的提供を行い発表してきたが、5G時代にはスマートフォンだけでなく、新たなデバイスも大きく進化するとし、幅広い分野で活用に期待がかかるスマートグラス分野について、米国で開発実績のあるODGと戦略的パートナーシップを締結に至ったと、背景を語った。

KDDI 理事 商品・CS副統括本部長の山田靖久氏

急速に拡大する市場に応える

 発表会ではODG COOのPete Jameson氏が登壇し、スマートグラスに取り組む様子を語った。同氏は、同社の変わらぬビジョンとして「スマートグラスが新たなモバイルのプラットフォームになる」と掲げる。

 同社は1984年に軍事用の暗視スコープを提供するなどウェアラブルのカメラやグラスに取り組んできた企業で、この10年はスマートグラスに注力し、主に業務用に提供している。今回KDDI向けにベースモデルとして提供される「R-9」はSnapdragon 835を搭載する最上位モデルにあたる。

 同氏はスマートグラスの市場について「大きな市場になることは明らか。没入感やインタラクティブ体験を提供し、モバイル分野に革命をもたらしたい。両社の強みを束ねることで、急速に拡大する市場に応えていく」と意気込みを語った。

ODG COOのPete Jameson氏

進化し続けているスマートグラス

 米クアルコムからもSenior Director, Product ManagementのHugo Swart氏が登壇した。同氏は「クアルコムのビジョンは、将来のモバイルコンピューティングはウェアラブルグラスにかわる、ということ。あらゆる仕事、遊び、教育などの場で、コンピューターとして使われるようになる」と将来像を描く。ただし「すぐに起こるわけではない。5年、10年がかかるかもしれない」としつつも、Snapdragonの6DOFのサポートなど、毎年デバイスが進化している様子を示した。

 同氏は高速・低遅延な5Gの技術は将来的なスマートグラスのサービスに必要とした上で、通信事業者はそうした技術の通信網だけでなくプラットフォームも提供できる可能性があるとし、クアルコムだけでも実現できないこの世界観について「黎明期にあるxRのビジョンを成功に導いていく」と協力していく方針を語っている。

米クアルコム Senior Director, Product ManagementのHugo Swart氏

ポストスマートフォンはスマートグラス?

 図らずもODGのPete Jameson氏とクアルコムのHugo Swart氏が揃って、スマートグラスが新たなモバイルプラットフォームになると語ったことで、質疑応答の時間にはKDDIのスタンスが問われた。山田氏は「“直リプレイス”はありえないと思っている」とした上で、「ユーザーのマンマシーンインターフェースはどんどん拡大している。その中のひとつとして5G時代には(スマートグラスが普及する)可能性が高い。かなり気合を入れている」と語り、少なくとも直近でスマートフォンを直接置き換えるものではなないとしつつ、技術の進化で活用が大きく進むデバイスになると予測した。

 KDDIからの本格的な提供時期については、2020年頃とし、まずは法人向けに提供する方針。一方、「コンシューマーにも幅広く使っていただけるものだ」と、法人向け以外も想定している。

 この日紹介された「R-9」を使ったソリューションなどは、すでにマイクロソフトが「Hololens」で先鞭をつけている分野。優位性を問われると、KDDIの上月氏は「ODGのスマートグラスは軽く、操作のしやすさにもアドバンテージがある、という反応をもらっている」とデバイスが小型・軽量である点を挙げる。また、「オープンソースのAndroidがベース。クアルコムのチップセットが搭載されており、スマートフォンビジネスやアプリ開発と親和性が高く、非常に効率的」と指摘している。

スマートグラス活用のデモンストレーション

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