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総務省の公正競争促進の検討会、論点整理の第5回を開催
2018年4月9日 16:56
総務省で「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会(第5回)」が開催された。今回は議題が論点整理とされ、総務省がこれまでの議論を踏まえた論点案を作成し公表、有識者がさらに論点を整理あるいは要望を付け加えるという内容になった。
前半に論点案が総務省 料金サービス課の担当者から紹介され、その後に有識者から質問や意見、さらなる論点整理が行われる形で進んだ。
総務省が公表した論点案は、これまで開催された検討会で指摘された点や議論になった点をかなりの割合で網羅しており、個別具体的な議論に対しどうするべきかを「方向性」として回答する内容。
一方で、「検討会」全体の方向性や、その「方向性」を導くまでの経緯と、そこであきらかになった事実、「なにが公平なのか」といった重要で難しいテーマには触れられておらず、検討会としての結論は、今回の論点案からは未だ見えづらい。
経緯や事実も明記を
有識者として検討会に参加している野村総合研究所 コンサルティング事業本部パートナーの北俊一氏は、検討会の中で明らかになった、情報や事実といった経緯が、今回公開された論点案では触れられていないと指摘。たとえば「UQ mobile」がKDDIから優遇されているという疑念は、構成員限りとして提供されたデータにより、「疑義が晴れた」と一応の解決をみているというが、そうした情報や事実を基にした経緯が含まれていないと不満を示す。「分かったこと、分かっていないことを切り分けて書いてほしい」と要望した。
4年の割賦契約で2年分を免除といった、新たに登場している販売手法については、「消費者に対し、端末を返却することや、同じプログラムの継続が条件であることなど、重要な前提条件をしっかりと説明することが重要。消費者保護ガイドラインに加えてほしい」としている。
独禁法に抵触の場合は、公正取引委員会に情報提供へ
総務省が示した具体的な「方向性」の中でも注目を集めたのは、公正取引委員会との連携について。これは、高額なキャッシュバックが依然として横行していると、MVNOが検討会の中で指摘したことなどを受けたもので、販売店による独占禁止法抵触の可能性を認知した場合に、総務省が公正取引委員会に情報提供を行うというもの。
なお実際には、一般的に公正取引委員会は独立性が強く、総務省と連携するといった取り組みには時間がかかるとみられている。
一方、2016年8月には、公正取引委員会自体が、大手キャリアや市場支配力の強いアップルなどを牽制する内容で、販売手法の是正を要請する報告書を公開している。さらに2018年4月6日には、公正取引委員会がこの報告書の内容をフォローアップする「携帯電話分野に関する意見交換会」を、複数回に分けて開催すると発表している。この公正取引委員会の意見交換会にはオブザーバーとして総務省も参加することから、公正取引委員会の取り組みに総務省として協力や、なんらかの連携を図っていくものとみられる。
高額なキャッシュバックについて北氏は、「難しい問題。ガイドラインの前と変わらない状況になっている。穴を見つけて対応している。販売店独自の値引き、と言われればどうしようもない。公正取引委員会に情報提供を行うということだが、ぜひしっかりと連携してもらいたい。そうした行為(過度な補助)自体や、実質的な指示も含めて、是正対象になることを明確にするのは重要」とした。
また、高額なキャッシュバックの是正を図るガイドラインの策定当時にはなかった状況として、MVNOによる高額なキャッシュバックという状況も昨今では登場している。北氏はこれについても指摘し、「MVNOについても基本的にガイドラインを適用すべき」と要望した。
最安アピールにも注文
さらに北氏は、複雑な条件が必要にもかかわらず、安易に最安値をアピールする広告を「品の無い、最安値を連呼するCM」と厳しく批判。「状況を注視する状況ではない。そんな期間はもう終わった。期待できるとは思えない。利用者からの誤認や相談といった情報を把握した上で、優良誤認の広告宣伝を是正してもらいたい」と早急に対応が必要とする。北氏は、携帯電話の販売現場では、CMをみて来店した顧客を、複雑な前提条件を言いくるめて契約させる“高度な接客”で対応しなければならず、ショップのスタッフにもストレスが高く、消費者の信頼も得られないとして、本格的に是正に取り組むことを要望した。
座長の明治大学法学部 教場の新美育文氏からは、「なにが公平かは難しい。絶対的にこう、というのではなく、情報を出して、それを社会が判断するという方法にしたい。疑いがあるのなら、きちんと説明してくださいということ。キャッシュバックが過剰なのか、過剰でないのかも、販促費がどういう形で出ているのかという情報が出るだけでもいい(公平な判断が下しやすくなる)」などとし、複雑化する議題に、より多くの事実に基づく情報が必要になるとの認識を示している。