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新しいauは通信とライフデザインを融合、“ワクワクを提案し続ける会社”へ

新社長の高橋氏が語った「大変革時代」への意気込み

 KDDIは、4月1日付けで代表取締役社長に就任した高橋誠氏の社長就任会見を開催した。高橋氏からは、今後のauが取り組む方向性やコンセプトを中心に語られた。

KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏

ライフデザイン戦略の修正

 高橋氏はまず、近年のauが取り組んできた「ライフデザイン企業への変革」というテーマについて、少し反省気味に振り返る。

 社内外で、通信事業から別の事業にシフトしていくのか? という疑問や誤解があったことや、「eコマースや金融、電気とか、無機質なキーワードでお伝えしてしまった」といい、シフトではなく“融合”であると訴える。その上で、ライフデザインとは前述のようなキーワードの集合ではなく、ユーザーの生活を楽しくする体験価値であると定義する。

通信とライフデザイン、シフトではなく“融合”

 「体験価値をどう提供するのか、これがライフデザイン」とし、この考えの上では、新規の分野の事業だけでなく、既存のエンターテイメントコンテンツなどもライフデザイン戦略の上で組み立てられることになるという。

 高橋氏は、IoTや5Gなど、通信事業でも新たな技術が登場しているが、こうした技術の発展でユーザーとの繋がり方も変容してくるだろうと予測する。同時に、ビッグデータの活用も、広告の最適化といったことにとどまらず、ユーザーを理解するための手段という考えを中心に据える。

 高橋氏は、一連の“ライフデザイン”への取り組みは、ユーザーと通信のまわりに、同心円状に広がっていると説明。ユーザーが通信を使うことで、ライフデザインの領域に(利用や利益が)広がり、さらに体験価値につながるという考えで、ライフデザインに“シフト”するのではなく、「通信とライフデザインを融合する」という考えであると強調した。

体験価値、ワクワクを提供

 IoTや5G、AIなどの新技術を迎える今を、高橋氏は「大変革時代」と呼び、「最新技術を体験価値に変換していく」と意気込む。「プロダクトアウト(提供者目線の製品)や約款に縛られていることも多いが、そうではなく、ユーザー目線でサービスを作っていく。5Gは低遅延などいくつか特徴があるが、(何がウケるのか)わからない。ユーザーと探していくことになる。大変革時代に全力で打ち込んでいきたい」と高橋氏は語ると、体験価値に注力している様子を伝える「“ワクワクを提供し続ける会社”へ」というテーマを披露した。

au WALLETの決済機能を強化

 高橋氏からは、上記のような戦略やコンセプトの説明が中心だったが、「ワクワク」の例では、今後の取り組みにも触れられた。まずeコマースサイトとして展開している「Wowma!」は、「eコマースだけをやるつもりはまったくない」として、体験価値を提供する入口として、さまざまな取り組みを行っていく方針。

 またこの日発表されているように、au WALLETプリペイドカードでサービスを強化、じぶん銀行と連携することで、リアルな店舗でもキャッシュレスを推進するサービスとして、さらに拡充していく。

 ほかにも、サッカーの本田圭佑選手が参加しているという、スポーツコーチとユーザーのマッチングビジネスへの参画のほか、xR(AR、VR)への取り組みも強化し、スポーツ観戦から遠距離恋愛まで幅広く取り組んでいく方針を明らかにした。

ビジネス開発拠点を虎ノ門に、200億円ファンドも

 より具体的な取り組みでは、東京・虎ノ門エリアに、IoT/5G時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を今夏にオープンすることも発表。KDDI傘下のソラコムを始め、データ解析に秀でた企業なども合わせて、単純なベンチャー支援にとどまらない、課題発掘からサービス化までをワンストップで提供する。

 またKDDIとして3つ目となる、総額200億円の新ファンド「KDDI Open Innovation Fund 3号」の設立も発表。ここでもソラコムやARISE analyticsなど有力な企業と連携して、ベンチャー企業を大きく成長させるファンドとして運用していく。

 高橋氏は最後に「プロダクトアウトではなく、ワクワクを提案し続ける。大変革時代を迎える中で、我々も、私自身もワクワクし続けていきたい」と語り、ユーザー目線の体験価値を本質と捉え、事業を推進していく方針を明らかにしている。

コンテンツサービスに新展開

 質疑応答の時間には、コンテンツサービスがほかのキャリアに「やられっぱなし」ではないかと指摘された。高橋氏は、「スマートフォンの世界になって、独自のコンテンツ(サービス)は苦労している。(社長交代で)体制も変わり、しっかりと取り組んでいきたい」と優勢ではないことを認める。一方で、「すべて自分たちで用意する必要はない。上位レイヤーと通信をいかにマージしていくか、ハイブリッドにつないでいくか、そういう勝負の時代になってくる。そういう提案をいろいろと考えているところ。乞うご期待です」とも語り、OTTの影響力が強い領域では、auとして新たな展開があることも示唆している。

(高橋氏の「高」は新字の「髙」)