ニュース

「Google Home」の土台にはグーグルの検索技術――キーパーソンが語るその強みとは

製品を紹介したグーグル ハードウェアパートナー事業開発本部統括部長の埜々内ルイ氏(左)とグーグル製品開発本部長の徳生裕人氏(右)

 米国で先駆けて人気となっているスマートスピーカー製品。その有力な製品のひとつとして、グーグルが「Google Home」を6日に発売する。より小型の「Google Home Mini」も23日に発売される予定。さらにはJBLからGoogleアシスタントを搭載し「Homeシリーズ」と同等の使い方ができると見られる製品も投入されることになった。

アドバンテージは「検索」が培った力

 AmazonやLINEもスマートスピーカーを投入する中、他社との違いは、いったい何なのか。5日に開催された記者説明会で、グーグル 製品開発本部長の徳生裕人氏は「得意とするのはやはり検索」と語る。

 Google Homeの中身、つまり人の声を認識し、文章化してその意図を解釈して適切な回答をするというクラウド側の仕組みは、すでにスマートフォン向けに提供されている「Googleアシスタント」そのものだ。そのGoogleアシスタントは、ユーザーがやりたいこと、知りたいことを手助けする存在、つまりエージェント機能として提供されているものだが、検索機能が進化したひとつの形態でもある。

 もしスマートスピーカーが自宅にあり、「〇〇をして」と語りかけた際、きちんと回答できなかったり、今はその機能がなく対応できなかったりすると、ユーザーはストレスを感じたり、利用回数を減らしたりする。徳生氏は「検索をずっとやってきたので、質問に答えるのは比較的得意な部分。音声認識や音声合成も、騒音のある環境下で聴き取るといった精度は、スマートフォンアプリの提供を通じて、長い時間をかけて開発してきた」と胸を張る。

 ユーザーが検索する際に入力するワードから、適切なWebサイトを探し出す。検索サービスの基本を積み重ねてきたからこそグーグルにはAmazonやLINEにはない強みがある、という主張だ。

音声操作の特徴はスピード

 報道陣からは、日本のユーザーが本当に音声で操作するデバイスを使うのか、という疑問の声が挙がる。同様の質問は、今年5月、スマートフォン向けの「Googleアシスタント」が登場した際にも投げかけられた。

 徳生氏によれば米国での検索数(クエリ)のうち20%が音声入力されたもの。日本の利用動向はそこまでではないが、それなりの頻度で利用されているのだという。米国と日本の利用動向の違いを生み出す根っこのひとつは「電車社会と車社会」(徳生氏)との見方がある中で、徳生氏は他人の存在が気にならない自宅では「電車などと比べ、はるかに使いやすいのでは」と説明する。

 また音声入力には「圧倒的な速さ」(徳生氏)という特徴もある。本誌がGoogleアシスタント開発者であるスティーブ・チェン氏にインタビューした際には(※関連記事)、「ボイス(音声)インターフェイスは、本当に魔法のような仕組みを実現できるインターフェイス。とても簡単に、たった一文で、内容をがらりと変えられる。いわばランダムアクセス」と解説していたが、その利便性があらためて認識され、徐々に知られれば、今後の普及の繋がるのではないか、と徳生氏は語る。

レンタルサービスの狙いは?

 10月6日からは、一部のTSUTAYAで、Google Homeのレンタルサービスがスタートする。利用料は1日800円(税抜)。利用できる機能は販売されるものと同じで、ユーザーがお試しできる環境として提供されることになった。

他の「made by Google」は?

 5日早朝には、米国でグーグルが手がけるハードウェア製品群の発表会が開催された。それらの製品が日本でも展開されるのか、という問いに「今日はHomeだけ」として、今後、日本で展開されることがあれば「タイミングを見て発表したい」(徳生氏)という。

他社との連携どうなる?

 AmazonやLINEなどもスマートスピーカーを投入し、AIエージェントを介してさまざまな企業のサービスや家電などを繋ぐという仕掛けがいよいよ日本でも利用できるようになってきた。各社が手がけるプラットフォームとの距離感を問われた徳生氏は「特定のプラットフォームについてはお答えできない」とする。一方、利用できるサービスや製品の拡充には意欲的で「基本的に1社だけでやっていくものではない。ユーザー価値を上げることができるのであればActions on Googleの連携は注力していきたい」と語る。

Netflixなどが利用できる

 Actions on Googleは、サードパーティがアプリを開発できる仕組み。今回披露された利用の流れでは、エージェントを切り替えて利用する形。たとえば「楽天レシピと話す」と語りかけると、楽天レシピのエージェント機能に切り替わって、レシピ検索できるようにする。

 こうしたサードパーティがGoogle Home対応サービスを開発しやすくするため、グーグルでは「API.AI」と呼ぶ仕組みを用意する。全ての質問を想定してユーザーとの会話の流れをきめ細かく事前に作り込むことはそもそも難しいため、グーグル側の仕組みにわずかな数の質問を入力すれば、問答の例を自動的に拡張してくれるのだという。

Actions on Googleで繋がる「楽天レシピ」のデモ

 ただ5日に披露されたデモでは、「楽天レシピと話す」「ヤフーマップと話す」とサードパーティのサービス名をユーザーが指定する、という流れだった。どんなサードパーティのサービスがあるのか、事前にユーザーが全てを把握するのは難しいのでは? という問いに徳生氏は「今の使い勝手がベストとは思っていない」と述べており、改善していく方針だ。また新たなサードパーティの機能が追加されれば、たとえばGoogle Homeそのものやスマートフォンアプリで通知する、といった形を考えているという。

 徳生氏は、こうした他社との協力あってこそ、Google Homeの利便性が拡がり、ユーザーの求めに応えられるようになる、と繰り返し述べていた。

徳生氏囲み取材、一問一答

 会見後、グーグルの徳生氏が囲み取材に応じた。主な一問一答をご紹介する。

――製品改善のスパンはどうなりますか?

徳生氏
 デバイスのファームウェアは定期的に進めていきます。クラウドサーバー側は、検索機能と連動しており、検索機能がアップデートされれば、あわせて改善されることになろうと思います。Googleアシスタントはまだ一歩を踏み出したばかりで、数年かけて改善を積み重ねていければと思います。

――スマートフォンアプリとしてGoogleアシスタントの日本語版が登場して以降、どんな改善がありましたか?

徳生氏
 (アシスタントが)話す声はどんどん自然になってきています。音声認識の精度も上がっています。ユーザーの利用傾向がわかってきて、答え損ねる場面も減ってきています。もちろん今の仕組みで全てのニーズに応えられるわけではなく、まだまだ先は長いです。

――Actions on Googleのパートナー企業がオリジナルの音声を使うことはできますか?

徳生氏
 今はできません。もし質問を想定して回答を作る、会話のパターンを全て作るというのは大変です。それを簡単に作れる「API.AI」という仕組みを提供しています。5個か6個くらい例を入れれば拡張してくれるものです。またGoogleアシスタントが担っている一番大きな部分は、(ユーザーの)声を聞いて、(回答用の)声を生成するという部分で、そこは当社の仕組みを使わざるをえないと言えるからです。今は4種類程度の音声を用意しています。

 ちなみにニュースは、Actions on Googleとは違う仕組みです。それでも自由に合成して、というわけにはいかないです。

――サードパーティの企業はどれくらいになると思われますか。

徳生氏
 今の段階では、発表したActions on Googleの企業のみです。まだ仕組みの提供を開始していないので、それでもやってくださるという方々になります。独占的な契約ではありません。Androidアプリみたいな形だと思っていただければいいと思います。最低限の審査をして、提供していただくという形になります。

――スマートスピーカーは利用が続かない、飽きやすいという指摘もあるようです。その一方で日本では競争も激化しそうです。

徳生氏
 (おそらくLINE社の発表を念頭に)今週はそんな感じですよね(報道陣笑い)。複数社が作るのは間違いなく良いことだと思っています。まだスマートスピーカーの真の姿は誰もわかりません。特徴的な機能が搭載されればマーケットが盛り上がると思う。

――競争力を高めるためにどこへ注力しますか?

徳生氏
 競争力というよりもユーザーのニーズがあるものを作っていくという姿勢でやっていきます。調べる、タイマーなどの支援、音楽、ホームオートメーションという4ジャンルが今は(ニーズが)見えているところかなと思います。

――呼び掛け方は「OK、Google」だけですか?

徳生氏
 「ねぇ、グーグル」にも対応しています。スマートフォンではまだ「ねぇ、Google」は未対応なので、今日のデモンストレーションでは「OK、Google」に統一しました。それでも遂に英語だけじゃなくなったということになります。