インタビュー

「Googleアプリ」の新機能“フォロー”の効果は? 新機能「New to You」の予告も

Googleプロダクトマネージャーのコルビー氏に聞く

 この夏、グーグルが提供するスマートフォンアプリ「Googleアプリ」に“フィード”と呼ばれる機能が追加されていたことをご存知だろうか? そして9月8日には新たに「フォロー」という機能まで追加された。

 フィード、フォローという単語は、スマートフォンやネット界隈では、どちらかと言えばFacebookやTwitterといったSNSで使われてきた。ところが「Googleアプリ」は、検索や、ユーザーの関心が高そうなWeb上のコンテンツへのリンクを表示するアプリだ。

 これまで「Google Now」として提供されてきた機能は、今夏「フィード」と名を変えて、この中でユーザーの好みにマッチするコンテンツを推測して配信してきた。フィードと名乗りつつ、「検索エンジンが進化した、その延長線上にある姿のひとつ」と語るのは、カレン・コルビー(Karen Corby)氏。米グーグルで検索機能のプロダクトマネージャー(Product Manager Google Search)を務める人物だ。

コルビー氏

ユーザーからアクティブに働きかけるフォロー

 新機能「フォロー」は、ユーザー自身が検索結果や、流れてきたフォローに対して「これは知りたい話題」「この芸能人は好き」といった場合に押すボタン。つまりGoogleに対して、自分自身の嗜好を伝えられるわけだ。

 これまでも検索だけではなく、ありとあらゆるグーグル製品の利用状況から、ユーザーの関心を予測し、コンテンツが配信されてきた。ユーザーにとっては、いつの間にか、適切なコンテンツに触れられる形。一方でフォローというアクションは、ユーザー自身が能動的に関心や興味があることをグーグル側に伝える。グーグルではかねてより機械学習に投資したり、コアテクノロジーを強化したりすることで精度の向上に努めてきたが、「フォローは『欲しい』シグナルを出せる機能。機械学習とあわせて、良いシグナルになり、具体的にこれが知りたいんだとグーグル側がより良く理解できるようになる」(コルビー氏)。

 たとえばある時、小説を読み、検索して著者に関して調べ、フォローしていたとしよう。時間が経って、その検索していたこと自体を忘れていたとしても、もし映画化など新しい動きがあれば、フィードで紹介してくれる。グーグルが「ユーザーの関心のあったことを覚えていてくれる」というわけだ。

 最近では、飲食店情報やショッピングなど、ユーザーが関心を持つ分野ごとにサービスがあり、アプリがある。そうした他社サービスの情報についてはグーグルが得ることはできない。それでもコルビー氏はグーグルのさまざまなサービスを利用していれば、ユーザーの関心事を把握できると説明する。

深彫りし、連携するコンテンツ

 フィードやフォローにあわせて「Dive Deeper」(より深く)と名付けられたコンセプトも採り入れられている。これは、フィードで配信されるカードから、別のサイトや関連するサイトへ誘導する機能。たとえば、ある映画作品では、予告編に案内したり、レビュー記事などへアクセスしたりできるようにする。

 重要なニュース記事の場合は、「多角的な視点から知ってほしい」(コルビー氏)ということで、ファクトチェック(事実確認)ボタンがかねてより導入済だ。こうした機能もまたより深くコンテンツへ誘導する仕掛けと言える。

新機能「New to You」とは

 コルビー氏が「Googleアプリ」でこれから導入する新機能として紹介したのが「New to You」だ。これは、Web上にストックされている情報から、ユーザーにとって有意義なものをあらためて紹介する、というもの。

 と書くだけでは想像しづらいかもしれない。コルビー氏は自身の経験として次のように語る。

コルビー氏
「今度、私はスイスへ旅行に行くんです。サイクリングが好きなので、チューリッヒでサイクリングする、という記事があれば今の私にとってタイムリー。でも、その記事が10カ月前に配信されていたものだったとしたらどうでしょうか。10カ月前の私であれば関心を持たなかったでしょう。こうした状況の変化は、たとえば子供ができて新たに親になる人といった場合にも役立ちます。今まさにロールアウト中の機能です」

Googleアシスタントとの違いは?

 最近話題の機能や製品と言えば、スマートスピーカーやAIが挙げられる。グーグルで言えばGoogleアシスタントがそうしたジャンルのプロダクトのひとつだ。

 Googleアプリにおけるフィードやフォローといった機能は、Googleアシスタントで提供しようとする機能、体験とどう違うのか。この問いにコルビー氏は「確かに混乱するかもしれない」と認めつつ、「フィードはユーザーが中心にあって、関心のある情報を提供するもの。フィードとサーチ(検索)を繋げ、情報を提供する手法だ」と説明する。

 これに対し、Googleアシスタントは、ユーザーが知りたいこと、やりたいことを助けてくれるもの。検索だけではなく、アラームをセットしたりメモを取ったりするなど、具体的なアクションをしてくれる。コルビー氏は将来的な連携として、たとえばGoogle Home(Googleアシスタント)でチョコレートケーキのレシピを検索すると、後日、関連情報がフィードで配信されるといった機能の実現を目指すとも語る。

検索をさらに進化させる

 グーグルが検索サービスを提供しはじめてから20年。グーグルとしては「人々に興味ある情報を提供する」という大枠に変化はないものの、スマートフォンの普及や、よりインタラクティブ性のある機能などユーザーが求める内容は変わってきた。

 フィード機能、そして今回のフォローといった機能は、今どきのニーズに対応しつつ、検索エンジンをより進化させた形とコルビー氏は位置付ける。スマートフォンに加えてGoogle Homeのようなデバイスが今後、日本にも登場するとされる中、グーグルが取り組む「Webにある情報と人を繋げる仕掛け」がどんな使い勝手になっているか、ひとまず手元のスマートフォンにある「Googleアプリ」を立ち上げて、フィードを味わってみるのはいかがだろうか。

ユーザーが検索しない間でも情報を配信してくれるのが「フィード」だ(keeping you in the know even when you are not searching)