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「Pokémon GO」で復興観光のきっかけ作り、国がナイアンティック招くも質問ゼロ
2016年11月11日 14:11
11日、政府(各省庁)が手がける事業内容をチェックする「秋の行政事業レビュー(年次公開点検)」に、ナイアンティック日本法人の村井説人社長が登場した。ところが質疑応答の時間では、観光庁の事業方針に質問が集中し、村井氏への質問がまったく寄せられないという展開になった。
毎回5000人が参加するIngressのイベント
“Adventure on Foot(歩いて冒険する)”という理念を掲げ、スマートフォンアプリを開発する米ナイアンティック。
スマホに限らず、日本国内のあらゆる商品・サービスのなかでも、今年一番のヒットとされる「Pokémon GO」は、さまざまな場所を訪れてアイテムを入手し、ポケモンたちをゲットしていくゲーム。日本でのローンチからわずか2週間あまりで、岩手県、宮城県、福島県、熊本県とコラボレーションが発表されており、“復興観光”のきっかけ作りに寄与している。
またナイアンティックでは、まもなく4周年を迎えるスマホゲーム「Ingress」において、世界各地でイベントを開催。その参加者数は平均で、毎回5000人前後に達している。日本、特に東北の事例として、村井氏は2015年6月に実施した東北(仙台での参加者同士のバトルイベントとその翌日に東北各地で行われたスタンプラリーイベント)で、のべ6800人以上が参加したと説明。今春、東北で実施したIngressのイベントは、ポータルと呼ばれる街中にあるアートや公園などを申請・登録する内容で、そこには1700名が訪れた。
村井氏への質問挙がらず
「被災地の観光促進」をテーマにした回に参考人として招かれた村井氏。ところが、観光庁の事業内容を検証する内容でもあって、有識者からの質問は観光庁への方針に集中し、村井氏への質問はゼロ。「行政事業レビュー」としてナイアンティックの取り組みを深掘りするには至らなかった。
とりまとめのコメントとして、立教大学大学院の亀井善太郎特任教授は「観光庁の説明は、数字を分析してどう考えるかコメントを得られなかった。分析能力に疑問がある」とバッサリ。会合後、あらためて質問したところ「大事なことは地域資源を点で考えると言うこと。観光庁は面(ここでは被災地全域、大枠といった意味)で考えている。Pokémon GOきっかけでもいいから地域にあるもの(資源)を探していくということではないか」とコメントした。
村井氏に聞く
会見後、あらためて村井氏を直撃した。ナイアンティックは、各地の自治体などとすでに動いていることから、そうした具体例を聞かせて欲しい、ということで参考人として招かれたそう。
村井氏
「ナイアンティックが提供するリアルワールドゲームは、人が動くことが大きなポイント。会合では集客するための予算の取り扱いについての話があったが、まさにナイアンティックはそこの部分を手がけている。Pokémon GOを、Ingressを遊ぶだけで、気付いたら東北を訪れている、といった今までにない体験をユーザーの皆さんに提供できることが特徴。明日12日には宮城県でイベントが実施されるが、現地を訪れることで、もちろんPokémon GOを楽しみつつ、その場だけにある魅力的なものに触れて、その地域のことを知ることができる。帰ってきたら、その体験をSNSで拡散したり、家族に伝えたりして、他の人を誘う。そうしたコラボレーションが被災地各県と進められればと思う」
明日12日には、宮城県と宮城県観光連盟が主催するイベント「Explore Miyagi」が開催される。石巻市や東松島市、女川町、南三陸町で開催されるもので、ナイアンティックと被災地4県のコラボ企画第1弾に位置付けられる。12日のイベントではアイテムを得られる「ポケストップ」をユーザー自身の手で申請、ゲーム中に追加できる。このイベントで追加されるポケストップは、「Ingress」にも反映される。
あわせて「Pokémon GO」では、11日~23日まで、岩手県、宮城県、福島県の沿岸部で、レアな人気ポケモン「ラプラス」が数多く出現しているという。
明日のイベントは宮城県主催、この「ラプラス」出現率アップは3県にまたがるものということで、取り組みとしては別のもの。村井氏は「たまたまタイミングがあった」として、「ラプラス」出現率アップも観光復興という同じ大枠の中でも取り組みになると説明。「現地を訪れるきっかけ作りが一番難しい」としており、「ラプラス」もそうした仕掛けのひとつのようだ。