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石川温がレポートする「Lenovo Tech World 2016」

「Moto Z」日本発売は「前向きに検討」

 レノボは6月9日(米国時間)、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコにおいて、メディアやファン、パートナーなどを集めて「Lenovo Tech World 2016」を開催した。

 昨年は中国・北京での開催だったが、同社としては中国企業というイメージを払拭したいのか、シリコンバレー発の情報発信にこだわったようだ。

「Moto Mods」のデモを披露するYang YuanqingレノボCEO

 基調講演では、同社の主力事業であるデバイスとクラウドを中心にビジョンや新製品が語られた。レノボCEOのYang Yuanqing氏は「私が言うのはなんだが、すでにパーソナルコンピューティングは廃れている」と断言。デバイスだけでは不十分と言い、デバイスとクラウドをつなぎ合わせることで、イノベーションを続けていきたいと語る。

「Project Tango」改め「Tango」初の対応スマホ「PHAB2 Pro」

 モバイル関連では2つの新製品が発表された。1つ目は、5月に開催されたグーグルの開発者向けイベントであるGoogle I/Oで、このイベントで正式発表されると予告されていた「Project Tango」対応スマホだ。リアカメラ、モーションカメラ、深度カメラの組み合わせにより、被写体を立体的に捉えることができる。

「PHAB2 Pro」は、人の眼のように立体的な被写体を認識することができる

 そもそも、レノボがProject Tangoに関わるようになったのは「ARやVRのデバイスは、今後5年で急成長する。幅広く普及するには生活に直接、関連しなくてはいけない。グーグルと手を組んだとき、世の中に当たり前に普及するものにしたかった」として、OculusやHTC Viveのような専用デバイスではなく、誰もが持ち歩くスマホによる開発を望んだからだという。

グーグルとのパートナーシップを説明するAndroid & Chrome コンピューティングビジネスグループ、Jeff Meredith氏

 登壇したレノボ Android & Chrome コンピューティングビジネスグループのJeff Meredith氏は「この会場に来る際、Google Mapsでホールの住所を入力したはずだ。徒歩、自転車、バスやUberで来たと思うが、そのとき、スマホのGPSが素晴らしいとは思わなかったのではないか。スマホのGPSはマップアプリにより、毎日使うツールになった。私はTangoをGPSと同じように普及させたい」と抱負を語った。

 基調講演では、グーグルの開発責任者であるJohnny Lee氏がデモを実演。新たにドミノアプリが開発され、机や床の状況を把握し、画面上で見ると、机の上にドミノを並べることができ、さらに倒して遊ぶといった様子がデモされた。

 さらに、アメリカのホームセンターである「Lowe's」のアプリを紹介。デモンストレーションではアプリを使って自宅の部屋を立体的に認識し、画面上で、床の色や素材を変えたり、家具を配置したりするといったシミュレーションを実演した。

机の大きさを認識し、机の上に恐竜を表示させるアプリ
リアカメラ、深度カメラ、モーションカメラによって立体的な被写体を認識する
グーグルやクアルコム、インフィニオンなどの協力により製品化された

 これまで、グーグルの先端開発部門では「Project Tango」という名称で開発が進んでいたが、「プロジェクトと呼ぶのはふさわしくない。これからはTangoという名称にする」(Johnny氏)として、Tangoが正式名称となった。

 世界初のTangoスマホとなるPHAB2 Proのスペックなどは別項の詳細記事を参考にして欲しい。

6.4インチのファブレットサイズとなる「PHAB2 Pro」
PHAB2 Proの下位モデル「PHAB2 Plus」、Tangoには非対応

再起動せずに周辺機器を装着できる「Moto Z」と「Moto Mods」

 もうひとつ、発表となったのがモトローラブランドのフラグシップモデルとなる「Moto Z」「Moto Z Force」だ。スマホに加えて、様々な周辺機器を装着できる「Moto Mods」という規格も発表された。

スタンダードなモデルとなるMoto Z
高いところから落としても壊れることのないというMoto Z Force

 Moto Zは5.5インチのQuad HD AMOLEDディスプレイを搭載。チップセットはクアルコムのSnapdragon 820となる。RAMは4GB、ROMは32GBか64GBを選択できる。メインカメラは13メガピクセル、フロントカメラは5メガピクセルとなる。高速充電技術「TurboPower」により、15分で8時間分の充電が可能だ。

 一方、Moto Z ForceはMoto Zの一部機能強化版だ。Moto ShatterShield技術により、高い場所から落下させても割れない、強靱な筐体設計となっている。カメラは21メガピクセルとなり、レーザーオートフォーカスと位相差オートフォーカスの両方に対応。TurboPowerにより、15分で15時間分の充電が可能だ。

 いずれも新規格となる「Moto Mods」により、様々な周辺機器を装着できるのが特徴だ。

 Moto Z、Moto Z Forceの背面には16個の端子が備わっており、JBl製スピーカーやバッテリーパック、最大70インチの映像を表示できるプロジェクターをマグネットで装着できるのだ。自分の欲しい機能を手軽に装着できるのが売りとなる。

左から電池パック、プロジェクター、スピーカー
Moto ZにはMoto Modsのために16個の端子が埋め込まれている
JBL製のスピーカーを本体背面に接続。想像以上の大音量を楽しめる
バッテリーパックも背面にマグネットで接続可能だ
kate spadeモデルのバッテリーパックも用意される

 様々な機能を付け替えられるスマホは、最近ではLGエレクトロニクスが「LG G5」を発売済みであるし、また、グーグルが「Project ARA」という名称で製品化の準備を進めている。

 LG G5がバッテリーパックを取り外し、Project ARAがブロックを付け替える仕様であるため、いずれも新しい周辺機器を装着するときには再起動が必要になるのが欠点とされている。しかし、Moto Modsではマグネットで装着するだけで、電源をオフにしたり、再起動することなく、機能追加が可能となる。たとえば、本体だけで音楽を再生し、多人数で聞きたくなったら、音楽を止めることなく、スピーカーを装着して、大音量で楽しめるというわけだ。

 レノボでは開発者や企業にMoto Modsの仕様を公開し、対抗製品を開発できるような環境を整備する。スタートアップには100万ドルの賞金を用意して、開発を後押しする考えだ。

プロジェクターは最大70インチまで表示することが可能だ
スピーカーはスタンド付きで立てて視聴できる
Moto Modsでは背面にパネルを装着することもできる
「Moto Z」をアピールするソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのSeang Chau氏
米国ではVerizonからMoto ZのDroidバージョンが発売となる

 モトローラのソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるSeang Chau氏は「これはモトローラがStartacやRAZRで取り組んできたアプローチの発展系と言える。スマホを薄く、軽量にする最良の方法だ」と胸を張る。

 Moto Zは薄さ5.2mmというもう1つの特徴もあるが、実はイヤホンジャックが存在しない。USB Type-C端子で充電だけでなく、イヤホンも挿入するようになっている。イヤホンジャックを廃止することで、薄型化を実現したかったようだ。

 米国ではVerizon独自モデルとして「Moto Z DROID Edition」、「Moto Z Force DROID Edition」が今夏に発売となる。通常モデルはベストバイやオンラインで取り扱われる予定。

レノボ アジアパシフィック スマートフォンビジネス担当バイスプレジデントのDillon Ye氏

 グローバルでは9月から発売となる。いずれも本体と共にMoto Modzも取り扱われるという。

 ちなみに日本展開だが、レノボ、アジアパシフィックのスマートフォンビジネス担当バイスプレジデントのDillon Ye氏は、「日本は世界でも7番目に大きなスマートフォン市場と言える。9月以降の発売に向けて前向きに検討したい」と語った。