インタビュー
MWCで見た「Galaxy S6 edge」と「Galaxy S6」
MWCで見た「Galaxy S6 edge」と「Galaxy S6」
法林、石川、石野が振り返る
(2015/4/3 11:10)
世界最大のモバイル関連イベント・Mobile World Congress 2015(MWC)が今年も3月2日~5日にかけてスペイン・バルセロナで開催された。その模様は本誌の既報通りだが、中でも注目されていたスマートフォンがサムスンのGalaxy S6/S6 edgeだろう。MWCの取材を終えて落ち着いた某日、法林岳之、石川温、石野純也の3氏に改めてMWCと新しいGalaxyについて振り返ってもらった。
生まれ変わったGalaxyがスマホを再び面白く
――皆さんMWCの取材、お疲れ様でした。最近のMWCでは携帯電話の新機種が話題に上ることは少なくなりましたが、今年はGalaxy S6 edgeが目立つ存在でした。そのあたりを中心にMWCを振り返ってもらえますか?
石川氏
たしかにサムスンの話題が中心になっていましたね。サムスンが元気ならMWCも盛り上がる、というね。正直、サムスンはここ数年Galaxyのデザインが保守的になっていたように思う。知り合いのライターさんだったかなあ、その人が言っていたんだけど、某キャリアのように「何でも入り」というか。
――総合商店化している感じですね。
石川氏
そうそう。
石野氏
それ自分で言ったんじゃないですか?(笑)
一同
(笑)
石川氏
いやいや、すごいこと言うなって思ったんですよ(苦笑)。だけど他のメーカーがやっていることを全部取り入れている感じがして、サムスンらしさを感じなかったんですよね。
一同
(うなずく)
石川氏
だからその失敗、反省をしたのでは。今回はGalaxy S6 edgeは良いモノができたし、メッセージも、たくさん言えることがあるけど、そぎ落として言いたいことを厳選していた。その発表会を日曜日の夜に行ったから、MWC全体の活気も出て良かったと思う。
石野氏
個人的には今年のMWCはインフラの変わり目に関心がありましたね。5Gとか。グローバル全体でもスマホ市場が成熟しつつある。普及期に入っているのでミッドレンジの端末が多いのは仕方ないかな、と思いますね。そのなかでGalaxy S6 edgeが目立っている。GalaxyはたしかにS4あたりから、ちょっとおかしい気がして、やたら利用シーンを訴求することが多くなって。もちろんそれは大切なことなんだけど、アップルの後追いのようにも感じてしまった。Galaxyの魅力ってなんだっけ? となっていたところに、今回原点回帰したように思いますね。分かりやすいメッセージですよね、「格好良くて高性能」という。Galaxy S6 edgeは端末のクオリティが非常に高くて、ひと目で欲しいと思いましたから。こういう体験は結構久しぶりですね。サムスンが頑張っているのを感じましたし、頑張らないと大変なんだろうな、という。
――法林さんはどうです?
法林氏
端末は、昨年はエントリー向けが多かったんだけど、今年はミッドレンジなので拡大ゾーンに入りましたね。その中でサムスンがきちんとフラッグシップを出して、従来とも一線を画すモデルを出してきた。キャッチコピーに「WHAT'S NEXT」、「NEXT IS NOW」とあって、「生まれ変わった」感を出そうとしているし、実際Galaxy S6/S6 edgeはその言葉にふさわしい仕上がりです。「またスマートフォンを面白くしてくれるサムスン」という感じがしましたね。それを面白おかしくしているのではなく、ちゃんと王道を行っている。着脱する電池やワイヤレス給電とか、賛否がある部分もあるけど、技術的に難しいことをやっているし、良いアプローチだと思うね。これまでのしがらみを捨てている感じがする。
――microSDカードスロットも、バッテリーの着脱も無くなり、賛否が絶対出るところを、あえてチャレンジしている気がしますね。
石野氏
うん。
石川氏
まあ、microSDカードとバッテリー部分は拒否反応出るでしょうね。そこが一番サムスンらしいところだったわけだから。だけど、それでもデザインが良いほうに、というのは良い試みですよ。
石野氏
もう一つ、「Samsung Pay」も凄い技術だと思いますね。もともとは買収先の技術なんですけど、Apple Pay対抗かな。磁気カードをそのまま登録してそのまま決済できるという。グローバル展開も早そうだし、日本で始めてほしいな、と思う良い技術でしたね。
――日本でプラットフォームとして展開できそうですかね?
石野氏
磁気情報をそのまま使っているのだから、技術的にはやれるでしょうね。
石川氏
ただグローバルと比べて日本では難しい。サムスンも本腰を入れてやらないと普及させるのは難しいだろうね。
――クレジットカード会社をはじめ、どこかと組まないと難しいでしょうか。
石川氏
そうなんだけど、クレジットカード業界はものすごい村社会だと聞くからね。
法林氏
超が付く村社会だと言うね。
エッジスクリーンは前機種よりも「意味が無い」から良い?
――Galaxy S6とGalaxy S6 edge、2機種のうち注目度的にはディスプレイが曲がっているedgeのほうになりますが、両端がエッジスクリーンというのを見てどう感じました?
石川氏
前のGalaxy Note Edgeはエッジに意味を持たせていたと思うんですよ。アプリのショートカットとか。実際にNote Edgeを使っていると、無くてもいいのかな? と感じてしまう。機能的にこれはどうなんだろう? とか。だけどGalaxy S6 edgeを見ていると、曲がっていることに意味は無いと思うんです。ただ「なんか格好良い」という。だからこそよくできている。直感的に格好いい。ワクワクさせてくれる。あれでいいんですよ。サムスンの技術のアピールになっているし、それに似たような端末が無いから、選択肢も一つしかないし。
石野氏
Galaxy Note Edgeを実際に使っていても、エッジスクリーンはほぼランチャー状態になっています。ただ、ノートの外観として片面がエッジスクリーンというのはアリだと思うんですよ。残念なのが、Galaxy Note Edgeのときはエッジスクリーンがオマケのように扱われていたこと。逆に今回のMWCのサムスンのプレゼンを見ていると、Galaxy S6 edgeが主力だと感じました。
――ああ、日本ではGalaxy Note Edgeしか出てないですけど、グローバルでは変な市場ができてしまったかもしれませんね。
石野氏
そうなんですよね。Galaxy Note EdgeのときはGalaxy Note 4があった上でのEdgeですから。実際、Note Edgeは販売している国が少なく、アクセサリーも少ない。ただ今回のGalaxy S6 edgeはどうみてもメインだから。石川さんが仰っていたようにパッと見「曲がっているのが格好いい」というね。その訴求はいいと思いますね。スマートフォンって正面から見た時の差別化ってすごいしづらいから、あのデザインはアリだなと思いましたね。それと画面サイズのわりに単純に持ちやすいとも感じました。S6とS6 edgeで持ち比べてみましたが、S6 edgeのほうが持ちやすい。大画面だけど持ちやすい、狭額縁のような効果があるのかな、と。エッジの新しい使い方だと思いましたね。
法林氏
MWCのときに石川さんと飲みながら話していたんだけど、「2つ並べた良さ」というのがあると思う。Galaxy S6 edgeのほうが先鋭的でとんがっている。先進的だけど、edgeのほうが手を出しづらいと思うんですよ。そこに従来型のフラットなS6も出して、選択肢を提供している。それとedgeは端が薄いので「持ち味」が違うんですよね。これが今までのスマホと比べて珍しいかな。最近のスマホは液晶面がフラットで、裏側にカーブしているのが多い。edgeはちょうどそれを反対にしたようで、持ったときのイメージが新しい。
――日本でもS6とS6 edgeの2機種を出してほしいですよね。
石川氏
選べる自由として2機種出してほしいですね(笑)。
一同
(笑)
石川氏
だけど真面目にドコモはGalaxyシリーズの既存のユーザーがいるし、auは新しいところを取っていくためにも、やはり2機種いると思うんですよ。
――ボディのカラーはどうですか?
石野氏
本当にキレイだった!
――でも写真に撮りづらいんですよね……。
石野氏
ピントが合わない(苦笑)。
石川氏
このカラーもそうだけど、すべてが変わったよね。かつてのサムスンとは別の会社みたい。
――Galaxyのロゴも変わりましたよね。
石川氏
そうそう。
石野氏
だけど、蒸し返すけど、僕はmicroSDカードのスロット無しはやり過ぎのように思うんだけど。
――何か代わりにソリューションを用意してくれないと、ということですか?
石野氏
そう。今、128GBや64GBのmicroSDカードを挿して使っているので、機種変更したときは、microSDカードの挿し直しだけで、画像なんかのデータを一発で移せるメリットがあるんですよ。それができないと面倒くさい。GoogleのNexusシリーズもそうだけど。防水はどちらでもいいけど、microSDカードスロットを搭載してほしかったなあ。
法林氏
その辺は考え方がいろいろあるよね。スマホの写真データをPCにバックアップしているだろうか? Androidのスマホを普通に設定していると、Googleのクラウドに上がっているじゃない。
――そうですね。
法林氏
Dropboxやオンラインストレージにアップロードもされるので。メールもそうだけど、次の時代へ進むにはこうせざるを得ないという気がしたね。まあ、サムスンのPCソフト「Samsung Kies」の使い勝手がいまひとつなので、課題はあるんだけど、新しいチャレンジは悪くないよ。microUSBを使ってカードリーダーをつなぐこともできるわけだし。
――まあ普通はmicroSDカードの差し替え自体少ないわけだし、機種変更の時にどうフォローするかですよね。
石野氏
あとは本体のストレージ容量ですよね。もう50GBくらい使っているから。
――そういう人もそろそろ出てきますよね。
石野氏
本体容量は数種類発表されているけど、容量別で価格を大きく変えるアップル商法は好きじゃないし、128GB版があるけど日本でちゃんと出るか。出ても高価なのか。
石川氏
だけど時代はプレミアム4Gだから。
一同
(笑)
石川氏
これから5G時代にもなっていく中で、microSDカードがいらなくなる流れも当然あるでしょう。デジカメも本体メモリーを大きくするか、クラウドにアップするという。
――あまり大きく報道されてはいませんが、サムスンとマイクロソフトもつながっているようで、そのあたりが密になっていくと、また面白そうですよね。
石野氏
だけど50GB分の画像があると、クラウドへアップロードするだけで通信が制限される(苦笑)。
――そのあたりは数日に分けて(笑)。
石野氏
それが面倒くさいわけですよ。だからインフラ側ももっと頑張ってもらわないと。
オートで料理がキレイに撮れるGalaxy S6のカメラとは?
――発表会ではiPhone 6 Plusとの比較をしていましたが、とくにカメラの印象はどうですか?
石野氏
Galaxyシリーズは従来もそうだけど、相変わらずピントが速いよね。
――起動時間も速くなっているようですね。
法林氏
普通の人の感覚でいう、ホームキーでカメラが起動するのがものすごい便利。起動時間そのものも早いし。だけどUIは印象が無いんだよなぁ。
石野氏
まあシャッターを押すだけですからね。
――オートで何でも撮れる感じはしますね。
石野氏
プロモードにするとシャッター速度が変えられるとかね。
法林氏
そうそう。
石野氏
Galaxyのカメラは最近キレイですよ。Galaxy Note Edgeもそうなんですけど。メシウマモードもあるし。料理が美味しそうに見えるんですよ。
石川氏
本当ですかぁ?
石野氏
撮り比べしたから本当ですよ(笑)。
石川氏
石野さんが撮ると料理がまずく見えるから(笑)。
一同
(笑)
石野氏
色鮮やかに、発色を良くする効果がありますね。他社のスマホとかを見ていると、カメラ屋さんの発想なのか、料理をキレイに撮ることを考えていないように感じることがありますよね。
石川氏
そうだね。屋外でズームを使って、という性能をメインにするからかな。
――Galaxy S6/S6 edgeにはインカメラでパノラマを撮影する機能とか、スマホのカメラの流れを読んでいるというか、新しい動きもありますね。
石野氏
ぐるぐる立体的に撮れるという機能ですね。楽しそうですよね。今っぽい。
石川氏
撮って楽しいというところも、押さえているのがいいよね。スペックだけじゃない。ユーザーのことを分かっている。
スペックだけではないサムスン&Galaxyの変わった部分
法林氏
今回のサムスンの発表会を見ていて思ったんだけど、ハイスペック、フラッグシップの端末を出しているわりには、言っていることは「お客さんが使ってどうなの」という。
――そうですよね。オクタコアであることもサラッと。
法林氏
うん、そのわりにiPhoneと比べてここが違う、とも言っていて、本当にGalaxyの見せ方が変わったな、と。数値、定量的でなく、実際に使ったらこちらが便利でしょという言い方をしている。
石川氏
日本のメディアからすれば、Galaxy S6/S6 edgeのカテゴリー6対応が注目で、あの端末が日本にきたらどうなるの? というのが気になったんだけど、発表会ではほとんど言っていないよね。その辺も今までと違う。
――そういえば「お外サムスン」とか言ってましたね。寒かったですし。今年は仕切りもスムーズでしたし、MWCの会場でも一般展示ゾーンに端末を並べていましたよね。
石野氏
やればできるじゃん、と(笑)。
石川氏
だから昨年までは迷走していたんだろうし、コミュニケーションを主催者側ととれていなかったのでは? そういう意味では今年は良かった。一般にも見せやすいし、メディアも撮影がしやすかった。
――その撮影ブースで、石川さんは現地からニコ生の中継もしていましたね。
石川氏
あそこでニコ生できるとは思わなかった(笑)。許可は取っているんですよ。通信速度もめちゃめちゃ速い。90Mbpsくらい出ていた。
――細かい機能で言うと、指紋センサーがありますね。
石野氏
ああ、指紋センサーが段違いの精度になりましたね。Galaxy Note Edgeでは狙いすましてしっかり指をスライドさせないと解除ができないんですよ。Galaxy S6 edgeではiPhoneと同じように指を置くだけでロックが解除されます。指紋センサーを使う気になりますよ。
――着実に進化していますね。
石川氏
端末はしっかりしているんだから、あとは日本でちゃんと売って欲しい。
――ワイヤレス給電はどうですか、QiとPMAに対応していますが。
石川氏
日本市場では今さら感が半端無いけど、尻すぼみになっていたので盛り上げてほしいですね。空港だけでなく、いろんなところで使えるようにしないと。
石野氏
Nexusは対応しているのに、意外と広まらない。
法林氏
気付いたらもうチャージャーが無いよね。
石野氏
最近は急速充電と比べるから遅く感じる。
石川氏
うんうん。
法林氏
ただ日本をベースに充電環境を考えるのではなく、海外で使えるようにしてくれるだけでも便利だし。米国では増えているよね。
石野氏
スターバックスとか。
法林氏
あとは日本版にワイヤレス給電が搭載されるのかな? という心配がある。
石野氏
そうですよね、おサイフケータイとの干渉とか。
――ところで、Galaxy S6とGalaxy S6 edgeはどちらがどういうユーザー向けか、分けることってできますかね?
法林氏
先ほど言ったようにとんがっている人は、Galaxy S6 edge、とんがっているのが嫌ならGalaxy S6。だけどそうは言っても、普通のGalaxy S6も従来のモデルと比べてフレームも変わったし、かなりデザインが違う。新しいもの買った感はすごくある。どちらも販売されるのなら、好きなほうを選べばいいと思う。
石川氏
Galaxy Note Edgeのときと違って、今回は2機種見比べて決められるので納得感がある。だけどやっぱりメインはedgeのほうかな。
石野氏
スペックがほぼ同じだし、見た目で好きなものを選んでいいと思いますよね。選べれば、ですが。
LTEはカテゴリ6ーに期待
――Galaxy S6 edgeには、エッジをスワイプして呼び出せるコンタクトリストがありますよね、このあたりは仕様を公開してくれたら面白いですよね。
石川氏
LINE連携とかできるとね。
石野氏
あとは細かい機能だけど、裏にして置いといて光るのはいいね。5件しか通知表示しないのは少ないけど。
石川氏
そもそも裏にするかなあ?
法林氏
それは電話がきたときに裏にして音を止めるところから考えているから。
石川氏
あぁ、なるほど。ただガラス面を接地するのはねぇ。
石野氏
だけど裏表、どちらもガラス素材ですし。カメラが飛び出しているのが、若干気になるかな。
――これだけカラーや塗装にこだわっていると、アクセサリやカバーはどうなんでしょうね。着けると魅力が半減とか?
石川氏
それはスマホメーカーすべてが抱えている課題。デザインで差別化したいけど、結局みんなカバーしちゃう。とくに日本市場はね。スマホの曲がり角が来た気がするなあ。
――皆さんは買うならGalaxy S6 edgeですか?
一同
(うなずく)
石川氏
ワクワク感あるスマホだなという感じがする。人に自慢したくなる。非常にいい端末。
石野氏
サクサク動くしね。
――チップセットやメモリーまわりが新しいので、パフォーマンスも良いですよね。
石野氏
いろいろアプリを動かしてみたんですけど、ストレスは感じなかったですね。
――今回は自前のチップセットですが、省電力をうたっていますね。従来だとパフォーマンスをアピールしていましたが。
石野氏
14ナノメートルプロセスの優位性が強いというのはあるでしょうね。
法林氏
あとはLTEのカテゴリー6を早く使いたいね。
石川氏
グローバルでは対応しているというから、日本でも使えるはず。となれば日本初のカテゴリー6対応スマホになる?
法林氏
カテゴリー6自体は、日本でも対応できる環境はあるからね。
――どのキャリアから出てくるか、というのもありますよね。3キャリアから出てきてもおかしくはない。となるとキャリア側のネットワーク対応にも期待したいですね。
石野氏
今のLTEに不満があるわけではないんですけどね。
石川氏
ネットワークの最先端を体験できる、という意味でもお勧めの端末だよね。昔は最先端のスペックというとGalaxyだったけど、それに飛びついたユーザーは多かったと思うんですよ。だけど代を重ねるうちにその先進性が失われてきた。Galaxy S6/Galaxy S6 edgeでもう一度先進性を感じられると思う。
――国内発表に期待ですね。皆さん、お忙しい中ありがとうございました。