石野純也の「スマホとお金」
楽天モバイルの料金プランに“待った”をかける、povoの新たな「使い放題(7日間)12回分」「300GB(90日間)」徹底解説
2024年5月2日 00:00
5G時代に入り、ネットワークのキャパシティが上がったこともあって、各キャリアとも、データ容量が無制限の料金プランを導入しています。中でも料金が安いのは、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」。Rakuten最強プランは段階制の料金体系を採用しており、20GBを超えたあとはデータ容量が無制限になるにも関わらず、金額は3278円しかかかりません。データ通信が使い放題の料金としては、まさに“最強”と言える水準です。
このRakuten最強プランの最強ぶりに、“待った”をかける料金プランが登場しました。povo2.0が新たに導入した、2つのトッピングがそれです。1つは、「使い放題(7日間)12回分」。もう1つが、「300GB(90日間)」です。
2つのトッピングは、いずれも料金が9834円ですが、1カ月ぶんの料金水準は楽天モバイルと同レベル。ここでは、その特徴やメリット、デメリットを分析していきます。
1カ月超の使い放題トッピングが月3278円に、長く使えば割安感もアップ
povo2.0に加わった2つのトッピングは、いずれもデータ容量無制限を志向したもの。「使い放題(7日間)12回分」は、文字通り、適用されている期間のデータ通信が無制限になるのに対し、「300GB(90日間)」も、1カ月あたり100GBと大容量のため、スマホ単体であれば、あまり残量を意識することなく利用できます。内容的には違いがありますが、目的はほぼ同じと言っていいでしょう。料金も9834円で統一されています。
9834円という金額が目立ってしまうため、一瞬、割高に見えてしまうかもしれませんが、回数や期間が通常のスマホの料金プランとは異なります。一般的なスマホの料金は1カ月単位で課金されるのに対し、povo2.0のトッピングはさまざまな期間で区切られています。「使い放題(7日間)12回分」であれば1回あたり7日間、「300GB(90日間)」であれば90日間、その容量が適用されます。
比較のために1カ月に近い期間でそろえると、前者は28日間(4週間)で3278円、後者は30日間、100GBで3278円になります。この金額は、楽天モバイルのRakuten最強プランで20GBを超えたときとまったく同じ金額。オンライン専用ブランドとはいえ、大手キャリアが直接提供する通信サービスの価格としては、“破格”と言える安さです。
細かいことを言うと、povo2.0のトッピングは7日間と表記されている場合、トッピングの終了日の23時59分59秒まで利用ができ、時間単位の厳密なカウントをしているわけではありません。初日のトッピングを日付変更直後に適用すれば、記載されている日数よりも1日長く利用できます。「使い放題(7日間)12回分」であれば、8日間分、データ通信が使い放題になるというわけです。
「使い放題(7日間)12回分」を4回連続で適用したとすると、期間は32日間になり、31日間ある月を1日超え、翌月1日まで利用可能。12回だと、96日間になります。例えば6月1日からこのトッピングを利用した場合、6月は2日、7月、8月は1日分が余り、9月4日までデータ容量が無制限になります。ならすと1カ月3278円ですが、実際には1日、2日分だけ安いと言えるでしょう。
これを1年間に渡って繰り返していけばデータ容量が使い放題になる期間は384日分になり、19日間、期間が余る計算に。2年間使い続ければ、1カ月分以上になり、その分だけ「使い放題(7日間)12回分」に支払うタイミングがどんどんズレていきます。ここまで加味すると、楽天モバイルのRakuten最強プランのよりも割安と言えるかもしれません。
ただし、この新トッピングは期間限定という位置づけのもの。終了期間は定められていませんが、いつ終わるかは分かりません。povo2.0のサイトでは、「お試しトッピング」ではなく、通常トッピングのカテゴリーである「データトッピング」に属するトッピングとして紹介されてはいるものの、もし終了してしまったら上記の計算は成り立たないことには注意が必要です。
手間で選ぶ2つのトッピング
この期間のカウント方法は「300GB(90日間)」も同じで、実際には91日分の有効期限があります。ただし、元々の期間が90日と長いため、こちらに関しては3カ月間、連続で利用することができない期間もあります。先に挙げた6月1日に利用を開始した場合がそうで、6月は30日までですが、7月、8月と31日まである月が続くため、8月30日で利用期間が切れてしまう形になります。月額課金と比較すると、1日分損をしているとも言えるでしょう。
また、「300GB(90日間)」のトッピングは、大容量なものの、上限が定められているのも事実。約1カ月で100GB使えれば、ほとんどデータ容量の残量を気にせず利用できるのも事実ですが、テザリングなどで複数のデバイスを接続しようとすると話が変わってきます。意識せずに利用できるとは言え、トータル300GBという天井があるのも事実。その意味では、「使い放題(7日間)12回分」の方がリーズナブルで速度制限が頭にチラつくこともなく、気楽と言えそうです。
利用できるデータ容量や期間の面では「使い放題(7日間)12回分」に及ばない「300GB(90日間)」トッピングですが、メリットは、90日間、特に何も操作をせずに使い続けられるところにあります。povo2.0のコンセプトを根本から否定してしまうようですが、小まめにトッピングを選択していくのは、意外と手間がかかるもの。「速度が出ない、まさかパケ詰まり!?」と思ったら、実際にはトッピングの有効期間が終わっていただけ……そんな経験のあるpovo2.0のユーザーもいるのではないでしょうか。かく言う筆者もそうで、通知が送られてくるとはいえ、有効期限切れを忘れてしまうことはしばしばあります。
特に、「使い放題(7日間)12回分」に関しては、7日間と比較的短期で終わってしまうトッピングで、残りの11回分に関しては後から送られてくるプリペイドコードを入力しなければなりません。メールの文面をコピペするだけで済むことは済みますが、アプリを行ったり来たりしながらの作業は少々面倒。うっかり忘れて、速度が128Kbpsに制限されてしまうこともありえます。
先に挙げたように、1年で384日分のトッピングを使うには、きちんと0時に適用する必要もあります。「300GB(90日間)」は、そんな手間をかけたくない人向けのトッピングと言えるでしょう。逆に言えば、「使い放題(7日間)12回分」は、データ通信がさほど必要ない期間にプリペイドコードを温存しておくことが可能。使い放題と使い放題の間を、「ギガ活」でもらったデータ容量でつないでいけば、より節約することもできます。このような自由度の高さが、「使い放題(7日間)12回分」の魅力と言えそうです。
Rakuten最強プランは本当にキャッチアップされた? 詳細には違いも
プリペイドコードを約1週間ごとに入力したり、約3カ月後にトッピングを購入したりする点はありますが、料金的には楽天モバイルのRakuten最強プランよりも安めなpovo2.0。KDDIはその楽天モバイルにローミングで回線を貸しているほどなので、エリアの広さに関しても軍配が上がります。その意味で、povo2.0の新たなトッピングは、かなりアグレッシブと言えそうです。
一方で、比較対象にしているRakuten最強プランの3278円は、あくまでも素の料金。2月に導入された「最強家族プログラム」を適用すれば、料金は3168円に下がります。また、楽天経済圏と密接に連携しているのも楽天モバイルの特徴。SPUのポイントアップがあり、楽天市場で4倍のポイント付与があるのはpovo2.0にない魅力と言えるでしょう。上限は2000ポイントまでですが、元々の料金が安いため、これでも十分な高額還元と言えます。
楽天モバイルの場合、このポイントを料金に充当して、支払う金額を抑えることが可能です。2000ポイント貯めるには、5万円分の消費が必要になるため簡単ではありませんが、生活必需品などを楽天市場で買っていけば、ある程度のポイントを貯めることはできるでしょう。これを料金の支払いに充当すれば、さらに節約することができます。povo2.0はau経済圏とはある程度独立したオンライン専用ブランドのため、こうした連携がありません。
ほかにも、楽天モバイルでは「Rakuten Link」を通じた電話が無料になるというメリットがあります。これに対し、povo2.0はノートッピングだと30秒あたり22円と通話料は割高。料金自体は、一般的なキャリアと変わりません。音声通話定額もトッピングとして提供されてはいますが、これをつけると料金が上がってしまいます。Rakuten Link限定ではあるものの、通話の多いユーザーには楽天モバイルが“最強”であることに変わりはないでしょう。
加えて、海外ローミングにも差があります。楽天モバイルは、2GBまで無料。これに対し、povo2.0はトッピング方式で料金がかかります。一般的なキャリアの海外ローミングよりは割安なものの、データ使用量が多いと金額もそれなりに高くなってしまいます。エリアやデータ容量無制限の単純な金額ではpovo2.0が優勢と言える一方で、サービスの細かな点まで見ていくと、楽天モバイルの方がお得になる部分も多くあります。比較の際には、こうした点をどこまで重視するかも念頭に置いておきたいところです。