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キーパーソン・インタビュー

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サムスン石井専務に聞く、次期Galaxyに込める思い

Galaxy S6とGalaxy S6 edge

 サムスン電子は、Mobile World Congressの開催にあわせ、3月頭に次期フラッグシップモデル「Galaxy S6 edge」と「Galaxy S6」を発表した。Galaxy S6 edgeの曲面ディスプレイが注目を集めるが、両モデルともにガラスと金属を多用した質感の高い外装デザインを採用するなど、あきらかに「これまでのGalaxyシリーズと違う」と感じさせる端末となっている。また、これまで「GALAXY」だった表記を「Galaxy」に改め、ロゴも丸みの強いフォントに変更するなど、これまでとは違うことをブランド面でもアピールしている。

 日本での発売の詳細は未発表だが、サムスン電子関係者が日本でもNTTドコモとKDDIで取り扱うことを明らかにしている。今回はGalaxy S6 edgeとGalaxy S6の国内展開に向けたサムスン電子ジャパンの戦略について、無線事業本部の石井圭介専務にお話を伺った。

――バルセロナで開催されたGalaxy S6 edge/Galaxy S6の発表会を拝見して、メッセージが絞り込まれているという印象を受けました。非常に伝わりやすく、これまででもっともインパクトが強かったと思います。

サムスン電子ジャパンの石井専務

石井氏
 メッセージがはっきりしていなかったのがこれまで負けていた要因、あるいは手を付けなくてはいけない領域、という考えがサムスン全体として明確に出てきましたから、その結果だと思います。

 新製品の実物も現地でご覧になったと思いますが、いかがでしたか?

――製品としての完成度は高いと思いますが、とくにデザイン面で、これまでとはイメージが違ったものになりましたね。実機を持ったときにスリムに感じてびっくりしました。男女問わず幅広い層に受け入れられるように思えます。

石井氏
 業界関係者にお聞きすると、共通の反応として、持った瞬間に「違う」と言われます。「軽いですね」とも。業界関係者の中には、「せっかく今までと違うので、素直にそこを見せるようにして、難しい話は言わない方が良いよね」とおっしゃる方もいました。今回は見た目と手に持った感じが変わっているので、まずは実際に手に持っていただきたいですね。

――今回はGalaxyのロゴも変わっていますが、そうした部分もサムスン側からのメッセージの変化の表われなのでしょうか。

石井氏
 ロゴに限らずブランドはメーカーからのメッセージです。グローバルでの実績ですと、これだけのシェアを持っているメーカーはほかにはいません。しかし、今回は「ゼロからやり直し、新しいスマホの次世代をにらんだ動きをとっていきたい」という意思が表われています。単にフラッグシップでハイスペックだよ、というだけでなく、横にも縦にも広がって行くような願いを込めたロゴになっていると思います。

 とくに日本では業界関係者に見ていただくと、「ユーザー数を広げるのですね」という反応がほとんどです。今までは先端層向けらしい鋭角的なブランドイメージでしたが、丸みをもったロゴになっているので、「層を広げて若い方にも気軽に」というイメージを持つ方が多いです。

 もう一点、今回は製品カタログやテレビCMなど、露出する全てのものについて、一斉に変えようと思っています。大がかりで大変なんですけどね。

――先月、サムスンが日本でスマートフォン事業から撤退するのでは、というような憶測記事が一部メディアで書かれていましたが。

石井氏
 たとえばサムスンは無線通信機器分野でオリンピックのワールドワイドパートナーです。2020年の東京オリンピックではロンドンやソチ同様に、選手団や関係者、2万5000人か3万人くらいになるかも知れませんが、その関係者が全員、期間中はGalaxyを使用します。その時に日本でビジネスをしていないわけにはいきません。それどころか、その時点でトップシェアを取っていなかったら世界に恥をさらすことになる。そういった覚悟で社内で話が進んでいると思っていただければ。

 そうでなければ分散していたサムスン電子ジャパンの事務所を1カ所に集約しよう、というようなこともしなかったでしょう。具体的な金額は言えませんが、1人あたりの維持費は新オフィスの方が高くなっています。冗談抜きで相当な投資をしています。

 今回の商品のデビューに際しても、ちょっと今までとは違う動きを取る予定です。たとえば宣伝プロモーションは、2年前に比べ倍以上の規模のものを準備しています。

 また、日本だとラウンダーと言うんでしょうか、お店とコミュニケーションを取る人員、日本では一番大きいメーカーでも40人程度と聞きますが、我々は現時点でもそれよりも人数が多く、2倍程度います。これを今回の商品の展開に合わせ、数倍の規模、数百人規模になるべく、人員を採用して研修しています。これは今回のキャンペーン用の一時的な施策ではなく、ずっと続ける前提で準備しています。継続的に力を入れる体制を整えているということです。

――業界ではMVNOの話題が増えていますが、サムスンとしてはMVNOやオープンマーケットをどう見ていらっしゃるでしょうか。

石井氏
 欧州では3~4割がSIMフリーのオープンマーケットです。MVNOについてもそれぞれの国で一定の割合の市場が構成されています。日本では総務省などが2020年に向けての目安として予測を出していますが、そのような方向に行くと思います。今後は市場がどう広がるかを勉強させてもらって、その上で我々の対応を考えます。

――スマートフォン以外、ウェアラブルなどについてはいかがでしょうか。

石井氏
 ウェアラブル関連は伸びると思っています。ウェアラブルというジャンルのまま伸びるかは別として、これから違う形の市場ができるかも知れません。単体で商品が存在するのではなく、IoTのように全然違う使われ方のデバイスが出てくると思います。そういった意味では、おかげさまでサムスンは部品のみならずあらゆるジャンルの商品に事業を展開しているので、もちろん全部単独で展開できるとは思えませんが、さまざまな方向をにらんだ動きはどんどん展開していくと思います。

 今後もウェアラブルに限らず、いろいろな周辺機器が出てくると思うので、そのあたりの部分も、事業拡大に力を入れていこうと思います。ケースなどの周辺機器も含めて展開していく流れです。具体的にこの後どうするかは、まだお話しできませんが……拡大するし、いろいろやっていく、としか言えませんね。

――今回、グローバルではGalaxy S6 edgeとGalaxy S6でそれぞれ4色ずつ発表されましたが、石井専務は個人的にはどの色がお気に入りでしょうか。

Galaxy S6 edgeのグリーンエメラルド

石井氏
 ゴールドは一般に受け入れられる色だと思っていますが、個人的なお気に入りはグリーンですね。グリーンはモバイル製品に限らず、大々的にヒットした商品は存在していません。しかし、Galaxy S6 edgeのグリーンは奥深く、普通のグリーンとはちょっと違います。もしかすると、いや私は確実だと思っていますが、コンシューマー商品でグリーン系のカラーがヒットする初めての商品になるのでは、と思っています。偏光フィルムならではの偏向色が一番出ているのも、個人的にグリーンだと思っています。このGalaxy S6 edgeを持っていただくと、たとえば電車の中とかでも自慢できるのではないかと。日本人の誰が持ってもハマると思います。

――本体自体のデザインやカラーが良いので、ケースも作り方を考えないと素材を活かせませんね。

石井氏
 質感のグレードを落とさない、高級感のあるクリアタイプのものを開発しています。贅沢に蒸着塗装も使っていて、色の具合をまた違ったニュアンスで楽しんでいただけるようなものになっています。

 今回はこれに限らず、早めに活動を開始した結果、発売日の前後には従来の5~6倍の数のアクセサリーを準備しています。店頭に並ぶかは、店舗の大きさ次第ですが、最大の売り場では500アイテム以上が並びます。弊社に限らず、各社の製品も相当な数を準備しています。

――Galaxy S6 edgeとGalaxy S6をグローバルで発表されての手応えは?

石井氏
 例年より反響が大きいと聞いています。日本においては、発表の前後でTwitterなどでのブランドに対する期待度や認知度でGalaxyの数字が上がっています。これまでも発表会の前後では上がっていますが、今回は過去の倍以上の規模です。これを発売日まで維持するべく、発表会を含めて情報配信を継続しないといけないな、と思っています。

 報道の論調も違います。これまで、グローバルでは米国メーカーとサムスンで2強と言われていましたが、今回、日本でもそういった論調で報道されています。グローバルと同様に、2強対決のような構造でのマーケティング的な戦いが、日本でも行なわれると感じています。その準備のためにも、かねてから準備していたラウンダー強化や品質フォロー体制の強化など、サムスンの強みを活かした準備をして導入日を迎えないといけないというのが、今いちばん緊張しているところです。

 そのため、その点は実行面できちんと責任を果たさないといけないな、と思っています。

――どのメーカーの製品も同じですが、ユーザー視点からすると安心して使いたいという気持ちがあります。サポート体制という部分についてはどうでしょうか。

石井氏
 先ほどもお話ししたラウンダー、プロモーターと呼ばれている人員を配置するのはもちろんです。まず、品質はGalaxy導入以来、全メーカーの中でも一番いいので、それを維持します。それに対するメンテナンス体制としては、修理やコールセンターの独自対応を含め、日本国内でやっているので、スピードや対応力は自信があります。

 Galaxy S6 edgeとGalaxy S6ではゴリラガラス4を使っているので、あまり壊れることはないと思いますが、それでも万一が起きても迅速に対応できるように、これまで以上に体制を整えています。日本で一番安心して使ってもらえる端末であると言いたいですし、それを継続していきたいです。

――Galaxy S6 edge/Galaxy S6に搭載されている決済機能、「Samsung Pay」は国内展開するのでしょうか。

石井氏
 まずは米国と韓国を中心にスタートします。カードリーダーについては、日本もNFCは強くないですが、ベースはアメリカと一緒です。磁気式については米国では9割、Samsung Payでフォローできるカードリーダーがありますが、日本の場合も同等以上のカードリーダーがあるので、展開の可能性が低い国ではありません。日本のビジネススキームに則って、いろいろな企業が事業に乗り出してくるので、そこで我々がどういった形で事業を広げるのに役立てるか、戦術戦略面を組み立ててから、導入を検討したいと思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

白根 雅彦