インタビュー

「大切なのはストーリー」、シャオミの大沼新社長と安達氏が語る日本市場での戦略とは

左:大沼氏、右:安達氏

 シャオミ(Xiaomi)は27日、国内向けに複数の新製品を発表した。スマートフォン「Xiaomi 13T Pro」「Xiaomi 13T」「Redmi 12 5G」やタブレット「Redmi Pad SE」のほか、スマートバンド「Xiaomi Smart Band 8」、チューナーレススマートテレビ「Xiaomi TV A Pro」、ロボット掃除機「Xiaomi ロボット掃除機 S10」が一挙に展開される。

 日本では4年ぶりの開催となる発表会で、Xiaomi TV A Proの専売というかたちでKDDIとのタッグも発表。スマートフォンやタブレット端末に加えてIoT端末がキャリアから展開されるということで、シャオミが新たな一歩を踏み出したような印象の発表会となった。

 シャオミジャパンを率いるのは、新たに取締役社長に就任した大沼彰氏。同氏は、サムスン電子ジャパンやHTC NIPPON、ファーウェイ・ジャパンなどを経て、2022年1月にシャオミジャパンへ入社。発表会の日に、大沼氏の社長就任が発表された。

大沼氏

 長らくモバイル業界に携わった大沼氏のもと、シャオミは日本市場でどのような戦略をとっていくのだろうか。本稿では、大沼氏と、同社プロダクトプランニング部 本部長の安達晃彦氏への囲み取材、そしてインタビューの様子をお届けする。

囲み取材

Xiaomi 13Tシリーズについて

――Xiaomi 13Tシリーズは、グローバル発表の直後に国内でも発表された。今後もそのようなイメージなのか。

安達氏
 できるだけそうさせていただきたいのですが、さまざまな事情もあります。この時期はいろいろ発表会がありますので……。

 気持ちとしては発表や発売(のタイムラグ)は縮めていきたいのですが、正直ケースバイケースになるかなと。

大沼氏
 グローバルで発表したら、日本はあるのかないのか、いつなのかというご興味はあると思います。なるべく我々もすぐ発表したいのですが、いろいろな事情があります。今日は珍しいと思います。

――Xiaomi 13Tシリーズは、グローバルではライカと協業している。日本では使えないのか。

安達氏
 使えないというより、Xiaomi 13Tシリーズはライカ付きのモデルが販売される国とそうでない国があり、そうでない国も日本以外にあります。

 それぞれの国によって、さまざまな背景でライカを搭載せずに発売すると。そのうちのひとつが日本です。

 やっぱり期待をいただいているということだと思いますので、将来的には搭載についても議論を進めていきたいと考えています。

――機能は同じなのか。

安達氏
 ライカにまつわるフィルターやカメラUI、ウォーターマークなど、ライカ関連の機能がグローバル版には搭載されています。

 メカニカルな構成やセンサー、レンズはまったく同じです。

――画質についてライカの監修を受けているのか。

安達氏
 監修というより、シャオミとしてライカさんとやり取りしているなかで、蓄積された画像処理のノウハウといったものが反映されていますが、IP(知的財産)に関わるものに関しては搭載されていません。

――スマートフォンの買い替えサイクルは長くなっている。

安達氏
 グローバルではかなり長期間のソフトウェアのアップデートがありますし、国内での開発の取り組みもあります。できるだけ頑張ってお客さまに届けていきたいです。

 本日発表したスマートフォンに関しては検討中という状況です。

販路に関する考え

――オープンマーケット版に関する考えは。

大沼氏
 キャリアさまとMVNOさま、それからオープンマーケットというところで、今日も3つお話をしました。

 ハイエンドとローエンドをオープンマーケットに出していきますし、EC限定のものも出します。

 キャリアさんが目立ったような感じはしますが、MVNOさま、オープンマーケット、ECさまもしっかり出していきたいと考えています。

――キャリアの比重は変わっていないのか。

大沼氏
 日本市場はご存じのとおり9割以上がキャリアさんのマーケットなので、やっぱり比率が高くなるような気がします。

 ただ、オープンマーケットは、シャオミのグローバルの考え方をそのまま活かすマーケット。それはそれで大切です。

 キャリアさまのほうにも紹介する、そういった2つの考え方でやっていきたいと思っています。

安達氏
 これまでのシャオミのユーザーの方に対しても、SIMフリーで買うだけじゃない買いやすさみたいなところもお届けしないと、全体的なブランド認知は進まないのかなと思っています。

 そういう意味では、可能であればSIMフリーとキャリアモデル、両方をやっていきたい。両輪としてやっていくのが、スマートフォンビジネスとしては現状いいのかなと思います。

――ショップ展開に関する考えは。

大沼氏
 当然、そういったブランドを上げるというところも考えていかなければいけないと思っています。

 ただし、今我々に必要なのは、やっぱりブランド(力)。日本のなかでまだまだブランドが低いというのは、事実としてあると思います。

 ショップ(展開)についてもやるべきかどうかという判断もあると思いますが、まずは日本でのブランドを上げていく。今やるべきことをやりながら、次に向かっていきたいと思います。

IoT製品投入の背景

――4年ぶりの発表会で、ロボット掃除機も発表された。日本市場への見方は。

大沼氏
 我々はスマートフォン含めて一番尖った部分をやってきていますが、実はご存じの通り、IoTがグローバルでものすごく強いんですよね。

 そういったものを日本に持ってきて、家電としてもやっていく方針があります。

 もう一つ大事なのは、単品同士を2つ3つと組み合わせて、いろいろな価値が向上すること。

 スマートライフということで、機能と安さと時短のソリューションを提供していきたいと思っています。

――ロボット掃除機を投入した背景は。

大沼氏
 家電製品として、日本に持ってきたらお役に立てるだろう、というみんなの総意です。

 他社とは比較はできませんが、やっぱり性能やお求めやすい価格が際立っていると思います。

 それだけで売るとやっぱりあれなので、今回テレビやいろんなスマートフォンも考えながら、もうひとつはそういったものも徐々に増やしていきたいです。

――このタイミングに意味はあるのか。

大沼氏
 4年間でいろいろな勉強をしました。日本の市場に加え、シャオミのグローバルの強さも勉強した。そのときに、4年間の活動と、グローバルの良さとIoTの良さをかけあわせたときに、日本でビジネスチャンスがあるのではと考えました。

 そこで今回は事業者さんと一緒にやったり、特徴のある家電製品を日本に投入したりということに至りました。第二のスタートということで発表させていただいたことになります。

――テレビは象徴的で、auショップで売るのも変化球だと思う。手応えは。

大沼氏
 ご存知だと思いますが、「テレビをいきなり出しました」と言ったらたぶん広がらないと思います。

 我々がビジネスを考えるにあたって、いろんな法人さまと交渉をします。シャオミの考え方や製品があり、通信事業者さまと会話するなかで、「この分野でやってみようかな」というのがKDDIさまとあった。

 我々の悩みは、ブランド(力)がまだまだ低いことです。そのときに、家庭の中心にテレビを置くことで、我々のブランドもどんどん高くなっていく、事業者さまはARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)が高くなっていく、戦略の合致があると思います。

 テレビで終わりではなく、こういった事業活動をどんどんしていきたい。「テレビを売ります」ということではなく、背景にある考え方をご理解いただければと思います。

製品ラインアップについて

――シャオミではバッグなど、家電製品以外にもファンが多い。

大沼氏
 もちろんそういうこともやっていきたいと思います。実際にはそういうのも発売してきていますし。

 ただ、むやみに出してもいけないだろうなと。すぐ持ってくるということもありますが、売るからには、考えやストーリーがしっかりしていないといけない。

 今までが間違っていたというわけではなく、ストーリーのなかでポートフォリオも考えながらやっていきたいと思っています。

――これまでの販売方法で教訓は。

大沼氏
 最初に日本に上陸したときは、とにかくいろいろないいものを出していくということがありました。今もまだそういったことはあります。

 今日、私が最後にまとめたのはその点で、そのまま持ってくるものと、MNOさまやMVNOさまのところでお役に立つもの、そういったカテゴリーを整理してロードマップ含めて投入することが大切だと思っています。

 やみくもに出しているわけではありませんが、しっかりと考え方を持ってやっていきたいです。

安達氏
 打率の問題もありまして、実はハンディクリーナーがかなり好評なんですよ。1人で2本、3本と買っていく方もいる。

 試行錯誤するなかで受け入れられたものもあれば、そうでもなかったものもある。トライアンドエラーをしながら、できるだけ打率を上げたいですね。

大沼氏
 流通さんからしても、いきなり(製品を)持って行っても、これは売れるか売れないかみたいな議論になる。そのときに、考え方など含めて丁寧に説明していきたいというのはあります。

シャオミがこれまで日本で展開してきた製品群

組織の成長と、ブランド力の向上

――本社が大沼氏に期待していることは。

大沼氏
 グローバルの企業で、日本人が社長になるということは驚かれたと思います。日本の事業者さんを含めて対話していくといったときに、やっぱり日本人がいいんだろうということで。

 そこの判断というか考え方は、私が言う話ではありませんが、素晴らしいのかなと思います。

 現地に根ざした人が(トップを)やるという例は、日本だけでなくほかの国でもありますので、今回は選ばれたと思っていて、しっかりやっていきたいです。

――シャオミジャパンはどれくらい大きくなったのか。

大沼氏
 人数的にそれほど増えているわけではありません。

 日本に来て事業を開始するというのは並大抵のことではなかったと思います、次に日本のマーケットを理解するなかで、人材を充実させるという変化点はあったかなと。

 そのなかで安達をはじめとしたいろいろなメンバーが入ってきて、考え方の層が変わった。人数はあまり増えていないので、1人で4倍くらい働かないといけない(笑)。

――“神ジューデン”のテレビCMなどを通じて認知度は上がったのか。

Xiaomi 13T Proは、“神ジューデン”の新ラインアップとなる

安達氏
 我々は半年に一度、ブランドの認知調査を実施しています。3月に弊社が実施した調査でいうと、それ以前に比べて明らかに上がりました。

 具体的な数字はお話できるようなレベルではありませんが、我々単独でやるものに加えて、パートナーさまと一緒にやることによって、非連続な認知の拡大ができたのではと思っています。

 急速充電のシャオミというところに、もう少しブランド力を寄せていければと考えています。

――日本市場はシャオミにとって大きくなっているということなのか。

大沼氏
 大きくしたいということと、日本市場はとても大事な市場という認識が、本社を含めてあります。

今後の展望

――国内スマートフォン市場のなかでどれくらいの位置を目指したいのか。

大沼氏
 当然、Androidのなかではトップグループを目指す思いでやっていきたいです。

 参入するからには、事業をやるからには、やっぱり競争の中でしっかり勝っていくこと。シナリオというか我々の特徴をしっかり皆さんにお伝えしていかなければと思っています。

――トップグループとは上位5社を指すのか。

大沼氏
 個人的な考えですが、やっぱりトップグループというのは、3つのなかのひとつに入らないと(そう)言わないのかなと。

――Androidのなかでトップグループになるための戦略は。

大沼氏
 各社さん、スマートフォンだけだったら、いろいろな特長をお持ちです。我々も、スマートフォンでものすごく尖っていると思っている。

 そこ以外に、我々はIoT製品がグローバルで大きく成功しています。日本にいるとなかなか実感がわきませんが、欧州や中国では家電メーカーくらいのイメージがあります。

 そういったものを組み合わせながらやっていきたいと思っています。

――スマートデバイスの市場は厳しい見通しがあるが。

大沼氏
 日本の人口や老齢化というところもあると思いますが、IT化やDX化により、便利な暮らしへのニーズは増えていくのではないかと思っています。人数は減りますが、ニーズは増える。それはやっぱりメーカーの力かなと思います。

――価格に対する考え方は。

大沼氏
 いい技術でも、お客さまに使ってもらわないとまったく意味がありません。

 そこで我々は、利益を抑えてでも、手にとっていただくコストを目指す。それって非常に難しくて、事業の利益を上げることと、お客さまに手に取っていただくことは相反することなんです。

 シャオミの一番の考え方は、その2つをしっかり悩むということ。悩み続けて活動をしていくことが、ほかのメーカーとは違う点だろうと思っています。

 Miファンの笑顔を思い浮かべながら事業を推進しているということです。

純利益率に関するシャオミのポリシー

インタビュー

シャオミとしてあらためて目指すもの

――製品がたくさん発表され、仕切り直しのような印象も受けました。製品ラインアップが拡充され、スマートフォンメーカーから脱却されるように見えます。一方で、キャリアさんとの関係を強めるような意図もある。あらためてシャオミとして何をしていきたいのでしょうか。

大沼氏
 「スマートな暮らしをすべての人へ」が全部のキーワードになっています。

 最初に日本に上陸してから、さまざまな製品を投入しながらやってきました。その中でいろいろ経験をしまして、よかったことや「こうすべきだ」ということもたくさん経験してきました。

 これはどこのメーカーでも、日本に来たらそういった経験があると思います。

 その中で私が感じたのは、日本の皆さんに対して、「ただ(製品を)持ってきました」というわけではなくて、いろいろな製品をしっかりストーリーを持ってお伝えすることが一番大事なのではということ。

 でも、ストーリーを考えたからといって、すぐ日本市場に受け入れられるわけではありません。

 ご存じのとおり、日本は90%以上がキャリアさんのマーケットです。

 そこに、オープンマーケットの製品として、我々がグローバルで展開しているものをそのまま持ってくる。法的なところは当然しっかり守りながら、製品を持ってくるエリアがひとつ。

 あとは、MNOさまやMVNOさまのお考えや方針に基づいて、会話をしながら我々のロードマップを含めて提供していくところがあります。

 加えて、キャリアさまのご方針と、我々のブランド含めた考え方含めて一緒にやっていくところが3つ目。こういった3つの分野が主体になると思っています。

日本市場の位置づけは?

――日本参入から数年が経過して、中国本社からにとっての日本市場の位置づけも変わりつつあるのでしょうか。

大沼氏
 本社から見て、日本は大きな意義を持った国であることは間違いありません。

 我々シャオミの根本的な考え方は、イノベーションをどんどん出して、コストも合わせていくこと。

 そういった意味で、日本はいいものとコストのバランスですとか、生活のなかでのイノベーションを大切にする国民性があります。

 シャオミの方針と日本は合うのであろうということで、(本社に)理解してもらっているのかなと思います。

――そういったところは、定量的なデータを収集されているんですか。

大沼氏
 一番は、何がどれだけ売れたかということが尺度になります。さまざまな調査データもあって、そこがベースです。

――日本で積み上げてきた実績も本社に評価されているということですね。

大沼氏
 日本で商売をしたらどうなるんだろうというところが気になると思うんですが、安達の説明にあった通り、スマートフォンのエントリー5Gモデルでは、120万台を稼働して納入している実績もある。

 そういったことを含めたら、一定の評価があると思います。

 ただ、エントリーモデルという部分が大きいので、ブランド力を高めるためには、もう少し尖ったものを求めやすい価格で、ということもやらないといけない。

 単品のスマートフォンに加えて、ホームIoTも組み合わせないと、他社との差別化はできません。逆に言えば一番差別化できるところがそこなので、組み合わせながらやっていく考えです。

市場に関する考え

――スマートフォン端末についてお聞きしたいのですが、各キャリアの決算などを見ても、端末の売れ行きが減少傾向にあります。今回は「Redmi 12 5G」に加えてハイエンドの「Xiaomi 13T」シリーズも入れるということで、市場に関するお考えを聞かせていただけますか。

大沼氏
 我々の競争軸は、尖った技術でお客さんに評価してもらうことです。

 IoTにも重なってくるんですが、ひとつのものだけでやっていくんだったら、やっぱり体力勝負になってしまう。

 端末の買い替えサイクルが長くなっているときに、テレビのようなものなども組み合わせてお使いいただくようなことが、今までの考え方を変えていくポイントだと思います。

 たまたまグローバルでは、ホームIoTなどが成功しているので、これが我々の強みです。スマートフォンとIoTは別々ではなくて、実は一緒なんだいう考え方で進めていきたいと思っています。

――スマートフォンと何かを組み合わせたバンドル商品なども展開しつつ、シェア拡大を図っていくのでしょうか。

大沼氏
 それ(スマートフォン)はそれだけでしっかり売れるんでしょうけど、違う製品と製品を組み合わせてトータルの暮らしを良くする、というつながりを伝えていきたいです。

安達氏
 スマートフォンも、基本的には買い替えサイクルがだんだん伸びてきていて、だいたい4年くらいになっています。

 スマートフォンは買い替えによって成り立っているんですが、環境の変化のなかで、端末価格も高くなってきている。

 そこに対して我々は、優れた機能とお求めやすい価格を、異なる価格帯の商品それぞれで実現していきたいです。

 エントリー商品であれば、お値段は一定のところに落ち着きますが、他社さんより優れた機能を搭載したりとか。

 あと上位モデルについて言うと、他社さんにはない機能を入れながら基本的なパフォーマンスをしっかり押さえて、お手ごろな価格を実現する。

 ユーザーさんもだんだん変わってきていて、「何が何でもあのスマートフォンじゃないとダメ」ということではなく、実利的に自分の考え方と照らし合わせながら賢く選択していただく方が増えてきています。あるいはそういう方が増えてほしいなという思いがありまして、ハイエンドの製品もしっかりお届けすれば、ご評価いただけるのではと思っています。

 それに加えて、他社にはない(製品同士の)連携の部分は、大きな付加価値になるかなと思います。

――IoTなどとセットで販促活動を進めていく、と。

大沼氏
 当然、そういったところは進めていきたいと思っています。KDDIさんと一緒にやっていこうという発表をしましたが、この発表によっていろいろな会社さんと商談しながら広めていきたいです。

タイミングが合致した発表会、伝えたかったストーリー

――ロボット掃除機やテレビといった選択は、どういったかたちで決まったのでしょうか。

大沼氏
 基本的には、日本から発信して、日本でそういったものができるかどうかといった検討です。

 そのなかで、グローバルでも、製品を日本に持ってこれるかどうか、マーケットはどうなのかというように、いろいろなことを考えながら相互にやっています。

安達氏
 実はXiaomi 13Tシリーズだけでなく、Redmi Pad SEやXiaomi Smart Band 8も昨日発表されたものです。

 そういう意味では、この9月末、いろいろなタイミングは合ったかなと思います。

――これまで、グローバルで発表されてから少し期間が空いて国内発表というイメージがありました。すごいスピード感ですよね。ある意味、日本市場にかける意気込みみたいなものがあるのか、タイミング的な合致なのか、どちらでしょうか。

大沼氏
 どちらも、なんですよね。

 やっぱり、グローバルで発表したものは旬のうちになんとか早くお届けしたい。だけど、そこに行き着かないタイミングもあるわけです。今回はそれがぴったり合ったということがありますが、これが毎回かというと別問題です。

 通信事業者さんなどの関係者さん含めて、ものすごく複雑な糸のなかで……。

安達氏
 全部はお話しできないんですが(笑)。

 今回の発表のなかで、Xiaomi 13Tシリーズがなかったらどういう見え方になっただろうか? とも思っていて。

 発売に近いタイミングで直前に発表する方法もあったと思うんですが、今回一緒に発表することで、我々の戦略の全体像をお伝えできたのではないかと。

 そういった意図を我々で作りまして、パートナーさまにご理解いただき、このタイミングで発表して。ちょっと早いんですが、そのほうが全体像は見えますよね。

大沼氏
 やっぱりグローバルの考え方、日本の考え方、そういったストーリーをしっかりお伝えするなかで、その一環としてパートナーさまにもご理解いただきたい。

 そうじゃないとやっぱり皆さんにも通じないと思うし、全体の戦略とストーリーは(今日)きっちりお話しできたかなと思っています。

――ストーリー性のようなところでキャリアと協議もあったと思いますが、シャオミが積み上げてきた実績によって、パートナーさんとの関係性が変わってきたところもあるのでしょうか。

大沼氏
 事業者さんもいろいろな思いがありますし、我々にも思いがあります。(協議の)内容は言えませんが、期待していただいていると思いますし、今日もキャリアさんに来ていただいている。

 我々の考え方にも賛同していただいて、今回の(発表会の)位置づけになっていると思いますので、(パートナーの理解に対して)本当にありがたいお話だと思っています。

製品の販路やカテゴライズ

――テレビはau専売ですが、家電量販店やECサイトで取り扱う計画はあるのでしょうか。

大沼氏
 それはauさんが取り扱うルートによりますので、発表はお待ちいただければと思います。

 (のどのあたりを指しながら)ここまで出かかっているんですが、ちょっとそこは私から言うべきじゃないなと。

――スマートフォンのラインアップについて、ハイエンドの価格が高くなっている傾向もあります。カテゴライズに関するお考えをお聞きしたいです。

大沼氏
 考え方としては、やっぱりあらゆる方の手に届くように、カテゴリーを分けたところに全部(製品を)購入していきたいと思っています。

 大きく分けてエントリーモデルとミドルと尖ったものという感じですが、価格やスペック含めて、基本的には全体をやっていきたいです。

安達氏
 スマートフォンのセグメントをどう分けるかというのは立場によって違うかなと思いますが、我々のほうで考えているのは、3つか4つ。

 まずはエントリーモデルで、スマートフォンを初めて持つ方や、スマートフォンそのものにそこまでお金をかけられないという層があるのかなと。ざっくり3万円以下、あるいは3万円前後くらいかなと思います。

 次に、カメラやパフォーマンスなど、少し高性能なものを楽しみたいミドルレンジ。6万円~7万円くらいのセグメントです。

 8万円前後以上のところになると、各社さんがかなりハイスペックなカメラやチップセットを搭載して、メモリーやストレージも多くなります。

 さらに上はアイコニックもので、何かカラクリがついてるようなものとかをメーカーさんによってはグローバル展開している。

 今回、一番お求めやすい価格のもの、いわゆるハイスペックなものを展開させていただいたというイメージです。

――タブレットもユーザーニーズに合わせて幅広いラインアップを展開したい、みたいなことがあるのでしょうか。

安達氏
 今回発表したRedmi Pad SEは、Redmi Padとしては2代目になります。タブレットについてもいろいろな使い方をされる人がいて、単純に動画視聴に使うだけ、といった方も結構いらっしゃる。そういう方には(Redmi Pad SEが)最適な製品となっています。

 一方、お仕事でセカンドスクリーン的に使うとか、複雑な作業もストレスなく使いたい方には「Xiaomi Pad 6」かなと。ストレージの少ないモデルで4万9800円なんですが、非常にコストパフォーマンスが高く、AndroidのWi-Fiタブレットとして、質感の高さも含めてすごく高い評価をいただいています。

 同じタブレット、同じスクリーンサイズでも、ユーザーさん(の層)は違うと思いまして。

 我々としては2モデル、他社さんにもいろいろ発売いただいて、これまでタブレットというと一択のような世界もあったかと思いますが、値段もだんだん変化してきました。

 我々としてラインアップに2枚追加できて、自信を持ってお届けできるかなと思います。

今後のロードマップ

――「トータルで暮らしを良くする」という目標ですが、欧州や中国では、家電のようなイメージもシャオミにはあると思います。今後の日本でのロードマップについて、あらためて最後に教えてください。

大沼氏
 本社の考え方、欧州でもシェアを伸ばしているような考え方をしっかり見つつ、日本は日本で独自の部分もあるので、まずは今やっていることをしっかりやっていきます。

 同時に、次に目指すところもいろいろ議論しながら進めていきたいなと。

 「決まったものはこうだ」という感じではなく、お客さまにしっかりしたスマートな暮らしを届けるために、いったい何が必要なのか? というところだけは外さないように取り組んでいきたいと思っています。

――ありがとうございました。