インタビュー

“神ジューデン”な「Xiaomi 12T Pro」がいよいよ登場、キーパーソンに聞くその強みとシャオミの今後

 16日にシャオミ製Androidスマートフォン「Xiaomi 12T Pro」が発売される。2億画素カメラ、そして5000mAhという大容量バッテリーを2%→100%まで、わずか19分で充電できるという“神ジューデン”が大きな特徴となる1台だ。

 8日に開催された記者発表会では、プレゼンテーションでシャオミ東アジア担当ゼネラルマネージャー兼シャオミジャパン代表取締役のスティーブン・ワン氏から「Xiaomi 12T Pro」の特徴が紹介された。また、大手携帯電話会社では独占提供となるソフトバンクから常務執行役員の菅野 圭吾氏が登壇し、「神ジューデン」というコピーでアピールすることなどが紹介された。

 本稿では、質疑応答の内容と、スティーブン・ワン氏と、シャオミの安達晃彦氏へのインタビューをまとめてお届けしよう。

質疑応答

――ソフトバンクとして独占で扱う機種が増えてきたように思える。

菅野氏

 ソフトバンクとしては、できるだけ幅広い方へお届けしたいと考えています。ミドルレンジなどに集中しているわけではないのです。今回、(大手携帯電話会社のなかで)独占とするのは、パートナー企業の方々と協議して、ユーザーにどう届けるか、日本市場でチャレンジするか、といったことで取り組んでいます。

菅野氏

 全てが成功しているかといえば、正直、そこまで自信をもっていないところはあります。しかし、ほぼほぼ、見立て通りで販売やお客さまに届けるといったことができているかと考えています。

神ジューデンについて

――「Xiaomi 12T Pro」は2億画素カメラなどの特徴があるなかで、今回、なぜ「神ジューデン」としてバッテリー関連のスペックを強く訴求することになったのか。

菅野氏

 ソフトバンクでは、スマートフォンメーカーの皆さんや、いろんなパートナーさんと話しているなかで、「ユーザーが課題を感じていて、そこを解決できること」で、特徴があるものを打ち出せるのではないかと考えていた――というのが、まずスタート地点です。

 ユーザーへリサーチすると、やはりバッテリー持ちや、充電に関しての課題がわかりまいた。

 一方で、シャオミさんには、非常に速く充電できる機能があり、特許もあるということで、今回、ソフトバンクは「神ジューデン」をシリーズ化して、お届けしていこうと提案することにしたわけです。

――「神ジューデン」の定義は?

菅野氏
 現時点では、「20分以下(で100%)」としています。今後の研究によっては短縮される可能性はありますが、いったんそうしています。

――神ジューデンをシリーズ化するということだが、今後の予定は?

菅野氏

 今後の計画はまだはっきりと申し上げられませんが、第2弾は来年中には出したいと考えています。

 そのパートナー企業(スマホメーカー)は決まっていません。

――急速充電については、過去、ほかのメーカーでバッテリー関連の問題が起きたこともある。ユーザーとしては「本当に安全なのか」という不安がある。ソフトバンクとしても太鼓判を押すということでいいのか。

ワン氏
 高速充電とバッテリーは、常にデリケートなトピックです。

スティーブン・ワン氏

 シャオミにとって、ユーザーの安全性、そしてユーザーエクスペリエンス(体験)は非常に重要です。

 120Wのような新しい技術を導入する際に、カバーしなければならないことがいくつかあります。ひとつは、安定性と品質です。

 もうひとつは、バッテリーの寿命、バッテリーが劣化しないかどうかです。

 約2年半前、120Wの急速充電機能を備えた最初のデバイスを発売しましたが、まずは中国向けでした。その後、バッテリー寿命を延ばし、なおかつ、安全性を高めるために、さまざまな方法で設計を変更してきました。

 プロトタイプ~現在までの3年間で、120Wの充電技術は非常に成熟してきました。現在は、さらに次世代の充電技術にも取り組んでいます。

 シャオミにとって、120Wはすでに成熟した技術であり、心配するような技術ではありません。

 充電の仕組みについても安全対策が施されています。そうした機能や対策によって、万が一、発熱した場合、急速充電は制限されます。

 また、寿命については、今回、2年間のバッテリー保証をつけています。これは、2年内に保証が適用されるような短い寿命になることがないと確信しているからです。

菅野氏
 ソフトバンクが太鼓判を押したのか、という点については、はい、そういうことになります。

 過去、私どもも、バッテリーについて、さまざまな事象を見て、経験してきました。そうした経験値を踏まえて、いろいろなテストをソフトバンクも入念にした上で、出すことができました。

Xiaomi 12T Proになった理由

――シャオミがグローバルや中国で発表された機種が、日本で登場するまで時間がかかっている。今後、同時にリリースするといった考えはあるのか。

ワン氏

 私どもシャオミのフラッグシップ製品は、日本市場向けとして選ぶ際、ユーザーへどのような利益をもたらすかだけではなく、差別化されている点も考慮しています。

 そして、発売時期について、中国市場向けとグローバル向けは別のロードマップになっています。日本では、たとえばNFCやFeliCa(おサイフケータイ)などのカスタマイズがあります。

 「Xiaomi 12T Pro」は約1カ月半前に、グローバルで発売されました。欧州向けは約1カ月前に発売されています。(カスタマイズする時間を踏まえると)ほぼ同じスケジュールで日本でも発売されているのです。

――グローバルでは「Xiaomi 12T Pro」と同時に「Xiaomi 12T」も発表されている。ソフトバンクとして「Xiaomi 12T Pro」を選んだ理由と、あわせてシャオミが今後「Xiaomi 12T」を国内で発売する考えがあるか教えてほしい。

菅野氏
 シャオミさんとは、いわゆるミドルレンジ、ローエンドの機種をこれまで展開しており、ハイエンドはありませんでした。そこで今回、どれくらい数を出せる(ユーザーに購入してもらえる件数)のか、チャレンジしようと。

 そして充電という特徴を活かせるということで(2億画素などの仕様も備える)「Xiaomi 12T Pro」を選んだことになります。

ワン氏

 私たちの観点からすると「Xiaomi 12T Pro」は、ハイエンドのフラッグシップデバイスとして、キャリアというパートナーと初めて展開する製品です。ですから、今回は「Xiaomi 12T Pro」だけを発売することになります。

 それ以外のハイエンドデバイスについては、長期的な取り組みで進めていき、時間をかけてポートフォリオ(製品ラインアップ)を拡大していきます。

セキュリティについて

――セキュリティについて教えてほしい。経済安全保障への意識が高まっているが、シャオミ製のスマートフォンについては、2021年、監視機能の搭載についての報道があった。ユーザーが安全に利用できることが担保されているのか教えてほしい。

ワン氏

 セキュリティとプライバシーは、私たちにとって、とても大切なことです。セキュリティとプライバシーを確保するために、さまざまな手段を講じています。

 日本だけでなく、世界各地のセキュリティとプライバシーに関する法律をすべて遵守しています。世界で最も厳しいとされる欧州の法律にも従っています。

 また、シャオミのグローバル向けデバイスのサーバーは、すべて海外(overseas、編集部注:中国外の意か)にあります。

 そして、シャオミのソフトウェアやデバイスは、すべてのAndroidのポリシーに対応しています。Androidにもまた非常に厳しいセキュリティとプライバシーに関するルールがあります。ですから、プライバシーとセキュリティに関する問題はありませんし、爆弾もありません。

シャオミのスティーブン・ワン氏と安達晃彦氏に聞く

スティーブン・ワン氏(左)と安達晃彦氏(右)

――今回、バッテリーを中心に、カメラ機能や「Snapdragon 8+ Gen 1」搭載による処理能力がアピールされています。

ワン氏

 シャオミにとって、キャリア向けのフラッグシップデバイスは今回が初めてです。このような機会を通じて、学ぶことができます。

 これは私たちにとって最初のステップであり、なおかつ、非常に重要なステップだと考えています。最終的なゴールは、できるだけハイエンドの機種を提供することです。シャオミのテクノロジーとイノベーションをより多くお届けできるからです。そこが私たちの強みだと思います。

 「Xiaomi 12T Pro」で「バッテリー」「カメラ」「パフォーマンス」という3点をお伝えしましたが、グローバルでのAndroidハイエンド市場は、機能面でここ数年、あまり変化がなく、少し停滞気味だと思います。

 一方で、今回は120W充電に対応し、2億画素カメラを備え、Snapdragon 8+ Gen 1搭載で、以前の機種よりも著しくスペックが向上しています.

 搭載するチップセットが新しいもので、これは2023年前半にかけて、よい体験をユーザーへお届けできる機種だと思います。

 2億画素カメラは新しい機能で、中国で開発されたものであり、日本では初めて提供することになります。「Xiaomi 12T Pro」はシャオミを代表するデバイスで、日本国内市場において、認知度を高め、皆様に覚えていただける、新しいお客様に体験してもらえる機種だと考えています。

安達氏
 これまで、シャオミはアグレッシブなブランドとご存知の方もたくさんいらっしゃいます。

 一方、今回の取り組みで、ソフトバンクさんから提供されることで、より多くの方の手に取っていただける機会が増えていくと期待しています。

――ハイエンドスマートフォンについて、11月、クアルコムへ取材したとき、ハイエンド向けのチップセットが1世代あたり、長く提供される傾向にあるという話がありました。シャオミとして、日本市場向けのハイエンドスマホは、新しいハイエンドチップセットが登場すればすぐに搭載していくのか、あるいはひとつの世代を長く活用していくのか。現時点では、どう考えていますか。

ワン氏
 安定したローンチまでの期間が決まっているのは一番良いのでしょう。

 しかし、今後3~5年間は、認知度を高めるという面では、スピーディに進めていくことが良いのかもしれません。究極的には、着実なペースでハイエンド機種を提供していくことが望ましいと感じています。

 日本で提供する機種については、私たちはゆっくりとした歩調で、その時点で最適と思われるチップセットを選択することになるでしょう。

――1年前に発表された「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載するシャオミのスマートフォンとして「Xiaomi 12」シリーズは、グローバルで3月に発表されましたが、日本では提供されていません。11月には、「Snapdragon 8 Gen 2」が発表され、シャオミも採用するメーカーのひとつです。

ワン氏
 どのような製品であれ、日本向けで(シャオミとしてのラインアップが)あふれかえることは避けたいと考えています。

 カスタマイズやエンジニアリングの作業が数多くあるからです。

 まずは、日本市場に適している、ヒットする商品を提供したい。将来的には、よりハイエンドの機種を日本でも提供したいとは思いますが、現時点で予定はありません。

――以前の取材で、日本向けのローカライズを進めるとのことでした。2022年を振り返って成果と感じていることと、2023年に期待してほしい点を教えてください。

ワン氏
 前年から続いて、今年もいろいろと学びがあり、社内での調整もありました。長期的な発展と成長のために非常に有益で実りある取り組みだったと思っています。

 たとえば、この半年間、私たちは製品ロードマップの再編に取り組みました。日本向け製品ロードマップは、ローカライズだけではなく、安定したものになる予定です。

 今後、6~12カ月かけて、実際の製品開発とカスタマイズを進めていき、製品に反映していきます。これらは大きな成果だと捉えています。

 シャオミにジョインした安達さんは、日本のお客様や、チャネル(販路となるパートナー)をよく理解しており、シャオミとしても理解が進むと考えています。

安達氏
 日本への最適化、ローカライズというのは、製品のことだけではなく、「伝え方」という面でも進化していると思っています。

 今回の「神ジューデン」はわかりやすいポイントです。グローバルで見ると、「Xiaomi 12T Pro」は2億画素カメラがアピールポイントの中心にあるのですが、日本では120Wという急速充電の性能が強く響くだろうということで取り組むことになったわけですが、ローカライズ、最適化の一例だと思います。

 また、(シャオミジャパンには)多くのスタッフが加入しており、体制としても充実してきています。

――価格について教えてください。ここ最近、為替レートの急激な変動がありました。

ワン氏
 お客様には、いつもベストな価格で提供したいと考えています。一方で、2022年は為替が大きく変動しました。

 シャオミで調達する部材の多くは、ドル建てで購入していますので、日本円への為替変動が影響し、エンドユーザー向けの価格を変動させることになります。この問題は、避けて通ることができません。

 このような変動が続くのであれば、価格はさらに上がる可能性はあります。しかし、現在、発売している製品はすべて為替変動を考慮した価格に設定されています。そして今後、製品を開発する際には、将来の為替レートを考慮することになります。

――確かに最近は為替レートも落ち着いてきましたし、1年前によく話題になっていた半導体不足も落ち着いてきたようです。価格を押し上げる要素は減ってきたのでしょうか。

ワン氏

 そうですね、半導体不足は、シャオミにおいては安定しています。為替レートも製品価格に織り込まれており、1製品のサイクルのなかで、いろんな要素がきちんと盛り込まれています。

安達氏

 とはいえ、1年前よりも20%高いんですよね……。

ワン氏
 はい、20~30%ほど、ですね、

――2023年に向けてメッセージをいただけますか。

ワン氏

 まず全体的な経済の見方として、今、振り返ると、2022年の経済状況は意外と良かったと思っています。

 でも、2023年はさまざまな不確実な要素によって、「冬の時代」に入ってしまうのではないか、と考えています。

 そうした「冬場」になると、リソースを節約する必要があると思います。成長も、安定したものを重視する必要があると思います。

 2023年は不安定な要素が大きいとは思いますが、長期的な発展を見据えたさまざまなことを行う予定です。

 2023年で一気にブレイクスルーするというよりも、長期的な発展を目指し、私たちの核となる信念を貫いていきたいなと。

 その信念は、なによりもユーザーに「シャオミの新しいテクノロジーを体験してもらいたい」ということになります。

 また、社内や製品のローカライズを進めていきます。

 2023年は、長期的な視野をもって取り組みたいです。たとえば、スマートフォン以外の製品も開発したいと考えています。

――スマートフォン以外という点は気になりますね。ARグラスのようなものですとか……?

ワン氏
 いえいえ、ARグラスではありませんよ。

 シャオミでは(空気清浄機や掃除機など)さまざまな製品があります。私たちは面白い製品を提供することができれば、と思いますが、すべてを提供しようとするわけではありません。主要なもの、重要なものを提供したいですね。

――ありがとうございました。