インタビュー
「Xperia PRO-I」1.0型イメージセンサー搭載の狙い、そしてPROシリーズがもたらす価値とは――開発者たちに訊く
2021年12月7日 00:04
ソニーは、Androidスマートフォン「Xperia PRO-I」を発表した。
今年2月に登場した「Xperia PRO」は、Xperiaシリーズの中でも、業務での活用、いわゆるBtoB的な側面が強く、放送事業者やYouTuberなどに向けたモデル。
一方で「イメージング」、つまり写真に特化した機能を搭載し、よりコンシューマー向けにアピールしているのが、今回のXperia PRO-Iだ。
特徴的な1.0型イメージセンサーカメラへの考えや開発の背景、今後のXperia PROシリーズをソニーに訊いた。
インタビューに応じてくれたのは、ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部 企画マーケティング部門 企画部 八木隆典氏、イメージングプロダクツ&ソリューションズ事業本部 システム・ソフトウェア技術センター モバイル設計部門 カメラ設計部 井口和明氏、デザインプラットフォーム クリエイティブセンター スタジオ 3 日比啓太氏、モバイルコミュニケーションズ事業本部 企画マーケティング部門 プロダクトマーケティング部 間下健介氏。
聞き手は、本誌編集長の関口聖とライターの法林岳之氏。
I(アイ)はイメージングのI
――商品のコンセプトについてお聞きしたいです。PRO-「I」と名称が区切られているところが特徴的ですね。
八木氏
XperiaのPROシリーズは、「想像を超えるエクスペリエンスを届けていく」というXperiaのビジョンを体現しているシリーズだと思っています。特定のコミュニティの方々に唯一無二の価値を提供できる技術をお届けできるものです。
たとえば、Xperia PROでは、世界初のHDMI搭載や360度ミリ波対応などを実現しており、そういった技術を踏まえてプロフェッショナルな映像制作者に向けたモデルとしました。
今回の「Xperia PRO-I」では、意識して「イメージング」の「I(アイ)」を強く出していきたいと考えました。
PROシリーズの主ターゲットであるBtoB領域とは少々異なって、コンシューマーのカメラが好きな方に向けて、1.0型イメージセンサーなどを踏まえて唯一無二の価値を提供していく、というのが今回のXperia PRO-Iの位置付けになります。
――過去には、Xperia 1 Professional Editionなどもありましたが、これまでのPROシリーズの市場の反応はどういったものだったのでしょうか?
八木氏
YouTuberなども含めて、映像制作で生計を立てている方に活用してもらえていると思います。HDMIでモニターとして使える機能などは、まさしく自分たちのための機能だというフィードバックを受けています。
――前モデルは映像関係のユーザーには好評だったようですね。今回は写真と動画を撮ることにフォーカスしたということですが、前モデルの評判を踏まえると方向転換した理由が気になります。
八木氏
PROシリーズは、ひとつの軸だけで展開するのではなく、別のコミュニティの方にも違う軸で唯一無二の価値を提供していくシリーズです。今後も、また違う軸で製品を出していくかもしれません。
我々が唯一無二の価値を提供できる技術は何があって、それがどのくらい成熟しているのかというところも踏まえて市場の動向も見ながら、Xperia PRO-Iのリリースに至ったという背景です。
イメージング(写真と動画)以外の分野もあると思うので、検討はしていかなければいけないと思います。コンシューマー分野ではXperia 1シリーズもありますから、唯一無二となると、どういった人たちにどういう価値を提供するというのが大事になってきます。
そのほうが、商品として研ぎ澄ましやすく、メッセージを伝えやすいということがあり、PROとは異なる軸でPRO-Iとして、イメージングとしての軸をつくったということです。
――Xperia PRO-Iは、1.0型イメージセンサーと尖った部分はありつつも、Xperia 1/5と近しい部分があるのではないかと思います。ユーザーとしてはどういうふうに選べばいいのでしょうか?
八木氏
Xperia 1シリーズとは撮影体験のこだわりという点で差別化しています。1.0型イメージセンサーのほかにもシャッターボタンやストラップホールなど、徹底的に撮影体験にこだわった設計をしています。撮影を楽しみたい、という方にはXperia PRO-Iを、そのほかの体験も充実させたいはXperia 1シリーズを、というかたちでご紹介できればと思います。
αやビデオカメラのノウハウを投入
――開発にあたってどんなところに苦労しましたか?
井口氏
画質部分はこだわりました。PRO-Iという名前をつけるからには、オートフォーカス性能にはかなり期待されるだろうと考えていました。特に、スピード、精度、品質の3つの面でこだわりました。
レンズを動かすアクチュエーターをサブミクロン単位で動かしているのですが、この駆動部分は非常に苦労しました。ガラスモールド非球面レンズの採用などでコンパクト化しているものの、やはり駆動する部品としては大きく、こうした大きなレンズを高速に正確に動かすという技術のハードルは高いものでした。
そういった点においても、レンズ設計者と制御部門のメンバーが撮影テストなどを繰り返して、オートフォーカスのスピード性能を追い込んできました。小型レンズを開発してきたXperiaチームと、αやRXシリーズでさまざまなレンズで正確な駆動を実現してきた双方のノウハウを持ち寄って、実現しています。
加えて、精度については、ピクセルピッチが大きいことによる低ノイズ・高感度な信号をαで培ったフロントエンドLSIのAF信号処理技術を用いて演算することで、更なる高精度を実現しています。
とくに動画においてオートフォーカスは、対象にしっかりと合うだけではなく、合うまでの滑らかさや自然さもまた重要です。そのため、PRO-Iの開発ではソニーの業務用ビデオカメラ「XDCAM」の開発経験を持つメンバーにも参加してもらい、オートフォーカスが滑らかに合うように、テストを行いました。
Xperia 1 IIIで培った技術をベースとしながらも、αやXDCAMなどソニーのイメージング技術の総力を決して、PRO-Iに入れ込んでいます。
――Videography Proは新たに提供される機能ですね。ユーザーインターフェイス(UI)へのこだわりなどがあればお伺いしたいです。
八木氏
「Cinematography Pro」という機能をこれまで提供してきましたが、これはシネマ撮影を理解されている方向けでした。対して、Videography Proは一般の人でも使えるレベルに仕上がっています。コンテンツクリエイターやVloggerの方々もしっかり使っていただけます。
井口氏
広いユーザー層に向けるにあたって「撮影に失敗しない」ことと「直感的に分かりやすいUI」という2点にこだわりました。これを体現するために、業務用ビデオカメラの開発経験のあるリーダーが業務用ビデオカメラの開発部隊のサポートを受けて開発しました。
さらに、直接クリエイターにヒアリングしたり、実際に撮影現場を見学したりしながら、この機能のUIを作り込んでいます。
大きなディスプレイを活かして、プレビュー画面で画角などの確認がしやすいようにしています。また、クリエイターの方々が注意を払う「REC」ボタンやオーディオレベルメーターなどを見やすいようにしています。
これにより、正しく録画できているかどうかわかりやすくなっていると思います。
さらに、直感的で分かりやすいUIとしては、ズーム、フォーカス、露出といった項目を並べ、タップするとすぐにその設定が操作できるようになっています。撮影中に急遽、設定を変える必要が出てきた場合、プレビューに設定項目がかぶらないようになっているため、撮影している映像を見ながら設定変更が可能です。
21:9のディスプレイをフルに活用しているため、一般的な16:9のアスペクト比の映像を映し出しても、右側に操作UIを配置する余裕をつくることができました。撮影中に設定変更を安全に行いたい、というクリエイターの要望を業務用ビデオカメラなどを通じて長年に渡って向き合ってきたソニーだからこそのユーザーインターフェイスだと考えています。
AFスピードにこだわり
――1.0型イメージセンサーという方向性はいつ決まったのでしょうか?
八木氏
具体的には申し上げられませんが……。一般的に、スマートフォンはコンセプトという意味では1年くらい前からスタートしますが、(Xperia PRO-Iの場合)それよりもさらに前のタイミングで話はありました。
Xperia PRO-Iでは、センサーは「RX100VII」のものをスマートフォン向けに最適化して使用していますが、カメラのモジュールは完全に新規開発しました。薄型を目指すためにこのモジュールの開発にかなりの期間を要したという部分はあります。しかし、そのおかげでかなり薄くなりこのサイズに収められました。
――1.0型イメージセンサー搭載機をリリースした他社では、センサーの扱いに苦労したという話がありました。Xperia PRO-Iの場合はどうでしたか?
井口氏
カメラの主要デバイスであるセンサー、信号処理LSI、レンズの3つは本当に難しい開発でした。
特に苦労したのは、イメージセンサーとアプリケーションプロセッサー、つまりカメラとスマートフォンのシステムを融合してつくるという部分です。アプリケーションプロセッサーとセンサーを単純につなぎ込むだけであれば、そう難しいものではありませんでした。
しかし、スピード性能を伴うとなると非常に難しいもので、スマートフォンとカメラでは、データフローやタイミング制御などが大きく異なります。当初は、4K 30fpsでも難しく、目標の4K 120fpsまでにはかなり長い道のりをたどりました。
その2つのシステムの橋渡しとなるのが、フロントエンドLSIです。周辺のアーキテクチャーを見直し、タイミングがシビアな制御では、0.1msec単位でのタイミング設計をしました。これにより、4K 120fpsやAF・AE連動の20連写といった性能を実現できました。
カメラとスマートフォンのシステムを用いてこのスピードを実現できたのは、両方の技術を積み上げた私達だけにできることだと思っています。
八木氏
スピード性能は、オートフォーカスへの影響が一番大きいところです。動くものに対してフォーカスが合うかどうかをαのユーザーは重視します。色味の違いなどは後から編集できますが、フォーカスが合っていなければ、その写真や動画はどうしようもありません。
具体的には、「リアルタイム瞳AF」や「リアルタイムトラッキング」などが、我々が一番伝えたいスピード性能のポイントです。
ライバル製品では、オートフォーカスがなかなか、期待値ほどまで届かないというフィードバックもあるようで、そこで我々としてはオートフォーカスの性能が重要かなと思っております。
デザインに込められた意味とは
――側面のデザインが「かっこいい!」という声も聞かれます。デザインに込めた思想をお聞かせください。
日比氏
デザインについては、Xperia 1シリーズを一味違う、ひとつレベルが変わったような印象をもたせたかったんです。テイストやサイズ感を含めて検討した結果、メインカメラの佇まいやボディの形状で、別次元の体験をひと目で感じられるデザインにしようと考えました。
一番のポイントはメインカメラの堂々とした姿です。Xperia 1シリーズは、効率を重視したレイアウトがなされていますが、Xperia PRO-Iでは中心に配置しました。レンズは3眼構成なので、それらも強調しつつメインカメラを強烈にアピールするかたちです。
カメラとスマートフォンの融合なので、どちに軸足をおくべきかは微妙なところではあるのですが「スマホという領域の中ですごいカメラ」という絶妙なバランスをとっています。カメラは結構出っ張りがあるんですが、そこを感じさせないような2段構成のデザインにしてあります。加えて引き算になりすぎないように堂々とした風格があるようにしました。
フレーム部分は通常、削ぎ落としたようにすることが多く、Xperia 1でもそうしているのですが、Xperia PRO-Iでは、道具としての強度面や手にもったときの感触にこだわりました。
握ってもらうとわかりますが、しっかりしたグリップ感と剛性感や強度があり、ひっかかりがあるので、重さをそこまで感じさせない工夫をしました。
――たしかにセンターに配置されたカメラが印象的なデザインです。ほかにもデザインの候補はあったんでしょうか?
日比氏
他社にないデザインにしたい、という思想もありまして、レイアウトやカメラの見せ方は完成に行き着くまでに山ほど検討しました。ものすごい時間を検討した中で、行き着いたのがXperia PRO-Iです。
――ここに行き着くまでにケンカしながら議論があったり……?
八木氏
ケンカありましたよね(笑)
日比氏
議論のポイントとしては、商品の方向性は大きくて、どんなターゲットを狙って、どういう落とし所にするかが重要になります。本当にカメラライクなデザインにも、スマホライクなデザインにもできますが、それだけではなく撮影体験とデザインをパッケージングにした上で、どうするかというバランスをとるのが難しいですね。
設計やデザイン、カメラエンジニアなどさまざまな人の思考が凝縮されてますから、汗と涙の結晶ですよね(笑)
昔、ウォークマンの木型(モックアップ)を作って「このサイズにしなさい」というようなことがよくありました。ソニーの文化のひとつなんですが、それに似たようなかたちで、デザイン的に理想のモックをつくって、それを目標に開発をする、というような流れはありました。
――1.0型イメージセンサーというともっと厚くなるのかと思っていました。ここも技術とデザインのせめぎあいの結果という印象をもちました。
八木氏
薄くするに当たって工夫したのは、レンズです。24mm(1.0型イメージセンサー使用)レンズには「ガラスモールド非球面レンズ」を採用しました。
通常、スマートフォンのカメラのレンズはプラスチックで作られることが多いのですが、ガラスにすることで同じ光学特性を持ちつつも、それぞれの素材の屈折率の違いから薄型化できます。
レンズに限りませんが、Xperia PRO-Iの開発には、αやRXシリーズを作っているメンバーも加わっています。そういったメンバーの知見があってできたことです。αではレンズも開発していますから、そういう苦労をスマートフォンの中に入れられました。
なぜ今回のタイミングでリリースに至ったのか?
――(法林)他社さんがすでに先行して1.0型イメージセンサーという、同様のコンセプトの製品を出されています。個人的にはもう少し早く出ても良かったんじゃないかな、とも思ってしまいますが、やはり完成度を高めた上で、ということなのでしょうか
八木氏
完成度を高める上で、オートフォーカス性能は非常に大事でした。Xperia 1 IIIでは、αユーザーでも満足できるレベルまで来ているかなとは思っています。そういった技術的な成熟度やデバイスの成約から、ユーザーに納得してもらえるスペックを達成できた今回のタイミングでリリースとなりました。
――(法林)RX100シリーズは新旧モデルが混在して販売されています。Xperia PRO-Iの価格を考慮すると、安くなった旧RX100にユーザーが流れてしまうのでは……とも思ってしまいます。さらにデジカメ市場と競合してしまうのでは……という危惧を抱いてしまうのですが……
八木氏
同じ会社ですので、RXシリーズのチームとは、ワンチームでやっていると考えてもらえればと思います。我々が一番危惧しているのは、他社の製品がカメラ機能を強化して、そこにRXシリーズのユーザーが流れてしまうことです。
そうではなく、Xperia、α、RXシリーズを含めて全てセットで、我々の「カメラ」として、ユーザーにどれがいいか選んでもらえる、というのが目指している世界です。値段などを考慮して「RXのほうが良い」というユーザーもいるかもしれませんが、それはそれでいいと思っています。
スマートフォンは(カメラと比べて)非常に大きい高精細なディスプレイを搭載しています。写真は撮影して終わりではなく、確認してどう扱うかというところまで考える必要があります。
カメラチームからも、ディスプレイの大きさは「良いね」と言われ続けていた部分でもあります。さらに5Gで必要に応じてすぐにネットワークで送れるというのは、カメラ業界でも必要されている要素ですので、そこを重視される方にとって1台で撮影から送信までできるXpria PRO-Iの大きな価値になると思います。
なぜ1.0型イメージセンサーは切り出されているのか
――1.0型イメージセンサーは切り出しているということですが、あらためて狙いの部分をお聞かせください
八木氏
センサーとしては、RX100VIIをベースにしたものですので、総画素数としては2100万画素になります。一方、Xperia PRO-Iの有効画素数は1220万画素で記録しています。
このような仕様にした背景としては、ユーザーにどのような体験を提供すべきかを最優先に考えたというところがあります。さきほども説明したオートフォーカスの性能やスマートフォンでの高性能な画像処理をしっかり提供していくということで、1220万画素ということになっています。
解像度としては落ちる部分はありますが、これまでのXperiaも1220万画素のセンサーを使い続けてきました。一般的にこれだけの画素数があれば、A3サイズで印刷しても300dpi程度である程度の画質を担保できます。
そのため、解像度としては1220万画素あれば十分だろうということで、それよりもオートフォーカス性能などを重視するほうがいいのではないかということになりました。
RX100VIIのセンサーを使用した一番の目的は2.4μmのピクセルピッチです。
非常に大きなピクセルピッチにより、低照度下での感度やダイナミックレンジが大幅に向上できます。この2つはピクセルピッチに依存します。(切り出すことで)たしかに解像度は下がってしまうのですが、上記2つの性能に加えてオートフォーカスのスピードやスマートフォンでの高速処理を提供できるほうが良いだろうということになったのです。
――感度やダイナミックレンジ、AFスピードを維持しながら2100万画素とするのは難しいのでしょうか?
八木氏
2100万画素と1220万画素では、内部処理の負荷の差がかなり大きいのです。負荷が多すぎるとオートフォーカスを合わせ続ける処理などにほころびが出てしまいます。1200万画素分のデータをしっかり処理をする、ということで1220万画素とさせていただきました。
――(法林)最終的にユーザーが求めているのは、「画素数」じゃなくて「写真」という解釈での判断ということですね。
八木氏
おっしゃるとおりです。
――(法林)ネットの反応は「え、センサーは6掛け(スペック上の6割)なの?」という感じでした。しかし、最近ではピクセルピッチなども認知が高まってきましたし、上手に説明すれば、ユーザーも理解してくれるのではないでしょうか。
八木氏
最初にその部分だけが強調されて伝わってしまったというのは、我々のコミュニケーション不足でした。今後も、引き続き丁寧に説明していければと思います。
排熱に配慮した設計
――1.0型イメージセンサーというとかなり大きなものです。内部の構造も苦労がありそうですね。
八木氏
基板については、新しくXperia PRO-I用に作り直しました。一般的にスマートフォンは、バッテリーが本体下部に配置され、基板がその上にあるという構造が多く、我々はこれを「ハーフボード」と呼んでいます。
この場合、熱が上のほうにこもり気味になってしまいます。これに対してXperia PRO-Iでは8.9mmとほかのXperiaシリーズに比べて少々厚くなっているのですが、これは基板を上だけでなく、下まで配置した「フルボード」という構造にしたことがあります。こうすることで、熱が全体まで拡散しやすくなるのです。
また、撮影中に本体が熱くなっても続行できる「撮影持続モード」を導入しています。ただし、低温やけどなどのリスクが考えられるので、Xperia PRO-I対応のシューティンググリップと接続中に動作するようになっています。
他社製のアクセサリーとの連携も検討はしていますが、現時点では決まったものはありません。まずは自社製アクセサリーで展開して、反応を見極めながら今後の判断を行いたいと思っています。
――「撮影持続モード」で普段のカメラ利用時よりも高い熱を帯び続けると、ハードウェア的にエラーを起こしそうな気もしますが……。
八木氏
問題はないと考えています。本当に影響が出そうな場合は一部の機能を制限したり、撮影アプリが終了したりといった動作をとるようにしています。ハードへの影響は心配ありません。
撮影持続モードは本当に玄人向けのモードと考えていますので、基本的にはオフになっています。有効にするのも結構手順が必要で3回ほど「大丈夫? 大丈夫?」と聞かれますからね。
デジタルカメラにも、動作温度の上限を変更できる設定がありますので、それと同じような意味合いで、カメラをわかっている人にわかってもらえれば、という感じです。
間下氏
スマートフォンの場合、ポケットに入れて持ち歩くという方もたくさんいらっしゃいると思います。このあたりはかばんに入れて持ち歩くことの多いカメラと異なる部分で、肌に密着しますから、(低温やけどなどへの配慮は)センシティブに考えました。
――ところで、酷暑の中でカメラを起動するとエラー……ということもありますが、Xperia PRO-Iではそのあたりどうでしょう?
八木氏
スマートフォンユーザーの90%ほどは、撮影時間が5分以内というデータがあります。数十分~数時間連続で撮影するとなると別ですが、多くの方はそこまで問題にはならないのではないかなと思っています。
ソフトウェアアップデートは? 今後のXperia PROシリーズの方針
――ソフトウェアアップデートについては、どういった方針で進められるのでしょうか? 高価なだけに長期間使用したいというユーザーも多そうです。
八木氏
今後のことに関してお約束できるものはありませんが、しっかりやっていかなければいけない部分ではあります。
長期間使用するユーザーは多いだろうと我々も認識しており、そういった部分をケアする必要はあるということは内部で話しています。
――PROシリーズの今後の立ち位置はどういったものになるのでしょうか?
八木氏
Xperia PROは、映像制作に向けたBtoBモデルでした。一方のXperia PRO-Iは、よりコンシューマー向けモデルとしての立ち位置です。
我々としても引き続き、スマートフォンとしての唯一無二の価値を提供できる技術の成熟度なども踏まえて、ユーザーに「想像を超えるようなエクスペリエンス」を提供できる商品を出していきたいと思っています。
それが、BtoBの「PRO」か、イメージングコミュニティに向けた「PRO-I」か、もしくはまた別のコミュニティへ向けるのか、というのは現時点ではお答えできません。しかし、特定のコミュニティに対して、想像を超える価値を引き続き提供していきたいと考えています。
――将来的には、Xperia 1シリーズでも1.0型イメージセンサーなどPROシリーズで提供された価値を享受できるのでしょうか?
八木氏
PROシリーズで培った技術をXperia 1シリーズや5シリーズに広げていくというのは、十分にあると思います。
たとえば、Videography Proを多くの方に使ってもらえるとなれば、我々としてはそうしていくべきと思います。PROシリーズとしてひとつのラインはありますが、1、5、10シリーズと完全にずれているということではなく、つながっているところはあるべきだと思っています。必要な部分はしっかりと連携していければと考えています。
――ありがとうございました。