インタビュー

シャープの新スマホ「AQUOS wish」発表、「シンプルで飾らないライフスタイル」に寄り添うコンセプトとは

 シャープは、5G対応のAndroidスマートフォン「AQUOS wish」を発表した。

 「性能や機能で尖った点はない」製品ながら、価格のみにフォーカスしたベーシックモデルではなく、ボディ素材に再生プラスチックを用いるなど、いわゆるSDGsなどに通じる価値観を重視したモデルだ。

 どういった経緯で、どんな体験を追求した製品なのか。シャープ通信事業本部 パーソナル通信事業部の小林繁事業部長や、「AQUOS wish」のコンセプトをリードした海外事業統括部マーケティング推進部の福永萌々香氏、パーソナル通信事業部商品企画部の亀山紘一氏に聞いた。

「AQUOS wish」のスペック

 Android 11搭載の「AQUOS wish」は、約5.7インチ、HD+(1520×720ドット)液晶ディスプレイや、約1300万画素のアウトカメラと約800万画素のインカメラを備える。

 チップセットはSnapdragon 480 5Gで、メモリー(RAM)は4GB、ストレージ(ROM)は64GBとなる。いわゆるエントリーモデルと言えるスペックだが、おサイフケータイや、防水防塵耐衝撃、指紋認証をサポート。

 ディスプレイの解像度がHDサイズという点は、アプリなどスマートフォンを利用する上で、大きな負荷を発生させず、手軽に使える格好となっている。

 ソフトウェア面では、決済アプリなど指定したアプリをすぐ起動できる「Payトリガー」が用意される。そして本体の素材には、再生プラスチックが35%用いられている。パッケージも、紙の使用量を削減し、薄くシンプルなものとなる。

主な仕様
項目内容
大きさ約147×71×8.9mm
重さ約162g
チップセットSnapdragon 480 5G
メモリー/ストレージ4GB/64GB
ディスプレイ約5.7インチHD+(1520×720ドット) 液晶
アウトカメラ約1300万画素CMOSセンサー(F2.0、広角78度、焦点距離26mm相当)
インカメラ約800万画素CMOSセンサー(F2.0、広角77度、焦点距離26mm相当)
バッテリー3730mAh
生体認証指紋認証
その他Wi-Fi(IEEE802.11a/b/g/n/ac)、Bluetooth 5.1、防水/防塵(IPX5・IPX7/IP6X)、おサイフケータイ/NFC、耐衝撃(MIL-STD-810G)

「シンプルで飾らないスマホ」

 シャープでは、ハイエンドの「AQUOS Rシリーズ」、軽量さを追求する「AQUOS zeroシリーズ」、必要十分というコンセプトを打ち出して国内でも多くのユーザーに支持されたミドルレンジの「AQUOS senseシリーズ」をラインアップしてきた。

 今回発表された「AQUOS wish」は、「シンプルで飾らないスマホ」を標榜し、既存モデルではなく、新たなラインアップとして登場することになった。

 小林氏は「性能面、機能的にサプライズはない。ただ、急速に広がる新しい価値観に向けた製品として提供することになった」と語る。

 その価値観とは、モノを持ちすぎず、気に入ったモノを長く大切に使い続けるというもの。その価値観にマッチするよう、わけ隔てなく、誰にとっても使いやすいことを目指したのが「AQUOS wish」だ。価格でアピールするのではなく、「引き算したことが新しい社会的価値につながる。価値があるような商品にしていきたい」(小林氏)という考えが示されている。

AQUOS wishのシンプルさ

 そんな「AQUOS wish」の背景にある、新たな価値観のひとつが「シンプル」だ。

 「AQUOS wish」では今回、性別や年齢の違い、ジェンダーレスやエイジレスにマッチするよう、シンプルで落ち着いたカラーバリエーションがラインアップされることになった。一般的に、商品として販売されるアイテムは、携帯電話に限らず、ユーザーの性別や年齢層などを意識してマッチするかたちで提供されることがあるが、そうした違いを意識せず、「自分好みの色」「多くの人にとって持ちやすく、手触りのよい質感」を感じられる。

 ソフトウェア面でも、たとえばカメラ機能も起動すればシャッターボタンひとつが表示され、ユーザーを迷わせない。

 タフネスで、防水防塵といった性能は、ユーザーに寄り添う携帯電話だからこそ、気兼ねなく使える状況につながる。

 またOSバージョンアップは2年間、最大2回サポートするとのことで、一定期間、最新性能が担保されるかたちだ。

ソーシャルグッド

 「AQUOS wish」が提供しようとする、もうひとつの価値が「ソーシャルグッド」だ。社会に良い影響を与える製品やサービスのことを指す言葉で、たとえば「AQUOS wish」のボディ素材のうち35%は、再生プラスチック。ミネラルウォーターの給水器などで用いられるボトルを破砕し、着色したものだが、実機の質感はマットで手触りの良さが、ある種の品の良さを演出し、チープさが排された印象をもたらす。

 パッケージ(個装箱)は、「AQUOS sense5G」と比べ、容量を20%、紙使用量を40%削減。分解もしやすくリサイクルにつなげやすいかたちとなった。

開発担当者の想い

 シンプル、そしてソーシャルグッドという価値観は、徐々に広まりつつある。多くの人は賛意を示すだろうが、それでも日常生活のなかで強く意識して行動しているか、と問われれば、筆者自身はややまごついてしまう。

 そんな「高い意識」に距離感を覚えた筆者にシャープの小林氏は「日常生活で、エコバッグを持っていくようになった人が増えた、というデータはあるが、そうした意識の変化がある一方で、『本質的にこういう考えが格好良い』と感じる人も増えている」と説く。

 新たな価値観そのものに格好の良さを感じ、機能が盛りだくさんな製品よりも飾らず持ちすぎず、責任感を抱く層が増えてきた――。

 製品開発をリードした福永氏は、まさに「そうした価値観にマッチするスマホが必要だ」と商品化を目指したと語っていた。