レビュー

「Xperia PRO-I」のカメラを試す――高級コンデジに比肩する実力はあるか?

 1型という大きなセンサーを搭載したソニー「Xperia PRO-I」。先に登場した「Xperia PRO」も話題を呼んだが、この「Xperia PRO-I」は1型2100万画素センサーでありながら、有効記録画素数が1220万画素ということでも注目された。

 19万8000円という価格のAndroid端末は、果たして高級コンパクトデジタルカメラクラスの画質なのだろうか?

高級感のある持ちやすいボディ

 「Xperia PRO-I」のサイズ感は「Xperia 1Ⅲ」とほぼ同等だ。ボディの側面には凹凸加工が施され、激薄ながらホールド感が高くなっているのがうれしい。同時に引き締まった印象を醸しだしており高級感も演出している。また、ストラップホールも設けられているのが珍しい。独立したシャッターボタンは「Xperia 1 Ⅲ」より大型化されていて操作しやすくなっている。

 スペックなど詳細は本誌別記事を参照して欲しい。

1型センサー搭載の大きなカメラユニット部

 1型という大きなセンサーを収納するカメラユニット部は巨大である。中央のひときわ目を引くカメラがそれだ。「ZEISS」のバッジを横に従えるカメラは35mm判換算24mm相当。Tessar(テッサー)の名を冠したガラスモールド非球面レンズを採用して、お家芸のZEISS T*(ティースター)コーティングを施している。ソニーの「α」ユーザーならおなじみのアレである。

 面白いのはこのカメラのみ物理的な絞りを備えているところだ。F2.0とF4.0という2段階のみではあるが、写りや露出のコントロール可能なところがいい。作例カットでのボケの違いがお分かりいただけるだろうか? 1型センサー搭載Androidスマホの先駆け「LUMIX CM1」では1/3刻みで絞りを変更できたが、Xperia PRO-Iでもそうした仕様だったら申し分なかった。

F2.0
F4.0

 さて「XperiaPRO-I」の話題となった画素数だが、搭載されているソニー「RX100VII」と同等の1型2100万画素センサーから、中央部をクロップして1220万画素のみを使っているのだ。これによりAF測距点のカバーエリア拡大と電子式手ブレ補正機能など、複数のメリットを享受している。ここら辺が「LUMIX CM1」や「AQUOS R6」「Leitz Phone 1」のリアルに1型センサーを使っている端末と違うところである。

 ほかのカメラは写真左から50mm F2.4、そのとなりは3D iToFセンサー、そして1型24mm F2.0/F4.0、そして16mm F2.2となっている。記録画素数は全て12メガピクセルだ。瞳AFやリアルタイムトラッキング、アンチディストーションシャッターなども備える。

16mm F2.2
24mm F2.0/F4.0
50mm F2.4

ワイドスクリーンを活かした使いやすい撮影画面

 シャッターボタンの半押しで起動する「Photography Pro」はシャッターチャンスに強い(シャッターボタンはややタッチが軽い印象だが指がかりがいい点はうれしい)。

 この「Photography Pro」は一般的なスマホカメラ同様イージーに扱える「BASIC」モードと、デジタルカメラの露出モード「PSM」と「AUTO」を備えるモードがある。どちらもワイド画面を活かした設定画面配置で、どのような状態か把握しやすいのが使いやすい。「α」ユーザーなら直感的に使いこなすことができそうだ。

 24mmカメラの絞り値変更は画面左に表示される部分で行う。これがやや切り替えが面倒。「BASIC」モード時のようにタッチで順次切り替えられるといいのだが。

 映像アプリも2つインストールされている。Vlogger向けの「Videography Pro」と、本格映像制作者向けの「Cinematography Pro」だ。

実写

24mm

F4.0による遠景ショット。いわゆるスマホ的な「コンピュテーショナルフォトグラフィー」仕上げではなく、デジタルカメラ的な写りである。過度な誇張がなく自然な風合いに感じる
F2.0で被写体に肉薄するとボケ感が味わえる。1型という大きなセンサーの恩恵だ。金属製銘板のディテールがなかなかいい
センサーが大きいと低照度撮影にも有利だ。ISO800、F2.0で歩道橋を撮ったがノイズ感も良好で、ナチュラルな色再現となった。オートホワイトバランスも的確である。ただ、点光源によるフレアとゴーストの発生が見られる
F4.0でショッピングセンター内のクリスマスツリーを撮影。こちらもオートホワイトバランスが好ましく、見た目に近い描写となった。ツリーの葉やLED部分の精細感もいい
近接撮影を試みた。F4.0に絞ってシャッターを切ると、積もった枯れ葉たちのディテールが際立った。スマホと言うよりはデジタルカメラの画質である
錆びたコンテナをF4.0で。リアルな質感表現が素晴らしい。まるでソニー「Cyber-shot」で撮影したかのような画質に感じる

16mm

16mmの画質も良好だ。デジタル補正されたそれは直線が気持ちよくまっすぐに写る。肉眼で見た光景に近い色再現性も魅力だ
スマホカメラのトレンドであるウルトラワイドカメラだが、室内だけでなく風景やスナップでも有効だ。建物や窓、道路の直線をしっかりと写しとってくれた。カメラの切り替えスピードもまずまずに感じた
古着店内でのカット。さまざまな色温度の光源があったが、好ましい色合いに「Xperia PRO-I」はキャプチャーしてくれた。ISO 1000だがディテールとノイズ感も整っていてイイ感じだ

50mm

50mmの写りもいい。公園にあった石版をトーン豊かに、かつ精細感溢れる描写で「Xperia PRO-I」は捉えた。手触りが想像できるような写真になった
メタリックの再現性もいい。塗装の微妙な凹凸と鮮やかな色合いが素晴らしい。「Xperia PRO-I」は3つのカメラのバランスがいい
150mm相当にデジタルズームして撮ったカットだが悪くない。SNSやウェブでの小さなカット利用なら使える画質ではないだろうか。

まとめ

 「Xperia PRO-I」は1型センサーの「美味しいところ」だけを「うまく」使ったカメラ機能重視のスマートフォンに仕上がっている。イージーに「BASIC」モードでつかうもよし、「PSM」モードで自分なりに表現を試して撮影するのにも向いている端末だ。

 「コンピュテーショナルフォトグラフィー」による過度なアシストが不要で、デジタルカメラライクな仕上がりを求めている人には最適なAndroidスマートフォンだと言えよう。絞りの変化によるボケ効果、瞳AFによるポートレート、高速連写による動体撮影など、ソニーの先進機能を味わえる高画質スマートフォンだと感じた。