インタビュー

mineoが「パケット放題 Plus」を提供する理由――オプテージ福留氏に聞く

 オプテージの携帯電話サービス「mineo(マイネオ)」で、新たなオプション「パケット放題 Plus」が6月1日より提供される。通信速度を一定にしつつデータ通信が使い放題になるというものだ。

 今春、新料金プラン「マイピタ」を提供したmineoが新サービスでどういった価値を提供しようとするのか。オプテージでmineoの事業をリードする福留康和氏に聞いた。

福留氏

各社から新料金プランが続々、その後は?

――2月から「マイピタ」が提供されています。それ以降のmineoの状況を教えてください。

福留氏
 はい、新規契約は前年同月比で1.2倍程度、新プラン提供前の半年間(2020年8月~2021年1月)の月平均と比べると、2月以降は2倍ほどになっています。いまのところ、お客さまからは評価いただいていると思います。

 既存の方についても、6割、新プランに移行済みという状況になりました。

――今春は、携帯各社から新料金プランが発表され、MVNO各社も料金プランを刷新しました。

福留氏
 はい、お客さまにとってはライフスタイルにあわせた最適なプランを選びやすくなったのだと思います。

 事業者側としては、MNO(大手携帯各社)との料金差が縮まり、MVNOの「料金の安さ」という魅力が薄れた、競争がより厳しくなったと捉えています。それでも、我々としては、引き続き、mineoを選んでいただけるよう通信品質も向上させながら、使いやすいサービスを提供したいと。

 そうした中、お客さまが通信サービスのどのような点に魅力を感じているか、独自調査をしてみました。すると「パケットの繰越しができること」「自分の利用状況にあったデータを選べること」「業界最安値であること」「昼間などの混雑時でも安定していること」「使い放題があること」「音声かけ放題があること」といった点が、魅力と捉えられていることがわかりました。

 でも、これらのうち、たとえば「自分にあったデータ容量を選べる」点については、mineoの対応は三角(△)といえるかと思います。また昼間などの時間で通信速度が安定しているか、と問われると満たしていないと思います。このほか、「使い放題」「音声かけ放題」についても充分ではありません。

――なるほど

福留氏
もちろん料金面については、やはり、ニーズが高いです。しかし「安いことはとても重要」なんですが、「安すぎると品質に不安を感じる」という声も多いんです。

 こうした声を踏まえ、1000~2000円でおトクさ、安定した通信品質を両立させて、より使いやすいサービスを提供することが重要だと思っています。なかでも安定した品質がポイントかなと。

 今回、その2つの両立を目指して行こうと考えました。

通信品質を改善、音声かけ放題も視野に

――というと具体的には?

福留氏
 通信品質は、4月から大幅に帯域を増強させました。自社品質基準では、これまでの2倍を目指します。Webページの読み込み完了時間で比べたところ、4月以降、41%改善されました。

――なるほど。帯域増強をしても、途中の経路にあるサーバーや端末側の処理性能の影響も受けそうですが、確かに増強の効果はあると。

福留氏
 はい、それから音声かけ放題の提供も検討中です。

――プレフィックス番号の自動付与で、でしょうか?

福留氏
 そうです。遅くとも今年度中に提供したいと考えています。

――開始時にはまたぜひ詳細を教えて下さい。そうした取り組みは「ユーザーが魅力に感じる点」での改善を図る形ですね。

福留氏
 そのとおりです。そして今回「パケット放題 Plus」を開始することにしたのです。これまでの使い放題である「パケット放題」は500kbpsという上限でしたが、それを1.5Mbpsに増速した上で同じ価格の月額385円になります。10GB以上なら申込みいただければ無料で利用いただけます。

 ただ、混雑回避のため、短期間に3日間で10GB以上の場合は通信速度を制限します。

 これにあわせ、500kbpsのパケット放題は、6月1日から新規申込を停止します。

パケット放題 Plusの特徴

――なるほど。音声かけ放題については後ほど質問するとして、まず「パケット放題 Plus」について教えてください。3つの特徴を打ち出されていますね。

福留氏
 はい、SNSや動画だけといった制限がなく、全てのコンテンツで1.5Mbpsで通信いただけます。他社さんで現在も新規受付中のプランですと1Mbpsが最大(※2021年3月に受付を終えたNTTドコモの5Gギガホは100GB超で3Mbpsに制限)だと思いますが、それを上回る設定にしました。「パケット放題 Plus」ではスイッチをオフにすれば従来通り、速度制限なく使えます。

 また料金プランに組み込むのではなく、オプションとして提供し、音声通話付きのデュアルタイプでも、データ通信のみのシングルタイプでも組み合わせられるようにしました。たとえばデュアルタイプですと月額1683円~で、データ通信だけのシングルタイプですと月額1265円~でご利用いただけます。

――1.5Mbpsという基準はどう決まったのでしょうか?

福留氏
 mineoでは、お客さまのことをファンとして、「ファンとの共創」を大切な価値として追求してきたのですが、今回もその姿勢で速度も料金も決めていったのです。具体的には、先行テストを提供し、その結果、96%の方が「問題ない速度」「ライブ配信も快適に視聴できた」と好評だったことから、1.5Mbpsにしました。

 こうしたお声を見ると、コード決済や、Webブラウジング、動画サービスの利用などで、9割以上の方が利用できたという回答でした。ビデオ会議なども8割の方は利用できたと評価いただいています。

――では、385円という価格になった理由は?

福留氏
 オトクさと使いやすさのバランスを考慮した結果です。ファンとの共創で速度を決めた、とお伝えしましたが、先行テストでは1Mbpsと比較したのです。その際には「ちょうどいい」というご回答は、1Mbpsで32%、1.5Mbpsで77%でした。この料金で実現できる速度、ということです。

――倍以上ですね。

福留氏
 はい、0.5Mbpsが大きな体感の差をもたらしたと。他社さんのサービスをお使いの方もいて、比較して使用感が格段にあがるという声もいただきました。

 こうした速度感と、それを実現できる料金を探った結果が385円だったのです。

――では、オプションとして提供することになったのはなぜでしょうか。

福留氏
 mineoではもともと「必要な分を必要な分だけ」という形で、ご利用していただけることを目指しています。だからオプションなんです。より多くの方にお使いいただければと、

――あらためて「マイピタ」に関しても教えてください。2月から提供開始となりましたが、その後、MVNO各社からも新料金が発表されています。mineoは決して最安値ではない、という状況です。値下げなどは検討されますか?

福留氏
 いえ、追加での値下げは考えていません。1000~2000円という価格帯で、「おトクさ、安定した通信品質」の両方を追求して、両立させながら提供していきます。

 一方で、mineoには5つの特徴……視点を変えると、他社サービスに対する競争力があると思っています。

 一つ目は小~中容量で、自由に選択していただける料金体系です。

 二つ目はトリプルキャリア対応です。また5Gにもオプションで他社に先駆けて実現しています。各社さんの端末をそのまま使える環境ということになります。

 三つ目はmineo独自のパケットコミュニケーションを実現している点です。たとえばギフトやフリータンクなど、誰とでもパケットを分け合えるようにしています。

 四つ目はオンラインだけではなく、実店舗があることや、独自のコミュニティサイトで、サポート体制などを充実させていること。スマホ初心者でも安心してご利用いただけます。

 そして最後は、総合満足度などで高い評価をいただいていることです。

――なるほど。

福留氏
 もちろん速度や価格は、ニーズへより即した形で、常に見直していかねばなりません。その上で、引き続き、独自の価値をしっかり手掛けて、MVNOサービスとしてオンリーワンを目指していきます。

チャージ料金を値下げ

――パケット放題 Plusにあわせ、チャージ料金の値下げも発表されました。

福留氏
 これまで100MBで165円だったパケットチャージを55円に値下げします。利用状況にあったデータ容量を、より適切に使っていただけるよう

 利用時には、mineoアプリから簡単にチャージしていただけます。

競争環境、どう見ている?

――「パケット放題 Plus」から話題は変わりますが、NTTドコモと連携をどう考えているか教えて下さい。ドコモは「エコノミー」と位置づける安価な価格帯の料金については、自社ではなくMVNOとの連携を進める意欲を示しています。mineoはどうしますか?

福留氏
 そういった話が報道されているのは承知しています。ですが、オプテージに対しては、いまのところ(打診は)来ていないのです。そのため、方針をどうこうとお答えできません。

 一方、一般論としては、独立系事業者としてmineoは「キャリアフリー」「オープン」といった価値を大切にしています。自由に選べることを大切にしていますので、これまで重視してきた価値を踏まえ、対応できる中で前向きに検討したいと思っています。

――なるほど。この春まで、政治主導での料金改定が進められてきました。2020年12月に武田良太総務大臣の会見に参加し、質問した結果、「MVNOに一番恩恵がある」ということでしたが、ここまでのところ、どう感じていますか?

福留氏

 (業界団体の)MVNO委員会と同じですが、総務省さんにいろいろと政策を進めていただいている中で、公正競争環境の整備に向けて道半ばだと思っています。データ接続料については、確かに想定よりも各社の単価は下がっています。これは各キャリアが将来原価方式になったことと、総務省の政策の結果でしょう。その一方で、今の料金だと、MNO各社の新プラン(ahamo、povo、LINEMO)と同等の通信品質を実現するのは難しいという実態もあります。早期に適切な環境を整備していただきたいと考えています。

――ありがとうございました。